【マーケット・経営・理論一般の『最適化』|違和感のある考え方】

1 違和感を生じる考え方→『最適化』しよう
2 経営・マーケット
3 生き方
4 理論一般

マーケットメカニズムは,労働市場・恋愛市場・商品市場で働く機能です。
法律問題のうち,労使問題・夫婦・男女問題・特定の業法の解釈の中に使われます。
ここでは,マーケットメカニズムに関連するものとして,やや一般的な『考え方』をテーマにしました。

1 違和感を生じる考え方→『最適化』しよう

いろいろな場面で,多くの選択・判断・評価が行われています。
経営や社会的な制度,あるいは個人の生き方など,あらゆる場面で『考えて』います。
ここでは,『違和感』を生じる考え方をまとめました。

(1)違和感の正体の分類

<違和感の原因の類型>

あ 『最適化』になっていない

ア マイナス面を無視イ 他の要素を無視ウ 定量的な評価がなされていない

い マーケットが存在してない前提
う 対立概念=批判対象の誤解

ポジショントーク的な意図的な誤解も含む

え 因果関係と相関関係の誤解(混同)
お 民主プロセスと絶対評価(価値観)の混同
か 手段の目的化
き 議論が同次元

共通認識への距離を縮める必要がある
(民事訴訟法での『争いのない事実』=不要証事項)

上記の中でも『最適化』という考え方は重要です。
当たり前なのですが,結構見落とすシーンが多いようです。

(2)『最適化』とは

<一般的用語としての『最適化』>

あ 数学における語法

ア 『最適化問題』 ある制約条件のもとで関数を最大化または最小化する解を探すという意味
イ 『組合せ最適化』 最適化問題のうち,解が離散的なもので用いる

い 情報工学における『最適化』

情報システムの実行時間・メモリ使用量・スループットなどを改善すること
データベースにおける『正規化』=繰り返しを避ける情報管理方法を含む

<当記事で用いる『最適化』>

複数の要素のもとで,特定の指標を最大化(最小化)する組み合わせを探すこと

具体的事例がないと分かりにくいかもしれません。
以下,具体例をまとめます。
『分野』別に分けて整理しています。
なお,上記分類のすべてについての例を挙げているわけではありません。

2 経営・マーケット

(1)時給を200円上げれば3〜400円分の売上増だからやるべき

<違和感のある考え方>

例;飲食店
時給を上げる
→従業員のやる気アップ・明るくなる
→お客様が良い印象
→来店客が増える
→売上が『200円分』以上に増える
だから時給アップをやるべきだ

<違和感の正体>

あ 種別

『最適化』のうち『定量的な評価』がなされていない(あ−ウ)

い 正しい考え方

『賃金のアップ』と『売上増加』の関係の検討が必要
『売上増加』以外に有用な要素があればもちろんこれも含めて『メリット』として算定する

(2)景気が悪いと廃業が増えるからかえって売上アップになる

<違和感のある考え方>

景気が悪くなる
→廃業する競合(マーケットからのイグジット)が増える
→存続企業はシェアアップ
→売上が増える
→利益が増える
だから景気悪化はチャンスだ

<違和感の正体>

あ 種別

『最適化』のうち『定量的な評価』がなされていない(あ−ウ)

い 正しい考え方

需要の低下と競合のイグジットとのバランスで販売数の増減が変わる
また,単価も変わる
トータルの売上が変わる
コストを控除した利益も上記要素で増減が変わる
一概に増/減を判断できない

(3)広告は広告会社に利益渡すだけだから良くない

<違和感のある考え方>

広告を使うと,利益の一部が広告会社に行ってしまう
→仕事のうち一定時間は『広告会社のために働いている』ことになる
→何のための仕事なのか,分からなくなる
だから広告は良くない

<違和感の正体>

あ 種別

『最適化』のうち『定量的な評価』がなされていない(あ−ウ)

い 正しい考え方

次の要素で考える
ア 広告を出した場合のコストと効果イ 広告に変わる広報活動にコストと効果(との比較) もちろん,他に影響を生じる要素があればそれも考慮に加える
いずれにしても一概に広告自体の是非を判断できない

(4)◯◯投資は悪いシナリオでもプラスだから売れる

<違和感のある考え方>

◯◯投資のリターンは天候その他のコントロールできない事情で変わる
ただ,◯◯というメカニズムがあるので最低でもゼロである(マイナスにはならない)
→だからこの投資販売は間違いなく売れまくる

