【著作権・著作者隣接権の侵害の刑事責任(法定刑・量刑・告訴状)】

1 著作権・著作者隣接権侵害の刑事責任
2 著作権・著作者隣接権侵害の法定刑
3 著作権法違反を親告罪とする規定
4 著作権法違反の刑事責任の相場(量刑)
5 著作権法違反の告訴状のサンプル
6 告訴状サンプルの補足説明

1 著作権・著作者隣接権侵害の刑事責任

著作権を侵害すると生じる法的責任はいくつかあります。
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権の侵害の法的責任(全体)と提案内容
その1つに刑事責任があります。著作権法違反による罰則のことです。
本記事では著作権や著作者隣接権侵害による刑事責任について説明します。

2 著作権・著作者隣接権侵害の法定刑

まず最初に,著作権法違反の罰則の規定,つまり法定刑についてまとめます。

<著作権・著作者隣接権侵害の法定刑(※3)

あ 著作権侵害

ア 基本 法定刑=懲役10年以下or罰金1000万円以下
併科あり
※著作権法119条1項
イ 両罰規定 法人の業務に関する違反行為について
両罰規定あり
法人の法定刑=罰金3億円以下
※著作権法124条1項1号

い 著作者人格権侵害

ア 基本 法定刑=懲役5年以下or罰金500万円以下
併科あり
※著作権法119条2項1号
イ 両罰規定 法人の業務に関する違反行為について
両罰規定あり
法人の法定刑=罰金500万円以下
※著作権法124条1項2号

3 著作権法違反を親告罪とする規定

ところで,著作権法違反の刑事責任については,親告罪とされています。
非親告罪とする法改正が予定されていますが,現時点(平成30年4月)ではまだ施行されていません。
犯人を知ってから6か月が経過すると告訴できなくなってしまいます。

<著作権法違反を親告罪とする規定>

あ 親告罪

著作権・著作者隣接権侵害の罪(前記※3)について
→告訴がなければ公訴を提起することができない
※著作権法123条1項

い 告訴期限

親告罪の告訴の期限は,犯人を知った日から6か月である
※刑事訴訟法235条

4 著作権法違反の刑事責任の相場(量刑)

実際の刑事責任は刑事裁判で裁判所が個別的に判断します。言い渡される刑の内容,つまり量刑についての相場・目安をまとめます。

<著作権法違反の刑事責任の相場(量刑)>

あ 前提事情

著作権法違反として裁判所が有罪と判断した
実際の裁判所の定めた量刑の分布
幅が広いが平均的なものの目安

い 相場

ア 罰金 30〜50万円
悪質だと100万円くらいの事例もある
イ 懲役 懲役1年前後(6か月〜1年6か月)
執行猶予3年

5 著作権法違反の告訴状のサンプル

著作権を侵害された者,つまり被害者が刑事責任の追及を希望する場合には,6か月の告訴期限(前記)が経過するまでに告訴する必要があります。その場合の具体的なアクションとしては,訴状を提出する,という方法が代表的です。告訴状のサンプルを紹介します。

<著作権法違反の告訴状のサンプル>

告訴状
****警察署長 殿【※1】
平成Y年M月D日
告訴人 (氏名・押印)
告訴人
住所  **県**市**町・・・・
職業  ****
氏名  ****
生年月日 昭和Y年M月D日生
電話  ***
被告訴人
住所  **県**市**町・・・・
職業  ****
氏名  ****
生年月日 昭和Y年M月D日生
第1 告訴の趣旨
被告訴人の下記所為は,著作権法119条1項(著作権侵害の罪)に該当すると思われる。
そこで,被告訴人の厳重な処罰を求めるために告訴する。
第2 告訴事実
被告訴人は,法定の除外事由がなく,かつ,著作権者の許諾を得ないで,平成**年**月**日頃,**市**町・・・の被告訴人住所において,告訴人が著作権を有する別紙画像目録記載の画像データ(写真)をウェブサイト****(URL・・・・)にアップロードし,もって告訴人の著作権(公衆送信権ないし複製権)を侵害したものである。【※2】
第3 立証方法
(略)
第4 添付資料
(略)

6 告訴状サンプルの補足説明

前記のサンプルの中の注意事項の補足説明をまとめます。

<告訴状サンプルの補足説明>

あ 提出先=宛先(前記※1

一般的な初動捜査は警察が担当します。そこで告訴の宛先は警察署長とすることが一般的です。
検察庁に提出することもできます。

い 異様な長文スタイル(前記※2

このサンプルでは,異常に長い内容を1つの文章としています。
検察官の作成する起訴状では,公訴事実について,このような異様なものを惰性的に用いています。
この点,告訴事実は公訴事実に対応するものです。そこで,告訴状の告訴事実でも異常なスタイルを使うことがよくあるのです。
ただし,読みやすいスタイルにする合理的な方法も好ましいです。

本記事では,著作権や著作者人格権の侵害についての刑事責任について説明しました。
実際には,個別的事情によって,責任の有無や内容は違ってきます。
実際に著作権侵害(著作権法違反)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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