【動物×占有による取得|脱走→捕獲|ペットの種類の分類・『家畜』判断】
1 ペットの脱走→捕獲|占有者による取得|全体
2 動物の占有・捕獲|判断基準
3 動物×捕獲者の取得|一般的なペット
4 動物×捕獲者の取得|野生みたいな種類
5 家畜以外の動物|解釈・典型例
6 動物の種類×『家畜』判断|具体例
1 ペットの脱走→捕獲|占有者による取得|全体
脱走したペットを捕獲するというケースもあります。
この場合に『所有権』の法的扱いはちょっと複雑です。
まずは法的扱いを全体的に整理します。
<ペットの脱走→捕獲|占有者による取得|全体>
あ 前提事情
飼主Aのペットが『脱走』した
Aのもとに戻ってこない
別の人Bがペットを捕獲した(※1)
Bが飼育している
い 法的扱い|概要
ペットの種類によって異なる
ア 一般的にペットにされる動物
Bが所有権を取得することはない(※2)
イ 『野生』みたいな種類の動物
状況によってBが所有権を取得する(※3)
ペットの種類によって法的扱いが異なるのです。
2 動物の占有・捕獲|判断基準
動物の『捕獲』の意味・判断が問題になることもあります。
法的には『占有』の判断ということになります。
これについては別に説明しています。
(別記事『動物の占有・捕獲』;リンクは末尾に表示)
3 動物×捕獲者の取得|一般的なペット
一般的なペットを捕獲した場合の法的扱いをまとめます。
<動物×捕獲者の取得|一般的なペット(上記※2)>
あ 動物→動産扱い
一般的にペットとされる動物を『捕獲→飼育』した
動物は民法では『動産』扱いとなる
※民法86条2項
い 即時取得→適用なし
『取引』がない
→即時取得は成り立たない
※民法192条
う 具体例
Aのペットが脱走した
→Bが捕まえて飼育した
→所有者はAのまま
4 動物×捕獲者の取得|野生みたいな種類
『野生のような種類』のペットを捕獲するケースもあります。
この場合の法的扱いを整理します。
<動物×捕獲者の取得|野生みたいな種類(上記※3)>
あ 要件
次の『い〜え』のすべてに該当する場合
→捕獲者が所有権を取得する
い 野生的種類
通常『野生』と思える種類の動物である
条文では『家畜以外の動物』と規定されている(※4)
う 善意
捕獲者が捕獲時に『善意』であった
=『飼主がいること』を知らなかった
え 1か月ルール
飼主が『脱走』から1か月間,返還請求をしなかった
※民法195条
1か月程度で情が移ると言えましょう。
そこで,1か月後には『返さなくてよい』ことになるのです。
5 家畜以外の動物|解釈・典型例
条文上に『家畜』という文言が登場します(前記)。
解釈は一般的な語法とはちょっと違います。
<家畜以外の動物|解釈・典型例(上記※4)>
あ 民法|条文上の文言
『家畜以外の動物』
※民法195条
い 『家畜』|解釈
その地方では飼育されて生活するのが普通である動物
※『新版注釈民法(7)物権(2)』有斐閣p230
う 『家畜以外の動物』|意味
一般的に野生と思われる種類の動物
6 動物の種類×『家畜』判断|具体例
『家畜』の判断について,具体例を挙げて説明します。
<動物の種類×『家畜』判断|具体例>
あ ヘビ|アオダイショウ
住宅街でアオダイショウを捕獲した
その地域では,ヒトが飼育しているケースはない
→野生であると思うのが通常である
→『家畜以外の動物』に該当する
い ニシキヘビ
河川敷でニシキヘビを捕獲した
この地域では野生のニシキヘビは生息しない
→誰かが飼育していると思われる
→『家畜以外の動物』には該当しない
う 猫
ア 基本的事項
次の特徴の猫を捕獲した
→誰かが飼育していると思われる
→『家畜以外の動物』には該当しない
イ 飼主を思わせる事情
首輪が付いている
毛並み・体がきれいである