【簡易宿所のトイレ設置基準(規定のバリエーションと実情)】
1 簡易宿所のパブリックトイレの設置義務
2 パブリックトイレの便器数の基準
3 トイレの手洗設備の基準
4 建物タイプによるトイレ設置の実情
5 一戸建てにおけるトイレ設置の実情
6 衛生管理要領・基準・条例リンク集|ソース
1 簡易宿所のパブリックトイレの設置義務
旅館業の許可基準にはいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|旅館業の営業許可基準の基本(全体・構造設備・欠格事由)
許可基準の1つに『トイレ』設置の基準があります。
本記事では簡易宿所営業のトイレ設置基準について説明します。
なお,ホテル・旅館営業と同じ基準が多いです。
本記事では簡易宿所営業を前提として説明します。
複数の滞在者が共同で使うトイレが必要ということがあります。『パブリックトイレ』と呼びます。
まずは設置義務の基本的事項をまとめます。
<簡易宿所のパブリックトイレの設置義務>
あ 衛生管理要領
便所を付設していない客室を有する階には共同便所を設ける
調理室及び配膳室から適当な距離を有している
おおむね3m以上が望ましい
※衛生管理要領『Ⅱ 20(3)』
い 東京都大田区の条例
便所を付設していない客室を有する階には、男子用と女子用とを区分した共同便所を設け、規則で定める宿泊定員に応じた数の便器を設置すること
※旅館業法3条2項,旅館業法施行令1条4項5号
※大田区旅館業法施行条例7条9号イ,9条3項
う 不要となる場合
各個室内にトイレが設置されている場合
→『パブリックトイレ』は不要である
なお,衛生管理要領は直接的に強制力のあるものではありません。
各自治体が定める条例が正式なルールと言えます。
条例のサンプルが衛生管理要領というような位置付けです。
これについては別の記事で説明しています(後記※2)。
2 パブリックトイレの便器数の基準
パブリックトイレのルールには『便器数』もあります。
<パブリックトイレの便器数の基準>
あ 衛生管理要領
収容定員 | 便器数合計 |
1〜5人 | 1 |
6〜10人 | 2 |
11〜15人 | 3 |
16〜20人 | 4 |
21〜25人 | 5 |
26〜30人 | 6 |
※衛生管理要領『Ⅱ第1 20(2)』
い 地方自治体・条例|傾向
ア 衛生管理要領流用タイプ
自治体の条例は『あ』と同一の規定が多い
イ 加重タイプ
最低限を『2個』とする条例も多い
※大田区旅館業法施行条例7条9号,9条3項,規則14条
う 地方自治体・条例|具体例
ア トイレは各階に設置するイ 各階に男/女トイレが必要
※品川区旅館業条例7条9項,9条2項
※墨田区旅館業法施行条例8条9号
3 トイレの手洗設備の基準
トイレには『手洗設備』も必要とされています。
<トイレの手洗設備の基準>
あ 衛生管理要領
便所には手洗設備を設ける
※衛生管理要領『Ⅱ第1 20(1)』
い 地方自治体・条例|傾向
自治体の条例は『あ』と同一の規定が多い
※大田区旅館業法施行条例7条9号ア,9条3項
う 一般的解釈・指導
水タンクの上の水の流れ
→『手洗い』としては扱わない
※大田区役所生活衛生課平成28年3月ヒアリング
4 建物タイプによるトイレ設置の実情
民泊として簡易宿所営業の許可を取得する場面を想定します。
建物のタイプごとに,トイレの基準との関係を整理します。
<建物タイプによるトイレ設置の実情>
あ マンション1棟×民泊
マンション1棟全体を簡易宿所営業施設にする場合
→1戸ごとにトイレがあればパブリックトイレは不要である
い マンションの1戸×民泊
マンションの中の1居室を簡易宿所営業施設にする場合
→通常トイレが設置されている
→特に問題は生じない
ただし,別のハードルがある
内容=フロント設置など
う 一戸建て×民泊
一戸建て全体を簡易宿所営業施設にする場合
→通常は個々の部屋にはトイレが設置されていない
→パブリックトイレの新設が必要となる(後記※1)
※大田区役所生活衛生課平成28年3月ヒアリング
5 一戸建てにおけるトイレ設置の実情
特に一戸建てではトイレ設置ルールが大きなハードルになりがちです。
具体的・典型的な実情,状況をまとめます。
<一戸建てにおけるトイレ設置の実情(※1)>
あ 現実的ハードル
各フロアに男女用各1個のトイレが必要となる
い 具体例
木造3階の場合
→各階に男性/女性トイレの両方が必要となる
→合計6個が必要となる
う NG・具体例
1階に男性トイレ,2階に女性トイレが設置されている
→設置基準を満たさない
※平成27年9月品川保健所ヒアリング
え 設置×コスト削減
最小限としては『男性・小用』のものでも構わない
→設置費用自体は下がる
しかし,かえって無駄とも言える
6 衛生管理要領・基準・条例リンク集|ソース
以上の説明でいろいろなルール・基準を使いました。
これらについての元の情報・資料がいくつかあります。
ソースをまとめておきます。
<衛生管理要領・基準・条例リンク集|ソース(※2)>
あ 衛生管理要領
法的位置付け・ソースについて説明している
詳しくはこちら|衛生管理要領|法的位置付け・ソース|従来バージョン・平成28年改正
い 東京都大田区|簡易宿所営業構造基準
う 主要な条例|リンク集
主要な自治体の条例へのリンクをまとめてある
詳しくはこちら|旅館業法|立法権限の委任|東京・特別区の条例リンク集