【ネオ・ラッダイト討伐|3権・テクノロジー・グレーゾーン=ベンチャーの聖域】
1 ネオ・ラッダイトを打ち破る=新陳代謝|全体像|5つのルート
2 ネオ・ラッダイト討伐|3権ルート|法改正・法整備
3 ネオ・ラッダイト討伐|3権ルート|裁判所→違憲判決アプローチ
4 ネオ・ラッダイト討伐|純粋テクノロジー・ルート|概要
5 ネオ・ラッダイト討伐|純粋テクノロジー・ルート|具体例
6 ネオ・ラッダイト討伐|『グレー』突っ込みルート
7 ネオ・ラッダイトがベンチャーに機会提供〜グレーゾーンはベンチャーの聖域〜
8 シオナイト現象=逆ラッダイト|敵軍内のレジスタンス
1 ネオ・ラッダイトを打ち破る=新陳代謝|全体像|5つのルート
ネオ・ラッダイトにより,新テクノロジーの普及が阻止される現象は無数にあります。
主なものは『法規制』です。
これを『打ち破る』ルートについて整理します。
<ネオ・ラッダイトを克服→全体最適実現|5つのルート>
あ 国会ルート
法改正
い 行政ルート
規則・通達・告示・ガイドライン類の改正
う 裁判所(判例)ルート
既存の法律・規則類を『無効』とする判決の獲得
『実質的立法作用』と呼ぶ
※憲法82条;違憲立法審査権
え 純粋テクノロジー・ルート
既存の法規制への抵触を避けたテクノロジー
お 『グレー』突っ込みルート
合法と思われるが解釈の不安定性がある事業ドメイン
要するに3権分立の『3権』に『純粋テクノロジー』を加えた4つのルートがあるのです。
内容については順に説明します。
2 ネオ・ラッダイト討伐|3権ルート|法改正・法整備
古い時代の法規制を解消する原則的ルートは法改正・法整備です。
要するに政治による判断を経る,ということです。
原理は単純ですが,多くの事情が『ブレーキやアクセル』になります。
この内容については別記事で説明しています。
(別記事『法改正ルート』;リンクは末尾に表示)
3 ネオ・ラッダイト討伐|3権ルート|裁判所→違憲判決アプローチ
裁判所には,特定の法律を『無効』と判断する権限があります。
この点,最高裁が『法令自体の違憲』を判断すると一般的に・広く法令自体が無効として扱われます。
言わば『法改正』があったのと同じ効果となります。
最高裁によるマーケット形成,と言える状況です。
具体例を示しますが,『法規制の撤廃』以外のものも含めます。
<最高裁によるマーケット形成の例>
あ ドラッグストアの普及
マツキヨなどのドラッグストア
い 医薬品のネット販売
一般用医薬品のインターネット販売を規制する厚生労働省の省令を『違法』とした
う 過払金請求マーケット
消費者金融などの『利息制限法オーバー金利』の返還請求を認めた
→膨大な(元)利用顧客が返還請求を行った
※判例は別記事に説明あり(リンクは下記)
『違憲』を主張する訴訟では,被告=行政サイドが『白旗』を上げるケースもあります。
この場合は形式的には『訴えの取下げ・却下』となって終了するのが通常です。
詳しくはこちら|違憲判決・法令無効→産業化・マーケット形成=実質的立法作用|具体例
4 ネオ・ラッダイト討伐|純粋テクノロジー・ルート|概要
以上のような国会・行政・司法(裁判所)を通すルートは一定の事務的コスト(時間的・経済的・精神的・レピュテーション)を要します。
これらを通さなくても『ネオ・ラッダイト』という抵抗を突破するルート(方法)もあります。
『純粋にテクノロジーだけ』で突破する,という,技術者の理想・醍醐味,と言えるものです。
ここで,既存の法令は2種類を考えます。
ここまで述べてきた『新サービスを止める=規制』と『新サービスが適用を受ける必要がある=保護』の2種類です。
<純粋テクノロジーでネオ・ラッダイトを突破する条件>
あ 新サービスが,既存の『法規制の対象』から外れている(逸れている)
い 新サービスが,既存の法律の『保護(制度)の対象内』
5 ネオ・ラッダイト討伐|純粋テクノロジー・ルート|具体例
純粋テクノロジールートでネオラッダイトを『突破』する具体例をまとめます。
前述の2つの条件に沿って整理します。
<純粋テクノロジーによるネオ・ラッダイト突破|具体例>
あ 『規制から逸れている』
例;不動産登記をリプレイスする『ブロックチェーン不動産権利記録』
売買の際に不動産登記を申請することは法的義務ではない
あくまでも対抗要件を得るための手段である
※民法177条
詳しくはこちら|対抗要件の制度(対抗関係における登記による優劣)の基本
↓テクノロジーによる突破!
