【オンライン賭博×賭博場開張図利罪|否定説|平成27年福岡地裁】
1 オンライン賭博×賭博場開張図利罪→不成立
2 オンライン賭博×賭博場開張図利罪の幇助犯→不成立
3 オンライン賭博×常習賭博罪の幇助犯→成立
4 ハイテク&ローテク・オンライン賭博事件|事案
5 オッズの提示|具体例|文面
6 『賭け』申込|具体例|文面
7 配当|具体例|文面
1 オンライン賭博×賭博場開張図利罪→不成立
オンラインの賭博は『賭博場』がないように思えます。
賭博場開張図利罪の成否について両方の見解があります。
詳しくはこちら|オンライン賭博×賭博場開張図利罪|見解・判例|全体
本記事では成立を否定した福岡地裁の裁判例を紹介します。
『賭博場開張図利罪』の成立を否定した部分をまとめます。
<オンライン賭博×賭博場開張図利罪→不成立>
あ 胴元|システム
胴元が,賭博に関する情報の収集,発信,集約・集計を行った
この作業には移動可能な情報通信機器を活用した
例;携帯電話の電子メール
い 『場所』の固定×『賭博場』判断
随時・場所が特定・固定されていない
=移動しながらということも含む
胴元は一定の場所or場所的設備を支配・確保・提供していない
→『賭博場』と評価できるものがない(※1)
※福岡地裁平成27年10月28日
2 オンライン賭博×賭博場開張図利罪の幇助犯→不成立
『幇助犯』についても判断されました。
前述のように『正犯』がないことから,幇助犯も否定されました。
<オンライン賭博×賭博場開張図利罪の幇助犯→不成立>
あ 胴元
賭博場を開張したとは認められない(上記※1)
→賭博場開張図利罪の正犯は成立しない
い 仲介者
『賭博場開張図利罪』の『幇助罪』は成立しない
※刑法62条1項
※福岡地裁平成27年10月28日
3 オンライン賭博×常習賭博罪の幇助犯→成立
胴元ではなく賭客に視点を移します。
賭客は『賭博罪』が成立します。
そうすると,仲介者は『賭博罪の幇助』に該当することになるのです。
<オンライン賭博×常習賭博罪の幇助犯→成立>
あ 幇助犯
Aは賭博常習者であった
仲介者Cはこれを容易にする行為をした
→『賭博罪の幇助犯』が成立する
※刑法186条1項,62条1項
い 常習性
『あ』の幇助行為当時も,仲介者Cは『賭博常習者』であった
→仲介者Cは『常習賭博罪の幇助犯』に該当する
う 量刑
仲介者について次の刑が言い渡された
懲役6か月
執行猶予2年
※福岡地裁平成27年10月28日
4 ハイテク&ローテク・オンライン賭博事件|事案
以上の説明は主に法解釈でした。
この裁判の前提となった事案の内容について,以下紹介します。
携帯電話での電子的な伝達手段を活用したものです。
一方で伝達内容はレガシーな電子メールで手動でした。
ハイテクとローテクの組み合わせによるオンライン賭博です。
まずは事案の全体をまとめます。
<ハイテク&ローテク・オンライン賭博事件|事案>
あ 野球賭博
プロ野球の試合結果への賭け
電子メールの伝達で『賭け』が行われた
い オッズの提示|伝達ルート
胴元B→仲介者C→賭客A
う オッズの提示|メール内容(※2)
ア 賭博のオッズ
劣勢と見られるチームに付されるハンディキャップ
イ 賭博申込の締切時刻
え 『賭け』申込|伝達ルート
賭客A→仲介者C→胴元B
お 『賭け』申込|メール内容(※3)
どのチームにいくらを賭けるか
か 配当|メール(※4)
試合の勝敗結果によって配当が生じる
これを電子メールで伝達する
※福岡地裁平成27年10月28日
5 オッズの提示|具体例|文面
オッズの提示の具体的内容をまとめます。
<オッズの提示|具体例|文面(上記※2)>
必ず確認後(中略)の消去をお願いします。
セ・リーグ
横浜×広島(1.5)
阪神(タイ)×中日
パ・リーグ
日本ハム(タイ)×楽天
西武×ソフトバンク(1.5)
ロッテ×オリックス(1.7)
※福岡地裁平成27年10月28日
6 『賭け』申込|具体例|文面
『賭け』申込の具体的内容をまとめます。
いわゆる『ベット』です。
<『賭け』申込|具体例|文面(上記※3)>
あ 文面
ソフト25
ロッテ25
楽天25
中日25
横浜25
い 意味
ソフトバンクなどの5チームにそれぞれ25万円を賭ける
※福岡地裁平成27年10月28日
7 配当|具体例|文面
配当についての伝達の具体的内容をまとめます。
<配当|具体例|文面(上記※4)>
あ 文面
昨日分
ソ25ロ25横25→-75
楽天25→+22.5
中日25→引き分け
-52.5 -5→-57.5
い 意味
ア ソフトバンク・ロッテ・横浜DeNA
賭けた合計75万円は負け
イ 楽天
賭けた25万円は勝ち
その1割=2万5千円が寺銭として差し引かれる
→22万5000円を賭客が得る
ウ 中日
賭けた25万円は引き分け
エ トータル
その週の前日までの当該賭客の負けが5万円
当該日の負けが52万5000円
→集計すると57万5000円の負け
※福岡地裁平成27年10月28日