【著作権・著作者隣接権の侵害の法的責任(全体)と提案内容】
1 著作権・著作者隣接権侵害の法的責任(総論)
2 著作権・著作者隣接権侵害の刑事責任(概要)
3 著作権・著作者隣接権侵害の民事責任
4 権利侵害に関するプラットフォーマーの責任
5 著作権侵害に関する具体的な提案・解決の内容
1 著作権・著作者隣接権侵害の法的責任(総論)
著作物を不正に利用すると当然,法律的な責任が生じます。法律的には,著作権や著作者隣接権侵害による法的責任というものです。
この法的責任にはいろいろなものがあります。
本記事では,著作権や著作者隣接権侵害の法的責任の全体を分類して説明します。
2 著作権・著作者隣接権侵害の刑事責任(概要)
著作権や著作者隣接権の侵害によって生じる刑事責任の概要をまとめます。
<著作権・著作者隣接権侵害の刑事責任(概要)>
あ 構成要件
一定の著作権・著作者隣接権などの侵害行為
い 罰則
内容によって法定刑が規定されている
主な法定刑は次のようなものがある
ア 懲役
10年以下/5年以下
イ 罰金
1000万円以下/500万円以下
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権の侵害の刑事責任(法定刑・量刑・告訴状)
3 著作権・著作者隣接権侵害の民事責任
著作権や著作者隣接権の侵害によって生じる民事責任の内容をまとめます。
<著作権・著作者隣接権侵害の民事責任>
あ 差止請求
権利侵害の停止・予防を請求する
※著作権法112条
い 損害賠償請求(金銭請求)
権利侵害により生じた損害の賠償
不当利得返還請求という性質もあり得る
※民法709条,703条,著作権法114条,114条の5
詳しくはこちら|著作権侵害に対する金銭の請求(法的性質・金額算定)
う 名誉回復措置請求
著作権侵害については肯定/否定の見解がある
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権侵害に対する名誉回復措置請求(基本)
※著作権法115条,民法723条
4 権利侵害に関するプラットフォーマーの責任
著作権などの侵害では『直接侵害した者』以外にも責任が生じることがあります。掲示板などの,権利侵害の『場を提供した者』のことです。プラットフォーマーと呼ばれる者の責任です。
<権利侵害に関するプラットフォーマーの責任>
あ 発信者情報開示請求
権利侵害の情報を発信した者に関する情報の開示を請求する
※プロバイダ責任制限法4条
い 削除請求
権利を侵害する投稿(情報)の削除を請求する
※プロバイダ責任制限法3条1項
う 損害賠償請求
『あ・い』の請求への対応に不備があった場合
→損害賠償責任が生じることがある
詳しくはこちら|発信者情報開示請求|基本|オンラインの誹謗中傷・名誉毀損→加害者特定
5 著作権侵害に関する具体的な提案・解決の内容
著作物の不正利用があった場合,以上のような責任のすべてを追及するべきであるとは限りません。著作者などの被害者は,加害者に対して任意に要求や提案を示すのが一般的です。つまり交渉のことです。要求や合意に至る内容のバラエティを整理します。
<著作権侵害に関する具体的な提案・解決の内容>
あ 基本的事項
要請(提案)・合意内容について
→『い・う』のようなものがある
提案内容は自由に組み合わせ・選択ができる
協議によって合意に至れば自由な組み合わせが可能である
い 法的な請求
ア 削除イ 賠償金支払
不法行為or不当利得としての性質である
『使用料』として合意することも可能である
ウ 訂正掲載
(真の)著作者を表示すること
エ 謝罪掲載
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権侵害に対する名誉回復措置請求(基本)
う 任意の提案
ア 著作者を表記するイ 指定URLを表記するウ 他の著作物も含めて販売する
え 組み合わせの例
『ア・イ』だけを提案する(合意する)
ア 対象の画像に指定のウェブサイトへのリンクを設置するイ 著作者の記載を明示する
任意の提案では法的請求権に限定されないところに特徴があります。『侵害した者=敵』という位置付けから『購入者=顧客=取引先=ファン』という発想の転換もできるのです。