【ネズミ講の入会金名目と『預り金』判断に関する裁判例】
1 ネズミ講入会金と『預り金』(概要)
2 ネズミ講入会金と『預り金』(事案)
3 ネズミ講入会金と『預り金』(結論)
1 ネズミ講入会金と『預り金』(概要)
資金提供の方式によっては『預り金』該当性の判断が分かれる状況もあります。
いわゆるネズミ講の入会金が『預り金』として認められた裁判例があります。
本記事では,このケースについて説明します。
ところで,現在では,ネズミ講自体が法律で規制されています。本記事で紹介する裁判例は,この法律の施行前でした。そこで,出資法の預り金規制の問題だけが表面化したのです。
事案の概要と無限連鎖講防止法との関係を整理します。
<ネズミ講入会金と『預り金』(概要)>
あ 概要
北日本相互経済互助会が資金を集めた
無限連鎖講を組織運営方法を参考にした
い 無限連鎖講防止法との関係
無限連鎖講防止法の施行は昭和54年5月11日である
この事案は同法施行前であった
詳しくはこちら|マルチ商法=連鎖販売取引=適法だが規制あり|ねずみ講=無限連鎖講=違法
2 ネズミ講入会金と『預り金』(事案)
事案の詳しい内容を整理します。
<ネズミ講入会金と『預り金』(事案)>
あ 集金と返還のシステム
会員になる者は入会金5万円を支払う
入会金は次のような扱いがなされる
ア 維持費
入会金のうち1万円部分
互助会の維持費に充てる
中途退会の場合にも返還されない
イ 相互扶助金
入会金のうち4万円部分
満期の返還額は16万円が多かった
中途退会時には4万円を限度として返還される
い 運用の規模
受け入れた期間=約6か月
資金提供者=94名
受入金額=合計1816万円
※札幌地裁昭和50年11月12日;北日本相互経済互助会事件
3 ネズミ講入会金と『預り金』(結論)
裁判所は最終的に『預り金』として認めました。一般的なネズミ講のシステムとは違って『返還の約束』があったので認められたのです。通常のネズミ講のシステムでは預り金に該当しません。もちろん現在は,無限連鎖講防止法で禁止されています(前記)。
<ネズミ講入会金と『預り金』(結論)>
あ 一般的なネズミ講との違い
元本額の返還が約定されていた
条件の成就に依存することがなかった
例;後続会員の獲得の有無
一般的な無限連鎖講のシステムとは異なる
※吉田淳一『判批』警論29巻5号・前掲注(1)p139
い 『預り金』該当性の判断
元本を保証したものと言える
→預り金に該当する
※札幌地裁昭和50年11月12日;北日本相互経済互助会事件