【民泊による実害のまとめ(騒音・ゴミ投棄・不安感・匿名性・適法性・共用施設利用)】
1 民泊における実害のまとめ
2 民泊における騒音の実害
3 民泊におけるゴミ投棄の実害
4 民泊における不安感という害
5 民泊における連絡先不明という特徴
6 民泊における滞在者の匿名性という特徴
7 民泊における適法性の問題や騒動の実害
8 民泊における共用施設利用の実害
9 民泊の実害の元データ・資料
1 民泊における実害のまとめ
民泊サービスにより周辺住民への迷惑やリスクが生じることがあります。
実害が生じたら法的な責任の問題になります。民泊を運営する方にとっては,トラブルの予防策を考える際に,実際に生じている典型的な迷惑・実害の内容は役立ちます。
また民泊に関する規制の法整備の中でも,実害を予防するようなルールが作られています。
本記事では民泊サービスによる実害・リスクの内容を整理します。
まずは実害の全体をまとめます。
<民泊×実害|まとめ>
あ 実害の頻度・程度
実害の種類 | 戸建て | マンション |
騒音 | ◎ | △ |
ゴミ投棄 | ◯ | △ |
不安感 | ◯ | ◎ |
連絡先不明 | ◯ | ◯ |
滞在者の匿名性 | ◯ | ◯ |
適法性→騒動 | ◯ | ◯ |
共用施設利用 | ― | ◎ |
い 凡例
実害の頻度・程度の強度
強い←◎・◯・△→弱い
以下,これらの内容について説明します。
2 民泊における騒音の実害
騒音に関する実害を整理します。
施設が住宅なので,宿泊専用の施設(ホテル・旅館)よりも部屋が分かりにくいとか,部屋の防音性能が高くないということが構造的な原因です。
<民泊における騒音の実害>
あ 具体的行為|例
・ゲストが夜中に騒ぐ
・ゲストが別の部屋の扉をたたく
・ゲストが誤って別の部屋のドアホンを鳴らす
い 実害が大きくなる事情|例
・多くの人数が滞在している
・路地裏で特に閑静な環境である
う 実害が少なくなる事情|例
・1戸が広くないマンション
→騒音が生じることは少ない傾向がある
3 民泊におけるゴミ投棄の実害
ゴミ投棄に関する実害を整理します。
<民泊におけるゴミ投棄の実害>
あ 具体的行為|例
ア ゲスト
・ゲストが施設周辺にゴミを投げ捨てる
例;道路・エントランス・共用廊下・共用施設
・ルールに反する日時にゴミ集積場に捨てる
イ ホスト
・ゴミ集積場に捨てるゴミが大量である
・民泊施設から生じたゴミは『事業用』に分類される
→しかしホストが一般のゴミ集積場に捨てる
い 実害が少なくなる事情|例
・1戸が広くないマンション
→ゴミ投棄問題が生じることは少ない傾向がある
4 民泊における不安感という害
不安感という心理的な被害について整理します。
<民泊における不安感という害>
あ 具体的状況
不特定多数の旅行客が出入りする
→周辺住民が怖い・不審・心配に思う
い 不安感|内容|例
環境との違和感
抽象的な不安
火災・延焼の危険性
う オートロック×不安感
ア オートロック|性格
本来オートロックは『通行者が限定される』ものである
長期の居住者に限定されることが想定されている
イ 想定外
不特定多数の短期滞在社が通過する
→想定していない
→他の居住者は不安・不審に感じる
5 民泊における連絡先不明という特徴
連絡先が不明,という迷惑・困惑も生じています。
<民泊における連絡先不明という特徴>
あ 具体的状況|窓口不明
周辺住民が不満・要請を伝えたい場合
→滞在者は住宅の所有者=責任者とは別である
→所有者に伝達・連絡をする方法が分からない
→ゲストに言うor警察への通報することになる
い 具体的状況|管理会社非対応
周辺住民が管理会社に連絡をした場合
→管理会社は対応しない態度を取るケースがある
6 民泊における滞在者の匿名性という特徴
滞在者=ゲストの身元不明,という状況が生じることもあります。
<民泊における滞在者の匿名性という特徴>
あ 具体的状況|基本
建物の所有者・管理者が滞在者を把握できない
例;オーナーに無断で賃貸物件が民泊に利用される
い 発展的リスク
テロ・犯罪につながるリスクもある
7 民泊における適法性の問題や騒動の実害
現在,民泊に関する法整備が進められています。
逆にまだ『適法性が不明確』というものが多いです。
このことが,周辺住民の迷惑につながる可能性もあります。
<民泊における適法性の問題や騒動の実害>
あ 前提事情
民泊サービスが違法である可能性が高い場合
→保健所・警察の調査・捜査が行われることがある
→マスコミの取材の対象となる
い 騒動リスク
騒動となる可能性がある
=平穏な環境が害されるリスク
8 民泊における共用施設利用の実害
マンションには共用施設・設備があります。
この利用に関する迷惑・実害を整理します。
<民泊における共用施設利用の実害>
あ 具体的行為|例
ゲストの利用により共用施設が破損・汚損する
例;ソファーに土足でのぼる
い フリーライド
共用施設の維持・管理費用は区分所有者全体で負担している
民泊のゲストの利用頻度・程度が特に重くなる
→実質的に他の区分所有者の負担にただ乗りしている
9 民泊の実害の元データ・資料
以上のまとめの元となる情報や資料を示しておきます。
本記事では,民泊によって生じる実害の典型例を説明しました。
平成29年に住宅宿泊事業法が制定され,今後施行されます。
民泊サービスの提供においては,常に新しいルールを把握して遵守し,また,個別的な問題の対応や,事前の予防も必要です。
実際に民泊のサービスを行っている方や,サービスを始めることを検討している方は,本サイトの記事だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。