【自動車突入×データ消失事故|判例】
1 自動車突入×データ消失事故|事案
2 自動車突入×データ消失事故|損害・全体
3 データ消失|保管されていたデータ・内容
4 データ消失|損害|未納品データ
5 データ消失|損害|基本パターン
6 データ消失|損害|提出済データ
7 自動車突入事故|休業損害
1 自動車突入×データ消失事故|事案
『データ消失』の損害額が算定される事例はいくつかあります。
その中でちょっと変わっている事案を紹介します。
『自動車が事務所に突入した』という事案についての判例です。
まずは事案をまとめます。
<自動車突入×データ消失事故|事案>
乗用車が事務所に突入する事故が生じた
パソコン・周辺機器が損壊した
パソコン内のデータが消失した
一部のデータは復元された
※旭川地裁平成11年6月30日
2 自動車突入×データ消失事故|損害・全体
損害として認めれた内容の全体をまとめます。
<自動車突入×データ消失事故|損害・全体>
あ データ消失
『再構築費用』が損害として認められた(後述)
い その他
休業損害などが認められた(後述)
事務所・パソコンの損壊を理由とするものである
『データ消失』による損害ではない
※旭川地裁平成11年6月30日
3 データ消失|保管されていたデータ・内容
このケースで消失したデータの内容をまとめます。
<データ消失|保管されていたデータ・内容>
あ 未納品データ
菓子店の店舗改装工事に伴うデータ
次のような内容である
ア 店舗外観図イ デザイン
例;看板・シール
ウ 企画書
内容=営業方法・収益予測
エ 参考資料
従前使用していた包装紙のデザイン
=スキャナーで読み取った画像データ
い 基本パターン
ロゴ・店舗外観図における基本的パターン
従前の業務で作成したデザインである
将来も繰り返し利用可能なものであった
う 提出済データ
既に納品された過去の業務におけるデザインなど
※旭川地裁平成11年6月30日
これらのすべてについて賠償責任が認められたわけではありません。
それぞれの項目についての判断を順に説明します。
4 データ消失|損害|未納品データ
納品前のデータについては損害として賠償責任が認められました。
<データ消失|損害|未納品データ>
あ 初回の構築費用|算定
消失したデータの作成・構築過程
→60万円程度の人件費で作成された
い 再構築費用|算定
一部は復元されている
復元に要する時間は初回の作成よりも短縮される
→損害は30万円とする
※旭川地裁平成11年6月30日
5 データ消失|損害|基本パターン
『基本パターン』のデータについても責任が認められました。
<データ消失|損害|基本パターン>
あ 復元実行
実際にデータの復元作業が行われた
い 再構築費用|算定
復元のために要した人件費は25万円であった
→損害は25万円とする
※旭川地裁平成11年6月30日
6 データ消失|損害|提出済データ
『提出済の過去の業務のデータ』については責任が否定されました。
<データ消失|損害|提出済データ>
あ 流用可能性
将来別の業務で流用できる可能性はほとんどない
い 価値判断
経済的な価値を認めない
→『損害』として認めない
※旭川地裁平成11年6月30日
7 自動車突入事故|休業損害
この事故による『休業損害』の賠償責任も認められました。
ただし『データ消失』とは直接関係ありません。
<自動車突入事故|休業損害>
あ 根本的状況
事務所・パソコンが損傷した
→これらを一定期間使用できなくなった
→営業利益を失った
い パソコン損傷の影響
パソコンの処理能力は大きかった
デザイン・企画業務が強化されていた
→事故により35日間使用できなくなった
う 休業損害|算定
35日分の営業利益
=1日2万円×35日間=70万円
※旭川地裁平成11年6月30日