【インターネッツ×違法な表現・名誉毀損|判例|ニフティサーブ事件ほか】
1 インターネッツ名誉毀損|元祖判例|ニフティサーブ事件
2 サイト運営者の削除義務|予備校の罵詈雑言事件
3 サイト運営者の削除義務|『インチキ会社!』事件
1 インターネッツ名誉毀損|元祖判例|ニフティサーブ事件
インターネッツ上の過激な表現が問題になることがよくあります。
内容によって,民法上の不法行為や刑事責任が生じます。
判断基準などの基本的事項は別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
本記事では,実際のケースにおける判例を紹介します。
まずは,インターネッツ上の違法な表現の元祖と言える判例です。
<ニフティサーブ事件|事案>
あ 位置付け
インターネット上の表現に関する民事的な責任が判断された
この類型では日本初であった
い 事案
ア 表現がなされた場
『電子会議室・フォーラム』
Yは,Xを誹謗中傷する内容の書き込みを行った
※東京高裁平成13年9月5日;ニフティサーブ事件
<ニフティサーブ事件|裁判所の判断>
あ 表現の違法性=投稿者の責任
『嬰児殺し及び不法滞在の犯罪を犯した』という内容の発言部分
→社会的評価を低下させる+品性に欠ける言葉を用いている
→違法性が認められる
→損害賠償請求を認める
い シスオペの責任
条理上の削除義務はある
法的な監視・削除義務は認めない
→法的責任なし
う ニフティの責任
シスオペに法的責任が生じない
→連動してニフティにも責任なし
※東京高裁平成13年9月5日;ニフティサーブ事件
2 サイト運営者の削除義務|予備校の罵詈雑言事件
運営者の削除義務について判断した裁判例の内容をまとめます。
なお『削除義務』であると同時に表現の違法性の判断となっています。
<予備校の罵詈雑言事件|投稿内容>
原告である予備校に対する次のような表現
金持ちで,お芝居ができない者については学院が相手にしていないかのような表現
学院が医者の息子から金をふんだくることを経営方針としているということを述べている
学院がろくでもない予備校であることを述べ,表現も侮辱的である
学院のテキストが『パクリ』であると述べている
学院が誇大広告をしているかのような表現をしている
学院が悪徳商法を行い,被害者を出しているかのような表現をしている
学院内でいじめがあり,いじめられた生徒がいじめた生徒に火をつけ,大やけどをさせたという事件があったという事実があるかのように述べている
<予備校の罵詈雑言事件|裁判所の判断>
あ 表現についての判断
表現の態様が正当な批判,意見表明を超えている
名誉棄損,侮辱的な表現である
→違法である
い 削除請求についての判断
掲示板管理者の行った削除の措置に遅滞はない
一部の発言を削除しなかった
→存置された発言は通常の批判や意見の域を出ていない
→削除請求・損害賠償請求は認めない
※東京地裁平成16年5月18日
3 サイト運営者の削除義務|『インチキ会社!』事件
『インチキ会社!』事件の判例を紹介します。
<『インチキ会社!』事件|投稿内容>
原告である派遣業の会社に対する表現
『最悪に怪しい会社だ。』
『怪しい派遣業者だ。』
『会社の怪しさもさることながら、恐ろしいことに、事情説明の不足に対する不平不満をすべての他の応募者も言っていた。』
『彼は生まれつきの嘘つきだ。』
『怪しい』
『インチキ』
『うさんくさい』
『この会社がいかにインチキで一見まともに見えてしまう会社の『経営陣』はいわずもがな(実はインチキで満ちあふれている。)とわかるまで、一体何度契約書にサインをすればよいのか。』
『△△派遣の下品な者たち』
『これで、彼らはあなたたちの卒業証書のコピーを手に入れたわけだ。それらは学歴・卒業証書のないものたちが申請する際に適当に書き替えられて提出されるのだろう。』
『卑劣な△△、卑劣なX1』
<『インチキ会社!』事件|裁判所の判断>
あ 表現についての判断
表現としてふさわしくない
社会的評価を低下させる,名誉感情を害する
→違法である
い 削除請求についての判断
サイト運営者は投稿を行ったor誘導したわけではない
→削除請求・損害賠償請求は認めない
※東京高裁平成22年8月26日