【簡易宿所営業×フロントの要否|衛生管理要領×条例・食い違い問題】
1 衛生管理要領改正×条例との齟齬|フロント設置
2 自治体の対応|政府方針に反するヤミ条例
3 衛生管理要領vs条例|優劣・有効性|概要
4 衛生管理要領vs条例|優劣・有効性|考察
5 旅館業許可×コスト・ブロック現象|概要
6 衛生管理要領改正×条例との齟齬|解消の要請
7 衛生管理要領改正×条例との齟齬|参考サンプル
1 衛生管理要領改正×条例との齟齬|フロント設置
簡易宿所営業のフロントの要否はルール変更がありました。
詳しくはこちら|簡易宿所営業×フロントの要否|基本|衛生管理要領改正
一方で『自治体の条例』として別のルールもあります。
すると,2つのルールの食い違いが生じることもあります。
<衛生管理要領改正×条例との齟齬|フロント設置>
あ 要領改正
小規模な『簡易宿所営業』について
→フロント設置を不要とする要領改正を行った
い 条例
自治体が旅館業営業に関して条例規定を制定している
フロント設置を必要と規定している自治体もある
※平成28年3月30日施行令改正通達『第3 4』
2 自治体の対応|政府方針に反するヤミ条例
地方自治体は独自に条例で旅館業のルールを定めています。
簡易宿所営業のフロント設置義務の規定を持つ条例もあります。
さらに,施行令改正の前後で設置義務を作った自治体もあります。
政府の方針に真っ向から反する『法の支配』を害する状態です。
東京やそれ以外の主要な自治体の条例や方針については別に説明しています。
詳しくはこちら|簡易宿所営業×フロントの要否|主要自治体の条例・方針|ヤミ条例
このように衛生管理要領と条例の食い違いが存在しています。
法的な解釈論を次に説明します。
3 衛生管理要領vs条例|優劣・有効性|概要
『要領』と『条例』の優劣という一般論として整理します。
<衛生管理要領vs条例|優劣・有効性|概要>
あ 衛生管理要領|法的性質
『通達』の1種である
行政内部の文書である=民主的プロセスを経ていない
国民・事業者・裁判所を法的に拘束しない
詳しくはこちら|通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)
い 条例|法的性質
地方自治体の議会が制定する
住民・事業者・裁判所を法的に拘束する
詳しくはこちら|地方自治体のルール|条例・規則|制定機関・法的根拠
う 形式的優劣
条例が優先となる
え 実質的優劣
通達には法令の解釈という側面もある
→『条例が法令の趣旨を逸脱する』可能性がある
→この場合は条例の規定が無効となる
詳しくはこちら|条例による規制の限界|法律との関係・抵触|徳島市公安条例事件
4 衛生管理要領vs条例|優劣・有効性|考察
理論的には『法令の趣旨』と条例の整合性で有効性が判断されます。
簡易宿所で『フロントが必要』という規定は旅館業法の趣旨を逸脱するとも思えます。
厚生労働省は『フロント必要』という条例規定の廃止を要請しています(後述)。
これと同一タイミングでの条例改正による『規制強化』は異常です。
施行令改正によって旅館業法の基準を緩和した趣旨とは正反対の動きです。
挑発的で不合理なものです。
理論的には無効と判断される可能性も十分にあると思います。
しかし,裁判所に無効にしてもらう,ということには別のハードルがあります。
次に説明します。
5 旅館業許可×コスト・ブロック現象|概要
前述の見解は理論的な分析です。
現実・実務に置き換えると,別の大きな問題があります。
具体例を使ってまとめます。
<旅館業許可×コスト・ブロック現象|概要>
あ 背景|民泊×簡易宿所営業許可申請
Aが自宅を利用して民泊を行おうと思った
Aは簡易宿所営業の許可申請を行った
い 1次的対応=行政判断
行政は『フロントがない』ことを理由に不許可とした
う 理論|行政訴訟
救済措置として行政訴訟がある
え コスト・ブロック現象
Aが想定される事業の規模は小さい
一方,訴訟提起・維持のコストは異様に大きい
→行政訴訟提起を断念する傾向がとても強い
コスト・ブロック現象については別に説明しています。
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
6 衛生管理要領改正×条例との齟齬|解消の要請
ちょっと話題を戻します。
フロント設置に関する要領が改正され,条例との齟齬があります。
当然,好ましくない状態です。
厚生労働省としては『解消』を望んでいます。
とは言っても厚生労働省には『条例変更』の権限はありません。
『メッセージを送る』のが最大限の努力でしょう。
<衛生管理要領改正×条例との齟齬|解消の要請>
あ 齟齬解消|要請
厚生労働省は自治体に対して必要な対応を要請する
通達上の文言=『特段の御配慮をお願いする』
い 必要な対応|概要
条例改正・弾力的運用
詳しくはこちら|施行令改正|留意事項・条例との齟齬問題
※平成28年3月30日施行令改正通達『第3 4』
7 衛生管理要領改正×条例との齟齬|参考サンプル
厚生労働省は自治体に『条例改正』を望んでいます。
改正の作業を促すために『改正案の内容』まで進呈しています。
<衛生管理要領改正×条例との齟齬|参考サンプル>
あ 条例・運用変更のガイド
具体的な内容について参考となるサンプルがある
→『伝統的建造物』の規制緩和に関する通達
=平成24年4月1日健発0401第1号『第2 4・5』
い 流用する規定
『あ』の通達の中の次の規定
ア フロント代替機能イ 緊急対応体制
※平成28年3月30日施行令改正通達『第3 4』
『伝統的建造物』に関する緩和措置については別に説明しています。
進呈した『参考とすべき規定』も紹介してあります。
詳しくはこちら|許可基準緩和|既存制度|伝統的建造物|フロント代替機能・緊急対応体制