【行政訴訟・取消訴訟|処分性|基本|処分の定義・給付請求との並立】
1 行政訴訟|取消訴訟|対象
2 『処分』定義|判例
3 処分性|問題となる形態・分類
4 処分性|問題となる形態|判断・概要
5 処分性|給付請求との並立
6 処分性|その他の判例における判断
1 行政訴訟|取消訴訟|対象
『取消訴訟』では『処分性の要件』が必要とされます。
本記事では『処分性の要件』の基本的事項を説明します。
まず最初に『取消訴訟』の対象を整理します。
<行政訴訟|取消訴訟|対象>
あ 取消訴訟の種類
ア 処分取消訴訟イ 裁決取消訴訟 ※行政事件訴訟法3条2項
い 処分|定義
行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為
※行政事件訴訟法3条2項
う 裁決|定義
不服申立に対する行政庁の裁決,決定その他の行為
不服申立の例;審査請求,異議申立
※行政事件訴訟法3条3項
取消訴訟の対象は『処分・裁決』なのです。
『裁決』は分かりやすい手続です。
一方『処分』はその解釈がちょっと難しいです。
説明を続けます。
2 『処分』定義|判例
『処分』について,最高裁判例の定義・解釈を紹介します。
<『処分』定義|判例>
あ 判例|引用
その行為によって,国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている場合
※最高裁昭和30年2月24日
※最高裁昭和39年10月29日
い 要約
特定の者の具体的権利に直接的影響がある(※1)
結局,個別的な行政の行為の『評価』によって判断することになります。
『処分』に該当するかどうかの判断を『処分性』と呼びます。
行政の措置の『処分性』が曖昧なもの多くあります。
3 処分性|問題となる形態・分類
『処分性』が曖昧で見解が対立する種類を整理します。
<処分性|問題となる形態・分類>
あ 名宛人なしのルール設定・措置(※2)
名宛人なしの行政の意思表示
例;通達・告示・条例制定など
い 最終プロセス以外の意思決定(※3)
行政から特定人・法人への決定事項の通知
例;勧告・違反通知・行政指導など
う 法的根拠のない制度による行為(※4)
例;通達・要綱・ガイドラインなど
え 給付請求との並立(※5)
給付請求が可能である場合の『処分性』の判断
お 都市計画関連(※6)
都市計画では多くの特有の行政による行為がある
『あ』に含まれる
問題となるケースが多いので分類上独立させた
4 処分性|問題となる形態|判断・概要
上記のような問題となる形態についての判断の概要をまとめます。
<処分性|問題となる形態|判断・概要>
あ 原則
上記※2〜※6は『具体的権利への直接的影響』(上記※1)がない
→処分性は認められない
い 例外
個別的・具体的な内容を実質的に判断する
『具体的権利への直接的影響』(上記※1)がある場合
→例外的に処分性を認める
例外についてはいろいろな判例があります。
5 処分性|給付請求との並立
行政訴訟と別の請求方式が並立することがあります。
この場合に『処分性』が問題となります。
<処分性|給付請求との並立(上記※5)>
あ 事案
登録免許税を誤って納めた
納付者は還付金請求を行った
行政は拒否の通知を行った
い 請求方式|給付請求
還付金の請求について提訴する
→当然可能である
う 請求方式|取消訴訟
『拒否通知』の取消請求訴訟について
→処分性を認めた
つまり『い・う』のいずれの訴訟も提起できる
※最高裁平成17年4月14日
6 処分性|その他の判例における判断
前記以外の『処分性』の問題についても判例があります。
別の記事で説明しています。
通達・条例制定などの判断(上記※2)は次の記事で説明しています。
法的根拠のない制度による行為(上記※4)もこの記事に含みます。
詳しくはこちら|処分性|名宛人なしの行為|法的根拠のない行為|通達・告示・条例制定
最終プロセス以外の意思決定の判断(上記※3)は次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|処分性|最終プロセス以外の意思決定|勧告・違反通知
都市計画に関する判断(上記※6)は次の記事で説明しています。
詳しくはこちら|処分性|都市計画関連|区画整理事業計画・再開発計画・地区計画