【財産開示手続の開示情報の内容と範囲(債権者が得られる情報)】

1 財産開示手続の開示情報の内容と範囲(債権者が得られる情報)

債務名義を取得した債権者や先取特権をもつ債権者は、裁判所の財産開示手続を利用して債務者の財産の調査をすることができます。
詳しくはこちら|裁判所による財産開示手続の全体像(手続全体の要点)
本記事では、財産開示手続で債務者が開示することになるのはどのような財産なのか、債権者の立場としては、この手続を利用すればどんな情報を得られるのか、ということを説明します。

2 開示する「財産」の範囲

まず、債務者が開示する「財産」とは基本的に、プラスの財産全部です。ただし、差押禁止となっている、最小限の生活必需品は除外されます。

開示する「財産」の範囲

あ 基準時点

財産開示期日における陳述の時点を基準とする

い 開示対象財産(全体)

積極財産のうち『う』を除外したもの
消極財産は開示対象ではない

う 開示不要の財産

債務者等の生活に欠くことのできない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具および1か月の生活に必要な食糧および燃料
※民事執行法199条1項括弧書、131条1号、2号
※『新基本法コンメンタール民事執行法〜別冊法学セミナー〜』日本評論社p474

3 開示する「情報」の内容

(1)開示する「情報」の内容(基本)

前述の「財産」についてどんな情報が開示されるのでしょうか。抽象的には強制執行(差押)の手続が可能となる程度の情報、ということになっています。要するに、強制執行の申立書に記載する事項、ということです。

開示する「情報」の内容(基本)

あ 執行に直接要する情報

ア 基本的事項 強制執行または担保権の実行の申立をするのに必要となる事項
内容は『イ・ウ』の情報に分けられる
イ 共通する内容 財産の表示
※民事執行規則21条3項、170条1項3号
ウ 財産の種類によるプロパー情報(後記※1

い 動産に関する付随的な情報

動産について
→債権者は、執行対象財産の選択に必要な情報を要する
『あ』以外の情報の開示も要する(後記※2
※民事執行法199条2項

(2)執行に要する情報の具体的内容

執行のために必要な情報は、財産の種類によって違います。財産ごとの必要な情報を整理します。

執行に要する情報の具体的内容(※1)

財産の種類 開示情報 民事執行規則 航空機 航空機の所在する場所 84条、74、175条 自動車 自動車の本拠 88条、176条1項 建設機械 建設機械の登記の地 98条、88条、177条 小型船舶 小型船舶の小型船舶登録原簿に登録された船籍港 98条の2、88条、177条の2 債権 第三債務者の氏名or名称、住所 133条1項、179条1項 電話加入権 電話取扱局、電話番号、電話加入権を有する者の氏名or名称、住所並、電話の設置場所 146条1項、180条2項 預託株券など 保管振替機関or参加者の氏名or名称、住所 150条の5、133条1項、180条の2第2項、179条1項 振替社債など 振替機関などの氏名or名称、住所 150条の11、133条1項、180条の3第2項、179条1項

(3)動産に関する開示情報

動産についてだけは、多少特別な開示内容が定められています。

動産に関する開示情報(※2)

あ 動産執行に直接必要な情報

動産執行の申立には『所在場所』の特定だけで足りる
※民事執行規則99条、178条1項

い 財産開示の情報の範囲

『あ』に加えて、動産の所在場所ごとに『ア・イ』を明示する
ア 主要な品目 金額の基準はない
社会通念上高価と考えられるものをいう
イ 『ア』の数量+価格 ※民事執行規則184条3号
※最高裁判所事務総局民事局『条解民事執行規則 第3版』司法協会
p677

4 参考情報

参考情報

※園部厚著『実務解説 民事執行・保全 第2版』民事法研究会2022年p271〜274

本記事では、財産開示手続において開示される情報(財産)について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に財産開示手続など、債権回収に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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