【レンタルサーバー|約款に関する事項|典型例・有効性】
1 レンタルサーバー・クラウド|約款|典型条項
2 責任免除規定×有効性|基本
3 消費者契約法|責任免除規定×有効性
4 消費者契約法|責任免除規定×有効性|まとめ
5 責任免除規定×有効性|賠償額上限|判例|概要
6 バックアップ機能付き|責任免除規定×有効性
1 レンタルサーバー・クラウド|約款|典型条項
レンタルサーバーでは『データ消失』のリスクがあります。
そこで,通常,約款において一定の配慮がなされています。
一般的・典型的な条項をまとめておきます。
<レンタルサーバー・クラウド|約款|典型条項>
あ 基本的事項
一般的に,約款に免責条項が入っている
い バックアップ義務規定
ユーザーはデータのバックアップをする義務がある
う 責任の免除or制限規定
バックアップ不備による損害について
→保管業者の責任の一部or全部が免除される
え 重過失限定規定
保管業者の責任を『故意・重過失』による事故に限定する
お 損害額上限規定
『既払いの利用料金の総額』を賠償額の上限とする
このように保管業者の責任を回避・排除する内容となっています。
しかし,内容によっては無効となることもあります。
2 責任免除規定×有効性|基本
保管業者の責任を免除する規定の有効性が問題になることが多いです。
有効性判断についての基本的事項をまとめます。
<責任免除規定×有効性|基本>
あ 公序良俗
著しく合理性を欠く場合
→公序良俗違反により無効となる可能性がある
※民法90条
い 消費者契約法
ユーザーが『消費者』に該当する場合
→消費者契約法により無効となる可能性がある(※1)
3 消費者契約法|責任免除規定×有効性
消費者契約法によって責任免除規定が無効となることもあります。
消費者契約法における有効性に関するルールをまとめます。
<消費者契約法|責任免除規定×有効性(上記※1)>
あ 前提事情
『消費者契約』に該当する
詳しくはこちら|消費者契約法|基本|定義・不当勧誘行為・不当条項・差止請求
い 全部免除
事業者の負う賠償責任を全部免除する規定
→無効となる
※消費者契約法8条1項1号,3号
う 故意・重過失×一部免除
事業者の故意・重過失による賠償責任を一部免除する規定
→無効となる
※消費者契約法8条1項2号,4号
詳しくはこちら|消費者契約法|不当条項|事業者の責任免除・消費者の負担加重
4 消費者契約法|責任免除規定×有効性|まとめ
前述の有効性判断を表にまとめます。
<消費者契約法|責任免除規定×有効性|まとめ>
あ 事業者の責任|一部免除
利用者の属性 | 保管業者の過失の程度 | 一部免除規定の有効性 | 根拠条文 |
消費者 | 重過失 | 無効 | 8条1項2号・4号 |
消費者 | 軽過失 | 有効 | 8条1項2号・4号反対解釈 |
消費者ではない | ― | 有効 | 消費者契約法の適用なし |
い 事業者の責任|全部免除
一律に無効となる
※消費者契約法8条1項1号,3号
5 責任免除規定×有効性|賠償額上限|判例|概要
消費者契約法の適用がない場合でも,規定が無効となることもあります。
一般的な民法の解釈論です。
判例となった代表的な事例の概要を紹介します。
<責任免除規定×有効性|賠償額上限|判例|概要>
ホテルにおける手荷物の破損・盗難
ホテルの賠償責任を制限する規定
→ホテル側に『故意・重過失』がある場合は適用されない
詳しくはこちら|責任制限・上限規定×有効性|ポートピアホテル事件
6 バックアップ機能付き|責任免除規定×有効性
サーバーのユーザーは『データ消失』を心配します。
そこで,利用契約の中には『データ保護を強化』したものもあります。
具体例と,法的な解釈論への影響をまとめます。
<バックアップ機能付き|責任免除規定×有効性>
あ 契約内容|バックアップ機能
サーバー側でバックアップを行う機能が付いている
い 責任免除規定×有効性
ユーザーがバックアップをする必要性が低い
=事業者が『データ保護』をする必要性が高い
→データ消失の免責規定は合理性が著しく欠ける
→公序良俗違反により無効となる可能性が高い
ファーストサーバー事件においても同様の状況がありました。
『ビス2』というサービスが上記のようなサービス内容だったのです。
詳しくはこちら|ファーストサーバー事件・データ消失|公表判例以外