登記をしなくても,新テクノロジーで『権利の保全(保護)』が実現すればリプレイス可能
い 『保護(制度)の対象内』
例;結婚届・戸籍制度をリプレイスする『ブロックチェーン結婚宣言』
戸籍上の『結婚届出』をしなくても『内縁』に該当すれば結婚同様に扱われる
参考;現存サービスでもSNS(twitter)上で『結婚しました』宣言を実行する方も存在する
→拡散して『修正・削除しても意味ない状態・魚拓』となる
詳しくはこちら|内縁の基本|実質的な『夫婦』は婚姻と同じ扱いになる
この『純粋テクノロジー』によるネオ・ラッダイト突破は,このように,既存の法令とうまく整合することが条件です。
ところで既存法令は当然,新テクノロジーを想定して作られたものではありません。
『規制から逸れる』『保護の対象内』という条件とのマッチングは偶然の要素が大きいです。
6 ネオ・ラッダイト討伐|『グレー』突っ込みルート
実際には,『純粋テクノロジー・ルート』で進むと思わぬ伏兵に遭遇することがあります。
『ネオ・ラッダイト軍の伏兵』と言うべき状況です。
『既存の法令に違反している』という主張がなされることがあります。
<伏兵ネオ・ラッダイト>
あ 刑事責任追及
捜査機関→刑事裁判
い 行政上の責任追及
行政処分・行政指導
単にライバルから『中止要請』を言われるというものは除きました。
大前提の一般論ですが,法律などの規定はある程度抽象的で,解釈に幅があります。
裁判所の判断ですら,プラス・マイナスのいずれ方向にも『ぶれる』のです。
行政の判断は,さらに『ぶれ』が大きい傾向があります。
この点『行政指導』は,一般的な社会の常識では『強い』ですが,法的・理論的には強制力がありません(最高裁昭和60年7月16日)。
そのため『広めに行政指導が行われる』傾向があるのです。
もちろん,あくまでも法的強制力はないので『サービス提供が強制的に止められる』ことはありません。
仮に『行政処分』を受けると,業務停止などの場合は『サービス提供』ができなくなります。
行政処分については,行政処分で否定する方法もあります。
また,刑事裁判では,主張・立証によっては『無罪』を勝ち取ることもあります。
いずれにしても,結果的に『裁判所ルート』に遷移させられるのです。
言わば『純粋テクノロジー・ルート』と『裁判所ルート』の中間的な位置付けになります。
7 ネオ・ラッダイトがベンチャーに機会提供〜グレーゾーンはベンチャーの聖域〜
ネオ・ラッダイト討伐のうち『グレー突っ込みルート』は,ベンチャーの本質と関係しています。
大手企業が参入しないので,ベンチャー専用の事業ドメイン,となるのです。
『グレーゾーンはベンチャーの聖域』という格言があるくらいです。
なお以上の『グレーゾーン』は『薄いグレー』ですが『濃いグレー』もあります。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|グレーゾーンはベンチャーの聖域|濃いグレー・薄いグレー|大企業バリアー
8 シオナイト現象=逆ラッダイト|敵軍内のレジスタンス
『ネオ・ラッダイト』は,新テクノロジーにとっては『敵軍』と言えます。
この点,敵軍をよく観察すると『レジスタンス』も存在します。
既存の法令が『既存サービスにブレーキをかけている』ものがあるのです。
<シオナイト現象=逆ラッダイト|メカニズム>
既存の法規制の『へぼさ』(不備)→既存サービスにブレーキ
→結果的に新テクノロジーの追い風となる
※『シオナイト』=XEVIOUSで要塞手前で登場する敵軍のレジスタンス
関連コンテンツ|著作権者=創作者の判定は難しい|著作者の刻印|XEVIOUSに学ぶ
<シオナイト現象の具体例>
あ 既存の法令の解釈論
預貯金の『情報開示制度』・『差押制度』の拡充
ア 債権者からの預貯金情報開示が強化されつつある
弁護士会照会など
イ 差押における『預貯金口座特定』が緩和されつつある
全店一括順位付け方式など
ウ ビットコインは『差押』の実効的方法がない
法律上は債権でも動産でもなく『情報』としか言えない存在
い 既存の法令解釈による現象
既存の金融機関の預貯金は,債権者・第三者に補足されやすい
↓
ビットコイン『だけ』が捕捉・差押フリー(補足されない)
詳しくはこちら|弁護士会照会|回答義務|開示拒否の正当事由・法的責任・不利益扱い
詳しくはこちら|預貯金の差押|特定の趣旨・範囲|支店特定不要説|特定方式
詳しくはこちら|現行法の差押・破産・再生での仮想通貨の扱い(差押ヘイブン)