<違和感の正体>

あ 種別

マーケットが存在していない前提(い)

い 正しい考え方

競合として多くの金融商品・投資が存在する
預貯金,投資信託,株式,不動産投資,ベンチャー投資など
リスクとリターンのバランスはそれぞれ異なる
このような『競合』との比較で優位性がないと『販売できない』(買ってくれない)

(5)◯◯業の税金が増えても売値上げるだけだから利益に影響なし

<違和感のある考え方>

◯◯県内の浴場(健康ランド)営業に関する施設は一律に課税が重くなった
→しかし,結局販売価格に上乗せ(転嫁)するだけ
だから利益には影響がない

<違和感の正体>

あ 種別

マーケットが存在していない前提(い)

い 正しい考え方

まず,同業内で増加コストの価格転嫁,が同様になされるかどうかは不明
(違法なカルテルは別)
仮に価格転嫁が他社でも行ったとしても,『県外』に価格で劣位になる
また,別業種の競合,との関係でも劣位になる
例;健康ランドvsカラオケ・スポーツ関連業・旅行業

(6)高速道路は独占だから金額設定で客が減ることはない

<違和感ある考え方>

高速道路は『並行してもう1本作る』は法律上できない
→高速道路ユーザーは『他を選ぶ』ができない
→値上げしても売上は減らない

<違和感の正体>

あ 種別

マーケットが存在していない前提(い)

い 正しい考え方

『高速道路に乗る』が最終目的(ベネフィット)ではない
『移動する』『輸送する』ことが最終目的である
飛行機・船・電車が競合である
《具体的には》
仮に値上げすると→『バス・トラック』のコストアップ→価格アップ(転嫁)
→顧客が他の移動・輸送手段を選択する方に流れる

(7)蕎麦は原価20円→ボリ過ぎ・儲かり過ぎ

<違和感ある考え方>

蕎麦の原料原価は非常に低い
→売上の大部分が利益
→蕎麦屋は大儲け

<違和感の正体>

あ 種別

マーケットが存在していない前提(い)

い 正しい考え方

仮に『利益が大きい』のであれば,新規参入が殺到する
→価格競争となり価格・利益は下がる
→他の業種と同程度の利益まで『調整』される
(神の見えざる手)

(8)食欲は避けられないから飲食店は儲かる

<違和感のある考え方>

『お金がもったいないから食べない』という人はいない
→あらゆる人が(原則)毎日×3食を消費する
→飲食店は需要が途絶えることはない
飲食店は大儲けする

<違和感の正体>

あ 種別

マーケットが存在していない前提(い)

い 正しい考え方

仮に『利益が大きい』のであれば,新規参入が殺到する
→価格競争となり価格・利益は下がる
→他の業種と同程度の利益まで『調整』される
(神の見えざる手)

3 生き方

(1)◯◯の資格を取ったけどまともな売上を獲得できない

<違和感のある考え方>

今までは◯◯の資格だけで食えていた
→資格者が増えたor需要が減った
→収入・利益が減った(確保できなくなった)
→資格を持っているから別の仕事をやりようがない

<違和感の正体>

あ 種別

手段の目的化(か)

い 正しい考え方

◯◯の業務が必要とされている(需要があるor需要を作る)
→ところでこの業務は法規制により資格が必要
→仕方なく資格を取得する
→資格で『やる仕事』は制限されない
=資格は制約要素ではない

ちなみに弁護士は以前,『他の業務』が許可制となっていました。
その後,『届出制』まで緩和されました。
職業選択の自由はより確保されています。

4 理論一般

(1)文学が社会に役立つ理由はリベラルアーツだから

<違和感のある考え方>

A 文学が社会に役立つのはどのようなところ?
B リベラルアーツだからです
A ではリベラルアーツが役立つのはなぜですか?
B 古代からあるからです

<違和感の正体>

あ 種別

議論が同次元(き)

い 正しい考え方

理由は,元の状態よりも『共通認識への距離を縮める』必要がある
『共通認識』とは,常識や敢えて説明しなくても分かる,普遍的な命題である
A・Bの議論のゴールは『社会に役に立つ』である
ここで命題が『文学』→『リベラルアーツ』と変化したが,『社会に役に立つ』に近付いてはいない
具体的にはAの疑問は『文学を含むリベラルアーツ』であると言えるでしょう

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