【投資型クラウドファンディング規制緩和|1人50万円以下→少額電子募集取扱業】
1 IT×資金調達=クラウドファンディング
2 クラウドファンディング|種類=寄付型・購入型・投資型
3 『投資型』クラウドファンディング→従来は金融商品取引業登録が必要
4 『第1/2種少額電子募集取扱業』新設→規制緩和
5 第1種/第2種少額電子募集取扱業|投資対象
6 『電子募集取扱業』の定義|電子取引システムの利用が前提
7 少額電子募集取扱業|『少額』に該当する範囲
8 第1/2種少額電子募集取扱業の特例|内容
9 資金調達手法の多様化×既存金融機関のリプレイス
クラウドファンディングについての規制緩和=少額電子募集取扱業について説明します。
少額電子募集取扱業の登録の要件・規制内容は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|少額電子募集取扱業|登録要件・人的構成・重要事項表示義務
1 IT×資金調達=クラウドファンディング
ITによる情報流通の普及=民主化,という現象が多くの経済活動の変革を進めています。
その1つとして『事業の資金調達』が大きく発展しつつあります。
主なものとして『クラウドファンディング』があります。
<クラウドファンディング>
プロジェクト主催者がインターネット上で企画内容と必要な金額を提示し,広く支援を呼びかける手法
→少額の資金提供者を多く集めることによって,目標額の達成をねらう
別名;ソーシャルファンディング・マイクロファンディング・マイクロパトロン
※デジタル大辞泉より要約
2 クラウドファンディング|種類=寄付型・購入型・投資型
クラウドファンディングの方式は3つの種類に分けられます。
<クラウドファンディングの種類>
タイプ | リターン |
寄付型 | リターンなし |
購入型 | 商品・サービスのリターンがある |
投資型 | 金銭的なリターンがある |
3 『投資型』クラウドファンディング→従来は金融商品取引業登録が必要
『投資型』の場合だけは内容によって『金商業』の『登録』が必要です。
当然ですが『登録』は,一定の条件をクリアしていることを審査するものです。
『金商業』の種類と規制のうち主なものをまとめました。
<『投資型』の分類と従来の規制>
法律的形態 | 登録が必要な金商業の種類 | 最低資本金 | 兼業規制 |
株式形態 | 第1種金融商品取引業 | 5000万円 | あり |
匿名組合契約 | 第2種金融商品取引業 | 1000万円 | なし |
これは規制の一部です。
要するに『ハードルが高い』のです。
つまり,そう簡単に投資型クラウドファンディングは利用できない,と言えるのです。
4 『第1/2種少額電子募集取扱業』新設→規制緩和
クラウドファンディングについて,ルールの改正が進んでいます。
金融商品取引法(金商法)が改正され,引き続き施行令の改正も施行がなされました。
平成27年5月から,新ルールが施行されたのです。
以下,新ルールの内容をまとめます。
<法改正後の『少額』の特例|規制緩和>
登録が必要な金商業の種類 | 最低資本金 | 兼業規制 |
第1種少額電子募集取扱業 | 1000万円 | なし |
第2種少額電子募集取扱業 | 500万円 | なし |
5 第1種/第2種少額電子募集取扱業|投資対象
第1種/第2種少額電子募集取扱業の対象を整理します。
<少額電子募集取扱業|投資対象>
あ 第1種少額電子募集取扱業
非上場株式
※金商法29条の4の2第10項
※施行令15条の10の2第1項
い 第2種少額電子募集取扱業
ファンド持分
例;匿名組合
※金商法29条の4の3第4項
※施行令15条の10の2第2項
これは『緩和』される規制の一部です。
とにかく『少額電子募集取扱業』の場合は,従来の規制が大幅に緩和されるのです。
緩和される対象は『少額』と『電子募集取扱業』の2つの条件をクリアする必要があります。
順に説明します。
6 『電子募集取扱業』の定義|電子取引システムの利用が前提
『電子募集取扱業』の定義をまとめます。
<『電子募集取扱業務』の定義>
業務 | 有価証券の募集or私募を業として行うこと |
方法 | 『電子情報処理組織』(電子取引システム)を利用する方法による |
※いずれをも満たす
※金商法29条の2第1項6号
電子取引システム(PTS)を利用する,ということが前提条件となっています。
7 少額電子募集取扱業|『少額』に該当する範囲
少額電子募集取扱業の『少額』の範囲をまとめます。
<『少額』の範囲>
発行価額総額 | 1億円未満 |
1人の払込額 | 50万円以下 |
※いずれをも満たす
※金商法29条の4の2第10項,29条の4の3第4項
※施行令15条の10の3
1人の上限が50万円,というところが『少額』の性質の限界として設定されています。
現実には管理コストとのバランスで『実用性』があまり高くないという指摘もあります。
8 第1/2種少額電子募集取扱業の特例|内容
『少額電子募集取扱業』に該当する場合の緩和されたルールをまとめます。
<第1種少額電子募集取扱業の特例>
適用除外となるもの
・兼業規制
・標識の掲示義務(内閣府令で定める様式)
・金融商品取引責任準備金の積立義務
・自己資本規制比率に係る規制
※金商法29条の4の2第3項,5項,6項
<第2種少額電子募集取引業の特例>
適用除外となるもの
・標識の掲示義務(内閣府令で定める様式)
※金商法29条の4の3第2項
9 資金調達手法の多様化×既存金融機関のリプレイス
リプレイスされることを恐れる既存金融機関のネオラッダイトもあると思われます。
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト
当然,弊害の防止=投資家保護なども重要です。
いろいろな方法で取り組むべきです。
とにかく,社会に新たな価値を提供する手法が多様化し,発展が促進されることを期待します。