【『現金・通貨』の機能と仮想通貨の該当性】
1 『現金』の実際的な機能
2 『現金』のメリット
3 『現金』のデメリット
4 現金のメリットに関する仮想通貨との比較
1 『現金』の実際的な機能
本記事では『現金・通貨』の機能について,仮想通貨の該当性も含めて説明します。
なお,通貨の法的性質については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|『通貨・法貨』の強制通用力と仮想通貨の該当性
テーマを戻して,まずは,現金の実際的な機能について整理します。
<『現金』の実際的な機能>
あ 価値尺度
い 価値交換手段
う 価値保存
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p115
2 『現金』のメリット
『現金』が活用できる点,つまりメリットについてまとめます。
<『現金』のメリット>
あ 流通性
不特定の第三者との間で決済の手段として譲渡できる
い 連続譲渡性
現金の譲渡を受けた人が,これを別の人に譲渡できること
う 汎用性
何の用途としても利用できる
え 支払完了性
取引行為のみによって,決済が即時に完了する
具体的には次のような内容が含まれる
ア 現金の支払によって当事者間の債権債務関係が終了するイ 事後的に原因関係に基づく返還請求のリスクがないウ 追加的な資金決済が不要であるエ 支払に関する撤回が不可能である
撤回の例=支払指図の撤回
お 安全性
不正な行為に対して合理的な対抗措置を施すこと可能である
実際に不正行為への対抗措置が取られている
不正行為の例=偽造
か 匿名性・不特定性・代替性
ア 基本的事項
『イ』の情報が第三者には伝わらない
その後の現金の受取人も含む
イ 情報の内容
現金の支払が行われたこと
現金の支払の内容
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p115〜118
※古市峰子『現金,金銭に関する法的一考察』日本銀行金融研究所『金融研究』14巻4号(1995年12月)p109〜121
3 『現金』のデメリット
レガシーな『現金』にはいろいろなデメリットがあります。
<『現金』のデメリット>
あ 遠隔地送金の不便さ
い 価値の分割や統合ができない
う ハンドリングの不便さ
お 高品質用紙の利用を必要とする
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p115
4 現金のメリットに関する仮想通貨との比較
前記の現金のメリットについて,仮想通貨に該当するかどうかを検討します。
<現金のメリットに関する仮想通貨との比較>
あ 流通性
い 連続譲渡性
う 汎用性
以上の『あ〜う』について
いずれも仮想通貨の設計の基本的部分である
仮想通貨に該当する
え 支払完了性
ビットコインの送金について
送金結果が承認されるのに10分程度を要する
ビットコインの受領者が他に送金する場合
→約10分待たなくてはならない
支払完了性はやや不完全である
お 安全性
不正な記録を作成する『攻撃者』を想定した場合
→攻撃が成功する確率は非常に低い
※サトシ・ナカモト論文
か 匿名性
ア ビットコイン
ビットコインは設計上,台帳が公表されている
=全取引が公開される
しかし,ビットコインアドレスからは容易に個人を特定できない
一定程度の匿名性は実現されている
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p116〜118
イ ビットコイン以外の仮想通貨
匿名性が高い仮想通貨も存在している