【地熱発電×法規制・普及ハードル|自然公園法・環境影響評価・電気事業法】
1 地熱発電|普及しない理由=ハードル
2 地熱発電×自然公園法
3 地熱発電×環境影響評価法
4 地熱発電×電気事業法|ボイラー・タービン主任技術者
地熱発電に関する法規制を説明します。
『温泉法』に関する規制については別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
1 地熱発電|普及しない理由=ハードル
日本は地球上で『唯一』プレートが4枚重なる場所に位置しています。
観光クラスタにとっては『温泉大国』というコンテンツと言えます。
エネルギーの面では『地熱』が潜在的に大きいコンテンツ(というかエネルギー)です。
地熱発電の開発・普及の根本要素はあるのになかなか普及していません。
<地熱発電が普及しない理由=ハードル>
あ 国立・国定公園としての規制
熱源の82%が国立公園特別保護地区or特別地域内にある
い 開発コスト
ア コストが大きい
調査・開発段階で多数の坑井が必要である
イ コストの回収面
技術開発をした後に『輸出先』候補が多くない
開発のリードタイムが長い;10年程度
う 温泉事業者とのコンフリクト
地元温泉事業者からの強い反対
2 地熱発電×自然公園法
地熱発電普及のハードルの1つは法規制です(前述)。
自然公園法による『立地規制』をまとめます。
<自然公園法の規制×地熱発電>
あ 自然公園法の規制
国立・国定公園内の『工作物設置・木竹の伐採』などの開発行為
→環境大臣or都道府県知事の許可が必要
詳しくはこちら|再生可能エネルギー一般×発電事業|立地規制|保安林・国有林・国立公園・農地
い 従前の通達→消極方向であった
※昭和47年3月14日『国立公園および国定公園内における地熱発電の開発に関する了解事項』
※昭和49年9月17日『自然公園地域内において工業技術院が行う『全国地熱基礎調査』等について』
※平成6年2月3日『国定公園における地熱発電について』
う 新たな通達→緩和方向|東日本大震災後の制度変化
昭和49年,平成6年の通知を廃止
→一定の範囲で許可を認める指針
※平成24年3月27日『国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて』
3 地熱発電×環境影響評価法
地熱発電事業を遂行するには『環境影響評価』が必要となります。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|再生可能エネルギー共通×発電事業|環境影響評価・公害紛争解決制度・事例
4 地熱発電×電気事業法|ボイラー・タービン主任技術者
地熱発電には,細かい方式がありますが,いずれもタービンを利用します。
そこで『ボイラー・タービンの使用』についての法規制が適用されます。
<地熱発電×電気事業法|ボイラー・タービン主任技術者>
あ 原則|緩和前
一定の資格を有した者を『主任技術者』として選任する必要がある
※電気事業法43条
※施行規則52条1項5号
い 緩和後
ア 対象事業
出力100kw以下の地熱発電(温泉発電)
イ ボイラー・タービン主任技術者の選任の要件の緩和
次のいずれにも該当する者
・ボイラー取扱いに関する技能講習を修了した(2日間)
・電気工作物取扱に関する講習受講(1日間)or試験に合格した
※経済産業省『小出力発電設備用のボイラー・タービン主任技術者選任要件の新設について』平成25年8月
<参考情報>
高橋滋『震災・原発事故と環境法』民事法研究会p54〜187
豊永晋輔『NBL』964号商事法務p66〜