【登記業務×キックバック・紹介料相場|司法書士会注意勧告事例】

1 登記業務×キックバック・スキーム発覚事例|概要
2 登記業務×キックバック・スキーム発覚事件|営業活動
3 登記業務×キックバック営業・紹介料相場判明事件
4 登記業務×実質紹介料疑惑事件|事例
5 登記業務×実質紹介料疑惑事件|判断

1 登記業務×キックバック・スキーム発覚事例|概要

司法書士の登記業務のマーケットは構造的な特殊な事情があります。
詳しくはこちら|紹介依存現象|登記業務|サービス均質性+需要寡占+負担者と決定権者の分離
『紹介』や『人脈』が経済的価値を持つ,という現象が生じます。
そこで『対価が動く』ということが生じる背景があります。
もちろん『紹介料』などの対価の授受はルールで禁止されています。
詳しくはこちら|資格業・士業|紹介料・広告の規制・受任義務・公定価格
本記事ではルール違反として発覚した事例を紹介します。

<キックバック・スキーム発覚事例|概要>

あ スタッフC=大手不動産会社幹部の人脈あり

過去に別の司法書士事務所で秘書として8年間勤務していた
その当時,大手不動産会社の接待を行っていた
社長・部長クラスとの人脈を持っていた

い スタッフE=不動産仲介業者の人脈あり

大手の不動産仲介業者に6年間勤務していた
不動産仲介業者との人脈を持っていた

う 案件獲得スキーム

C・Eの2人の人脈により依頼を確保していた

え 実績

平成18年度の当該司法書士事務所(A会員)の売上
=約7200万円
※確定申告書による金額
※『月報司法書士10年7月』日本司法書士会連合会p127〜

2 登記業務×キックバック・スキーム発覚事件|営業活動

上記の事案について,司法書士会による調査結果をまとめます。

<キックバック・スキーム発覚事件|営業活動>

あ 司法書士会の調査結果

キックバックを売り物にして営業活動をしているという情報もあった
スタッフが不動産仲介業者を対象とした営業活動を日常的に行っていた
食事を共にする・『女性が接客する飲食店』での接待であった

い 人脈ホルダーへの利益還元

売上のうち約5900万円が甲株式会社に支払われた
甲株式会社はCが多数株主・代表者である
甲・Cから『紹介元=不動産会社・仲介会社』への利益移転は不明である
甲・Cへの紹介料の支払いという実態とも考えられる

う 司法書士会の判断

非司法書士との提携禁止などに違反する
※司法書士会会則95条,司法書士倫理14条
※『月報司法書士10年7月』日本司法書士会連合会p127〜

3 登記業務×キックバック営業・紹介料相場判明事件

登記業務のキックバック=紹介料の相場が判明した事例を紹介します。

<キックバック営業・紹介料相場判明事件>

あ 事案

不動産会社の営業担当者に対してキックバックを払っていた
1件あたり1万5000円〜3万円

い 司法書士会の判断

不当依頼誘致行為の禁止などに違反する
※司法書士法26条,司法書士会会則93条
※『月報司法書士10年7月』日本司法書士会連合会p132〜

4 登記業務×実質紹介料疑惑事件|事例

登記業務の案件獲得の対価,が直接的な『紹介料』ではないケースもあります。

<実質紹介料疑惑事件|事例>

あ 行政書士に丸投げ疑惑

当該事務所では年間1400件近くの登記申請件数がある
登記申請書類の確認→なし
件数の把握自体→なし
当該事務所は『行政書士事務所』併設であった

い 業務遂行丸投げ疑惑

本来,司法書士の職印は1つであるべきである
→スタッフ使用のためのものも含めて合計5つの職印があった
それぞれのスタッフが勝手に使用していた
司法書士が業務を把握すれば良いが,していなかった(前記)
認印も同様の使用方法であった

う 外形的丸投げ疑惑

事務所が使用する登記識別情報のカバー・封筒の表示・表記
→『行政書士が登記申請に関与しているような誤解を与えかねない表示』
司法書士はこの状態を放置していた
※『月報司法書士10年7月』日本司法書士会連合会p134〜

5 登記業務×実質紹介料疑惑事件|判断

上記事案についての分析と司法書士会の判断をまとめます。

<実質紹介料疑惑事件|判断>

あ 全体の総括

行政書士の人脈により案件を獲得していた
司法書士は実質的な関与が薄かった
利益も行政書士が大部分を受領していたと推測される

い 司法書士会の判断

他人による業務取扱の禁止・品位保持などに違反する
※司法書士法施行規則24条,会則74条
※『月報司法書士10年7月』日本司法書士会連合会p134〜

もちろん,真面目な営業活動をしている司法書士が大半です。
詳しくはこちら|紹介依存現象|登記業務|サービス均質性+需要寡占+負担者と決定権者の分離
ごく一部の不正によって業界全体の評判に悪影響が生じていると言えましょう。

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