【複数箇所の部屋×旅館業許可|一体性・多数人共用|用途混在】
1 1棟の中の複数部屋|前提状況
2 旅館業×施設の一体性
3 許可審査×多数人・共用
4 宿泊以外の部屋混在×衛生管理体制→NG方向
5 複数の別建物|前提状況
6 複数の別建物×一体性→否定方向
7 所有者・サービス運営者|同一性→不要
1 1棟の中の複数部屋|前提状況
民泊サービスはこれからも多様化が進みます。
1棟の建物の中の一部・複数の部屋を活用するアイデアがあります。
これについて簡易宿所営業として認められかどうかを説明します。
まずは前提の事情を整理します。
<1棟の中の複数部屋|前提状況>
あ 宿泊用の部屋
『部屋』が1棟の建物の中に3つある
部屋番号=101・205・308
部屋の所有者が同一/別人のいずれでも良い(※1)
い 宿泊サービス運営
運営会社が簡易宿所営業の許可申請を行う
う 相部屋/個室|分類
次のように運用する(※2)
部屋 | 相部屋/個室 | 合計床面積 |
101・205 | 相部屋 | 60平方メートル |
308 | 個室 | 45平方メートル |
※平成28年3月大田区役所生活衛生課ヒアリング
2 旅館業×施設の一体性
前記の状況では『施設の一体性』が問題になります。
まずは一体性が要求されるという基本的事項をまとめます。
<旅館業×施設の一体性>
あ 旅館業|施設の一体性
旅館業の対象は1つの宿泊施設であることが必要
い 一体性|判断
次のような事情から総合的に施設としての一体性を判断する
ア 物理的な構造イ 管理・機能的な構造
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
3 許可審査×多数人・共用
簡易宿所営業には『多数人・共用』という定義があります。
(別記事『簡易宿所営業|多数人共用|基本』;リンクは末尾に表示)
前記の状況について『多数人・共用』をクリアするかどうかを説明します。
<許可審査×多数人・共用>
あ 多数人・共用|規制
簡易宿所営業の施設は『多数人・共用が主』であることが必要
一般的に『延床面積の過半の床面積が相部屋』とされる
※大田区旅館業法施行条例9条1項6号
い 共用×床面積
前提事情(上記※2)の部屋の面積
→相部屋の床面積が2分の1を超えている
→クリアする
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
単純に床面積で計算するとクリアすることになります。
4 宿泊以外の部屋混在×衛生管理体制→NG方向
前記の状況だと『飛び飛びの部屋』というところも問題です。
これについての法的扱いをまとめます。
<宿泊以外の部屋混在×衛生管理体制→NG方向>
あ 前提事情
『部屋』が1棟の建物の中に複数ある
1棟の『すべての部屋』ではない
=宿泊部屋が飛び飛びの部屋である
い 施設の用途
宿泊者以外=宿泊サービスとは無関係の居住者がいる
『宿泊サービス』以外の用途の部屋が混在している
=エリアが区分けされていない
=無関係の者が立ち入りできる状態にある
う 解釈論
衛生管理体制として問題がある
想定されていない形態である
→不許可となる可能性が高い
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
5 複数の別建物|前提状況
前記とは違う空部屋の活用方法のアイデアもあります。
複数の部屋が『別建物』にあるという状況です。
<複数の別建物|前提状況>
あ 宿泊用の部屋
『部屋』は3つの別の建物にそれぞれ1つある
・Aマンションの101
・Bマンションの205
・Cマンションの308
い 宿泊サービス運営
運営会社が簡易宿所営業の許可申請を行う
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
6 複数の別建物×一体性→否定方向
前記の状況では『施設の一体性』が否定される方向性です。
<複数の別建物×一体性→否定方向>
複数の別の建物
→『施設としての一体性』が否定される傾向が強い
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
7 所有者・サービス運営者|同一性→不要
宿泊サービスの事業者や所有者の同一性について整理します。
<所有者・サービス運営者|同一性→不要(※1)>
あ 旅館業許可の単位
『施設』単位
→『施設の一体性』があることが必要である
い 所有者との同一性
所有者・宿泊サービス事業者が異なっていても問題ない
施設の所有者が複数存在することも問題ない
う 事業者の単一性
宿泊サービス事業者は1人or1社が想定されている
え 集約管理・運営|具体例
次のような方法は可能である
複数の所有者から1つのサービス事業者が運営を引き受ける
※平成28年3月大田区生活衛生課ヒアリング
空部屋の有効活用に向けたサービス展開が期待されます。