【国内犯に該当する一般的基準(インターネット上の賭博・表現系犯罪)】

1 インターネッツ経由の犯罪|海外サーバーのカジノ・わいせつ画像
2 刑法の適用対象範囲|国内犯/国外犯|概要
3 賭博・わいせつ系犯罪×国内/国外犯
4 一般的な『国内犯』・犯罪行為地の解釈論
5 国内犯解釈論『偏在説』×賭博・わいせつ物陳列罪
6 海外サーバーを利用した『賭博系/表現系』犯罪の比較
7 オンラインのサービスへの業法の適用(概要)

1 インターネッツ経由の犯罪|海外サーバーのカジノ・わいせつ画像

インターネットの普及とともに『法律の想定外』が生じています。
『オンラインカジノ』や『わいせつ画像』に関する犯罪の対象範囲の問題です。
サーバーが海外にある場合『日本国内で行われた犯罪』ではないとも思えます。
そこで,日本の刑法その他の法律による処罰の対象になるか・ならないか,が問題となります。
実はハッキリした公的解釈・ルールがないのです。

2 刑法の適用対象範囲|国内犯/国外犯|概要

日本の刑法その他の刑事罰規定の適用対象ルールを説明します。
基本的な大原則と例外をまとめます。

<刑法の適用対象範囲|国内犯/国外犯|概要>

あ 処罰範囲|原則論

賭博罪は『国内犯』だけが処罰対象である
→『属地主義』と呼ぶ
※刑法1条1項

い 処罰範囲|例外

犯罪によっては日本人が行った『国外犯』も処罰対象となる
→『(積極的)属人主義』と呼ぶ
※刑法3条

詳しくはこちら|刑法の適用範囲|準拠法|条例の適用範囲→属地主義が原則

オンラインカジノでは『プレイヤー=日本国内』『運営者=海外所在のサーバー』という状態です。
またわいせつな画像を海外所在のサーバーに保管した,という場合も同様です。
いずれも『国内犯』の解釈によって結論が決まる,ということになります。

3 賭博・わいせつ系犯罪×国内/国外犯

犯罪の種類によっては『国外の犯罪行為』も処罰対象となります。
オンラインで問題となる『賭博系・わいせつ系犯罪』についてまとめます。

<賭博・わいせつ系犯罪×国内/国外犯>

罪名 国内/国外犯規定 条文
賭博罪 国内犯のみ 刑法1条,3条,185条
わいせつ物陳列罪 国内犯のみ 刑法1条,3条,175条
児童ポルノ法違反 国内犯+国外犯 同法10条
リベンジポルノ法違反 国内犯+国外犯 同法3条5項

まず,賭博罪は『国内犯のみ』が対象です。
『わいせつ系』はちょっと複雑です。
児童ポルノ法・リベンジポルノ法違反は『国内/国外犯』のいずれも処罰対象です。
『わいせつ物陳列罪』は『国内犯のみ』です。
結局『賭博罪・わいせつ物陳列罪』だけは『国外での犯罪』の扱いが『解釈によって決まる』状態となります。
この解釈論について,次に説明します。

4 一般的な『国内犯』・犯罪行為地の解釈論

一般的な『国内犯』の解釈論を説明します。
正面からこの解釈を示した判例は少ないです。
古い判例と,後は学説がいろいろとある,という状態です。

<一般的な『国内犯』・犯罪行為地の解釈論>

あ 偏在説=判例・通説

『行為』と『結果』の『いずれか』が国内で生じた場合を『国内犯』とする
※大判明治44年6月16日

い ネオ偏在説(発展形)

構成要件該当事実の一部が国内で生じた場合を含む
※『新基本法コンメンタール刑法』日本評論社p13

『偏在説』と呼ばれる見解と,これを発展させた見解に整理できます。

5 国内犯解釈論『偏在説』×賭博・わいせつ物陳列罪

『偏在説』を前提にしてもオンラインの賭博・わいせつ物陳列罪の扱いが明確に判断できるわけではありません。
それぞれの解釈論については別に説明しています。
詳しくはこちら|国内犯解釈論×賭博罪|オンライン・カジノ|海外サーバー
詳しくはこちら|国内犯解釈論×わいせつ物陳列罪|インターネッツ上のわいせつ画像投稿
結果的に『賭博罪/わいせつ物陳列罪』で解釈論に違いがあります。

6 海外サーバーを利用した『賭博系/表現系』犯罪の比較

海外サーバーを利用した『賭博系』『表現系』の行為は扱いの方向性が違います(前述)。
違いについて並べてまとめてみます。

<海外サーバーを利用した『賭博系/表現系』犯罪の比較>

犯罪のカテゴリ 海外サーバーの機能 海外サーバーの役割 法的性質
賭博系 動的プログラムが中心 大きい 必要的共犯・対向犯
表現系 静的データが中心(※1) 小さい (該当しない)

※1 『性的』の誤記ではない;『性的』ではあるが

要するに表現系は『海外サーバー』は,形式的・便宜的な経由地,という評価につながるのです。
『純粋な日本国内の行為』と実質的に同視する方向につながります。
一方賭博系は『海外サーバー』の実質的な役割が大きいのです。
『純粋な日本国内の行為』とは質的に同じには扱えない,という方向性なのです。

7 オンラインのサービスへの業法の適用(概要)

以上の説明は,どの国の刑法が適用されるかという問題でした。これと近い問題として,どの国の行政法規(業法)が適用されるかというものもあります。
オンライン(インターネット)上のサービスではどの国で営業しているのかを明確に判断できないことがあるのです。特に,サービスの大部分がオンライン上で済む(完結する)というものです。
具体例として仮想通貨交換サービスが挙げられます。インターネット上には国境がないため,従来型の営業する国ごとの規制(ルール)の解釈が問題となるとともに,調査や検挙の方法の問題も生じています。
詳しくはこちら|日本国内居住者向け仮想通貨交換サービス(日本での営業)の判断基準

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【相続人の預貯金払戻請求と金融機関の対応(全体・平成28年判例変更前)】
【弁護士が『係争物を譲り受ける』のは原則禁止・特殊事情で適法】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00