【ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の違い(比較)】
1 ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の違い
2 2つの制度の主な違い(まとめ)
3 照会対象法令(条項)の違い
4 照会先となる行政庁の違い
5 事業所管省庁が照会先になる効果
6 参議院経済産業委員会の情報ソース
1 ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の違い
新たなサービスの検討段階で,適法性を確認する状況はとても多くあります。
適法性を確認する方法にはいくつかのものがあります。
詳しくはこちら|新しいサービス立ち上げ(開始)への弁護士のサポートと費用
その中で,正式な行政庁へのヒアリング(照会)をする手続が2つあります。
ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度です。
詳しくはこちら|ノーアクションレター制度(法令適用事前確認手続)の内容
詳しくはこちら|グレーゾーン解消制度|公式行政見解の取得|産業競争力強化法の新制度
とても似ていますが,実際には大きな違いもあります。
本記事では,この2つの制度の違いについて説明します。
2 2つの制度の主な違い(まとめ)
ノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の大きな違い(につながるもの)をまとめます。
<2つの制度の主な違い(まとめ)>
制度 | 対象法令 | 照会先(省庁) |
ノーアクションレター制度 | 行政処分・刑罰に関する規定 | 規制所管省庁 |
グレーゾーン解消制度 | 限定なし | 事業所管省庁 |
3 照会対象法令(条項)の違い
2つの制度の違いの1つは,照会できる法令です(前記)。
ノーアクションレター制度で照会できる法令(条項)は事業者の不利益に直接つながる規定(条項)に限定されているのです。
<照会対象法令(条項)の違い>
あ ノーアクションレター制度
照会できる法令が限定されている
主な対象法令=許認可や行政処分につながる規定
い グレーゾーン解消制度
照会できる法令は一切制限されていない
法令・政令・省令・通達などのいずれも対象となる
ノーアクションレターは,ある行為(サービス提供)によって罰則を受けるかどうかというようなクリティカルなものだけが質問できるのです。
グレーゾーン解消制度は,直接的にそのようなペナルティにつながらないような内容でも質問できます。
4 照会先となる行政庁の違い
2つの制度は,どの行政庁に照会できるのかというところも違います。
<照会先となる行政庁の違い>
あ ノーアクションレター制度
規制所管省庁に照会する
=規制を所管する行政庁
適法性を確認したい行為が複数の種類の規制に関わる場合
→複数の行政庁に別個に照会することもある
い グレーゾーン解消制度
事業所管省庁に照会する
=想定する事業を所管する行政庁
事業所管省庁を通じて規制所管省庁への照会をすることになる
ノーアクションレターは違反かどうかを判断する省庁に直接照会します。
グレーゾーン解消制度はサービス本体の監督官庁に対して紹介します。
この違いが出る状況は,実際にサービスの多様化をする状況でよくあります。
メインのサービスAの監督官庁と追加するサブのサービスBの監督官庁が異なるというケースです。
ノーアクションレター制度ではBの監督官庁に照会します。
グレーゾーン解消制度ではAの監督官庁に紹介します。
このことが,実際にどのような違いにつながるのか,については次に説明します。
5 事業所管省庁が照会先になる効果
グレーゾーン解消制度は事業所管省庁に対して照会します。
要するに,馴染みの部署ということになります。
照会を受けた,馴染みの行政庁が,規制を担当する(新規サービスを監督する)官庁に照会します。
形式的には,単に質問をするルートが違うだけです。
しかし,現実の違いは大きいです。
<事業所管省庁が照会先になる効果>
あ 事業所管省庁の役割
事業所管省庁が照会先であることにより
『い・う』のような現実的効果(メリット)がある
これはグレーゾーン解消制度の特徴である
い 事業者へのアドバイス
照会者に対していろいろなアドバイス・きめ細やかな指導も併せて行える
規制の難しい言葉を懇切丁寧に事業所管庁として解説する
規制官庁と照会者(事業者)の橋渡しをする
※参議院経済産業委員会平成25年11月28日政府参考人コメント
う 規制庁への働きかけ
事業所管庁が,企業と密接に連携を取りながら
企業の意向を十分に酌み取って規制所管官庁に働きかけを行うという機能がある
※参議院経済産業委員会平成25年11月28日大臣政務官コメント
行政庁が複数でも,理論的には政府(国)として1つなので関係ないはずです。
しかし実際には行政の縦割りとか,分野ごとの官僚統治という状況があります。
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
その結果,照会するルートによって違いが出てくるのです。
6 参議院経済産業委員会の情報ソース
前記の,官僚統治を前提とする実情は国会の委員会での公的なコメントとして登場しています。
<参議院経済産業委員会の情報ソース>
あ 開催した委員会
第185回国会
参議院経済産業委員会
平成25年11月28日
い 情報ソース
次の議事録のp33,34の部分
外部サイト|国会図書館|参議院経済産業委員会議事録平成25年11月28日
本記事ではノーアクションレター制度とグレーゾーン解消制度の違いを説明しました。
ところで実際に新たなサービスの適法性を調査する方法は,この2つの制度のほかにもあります。
調査方法はそれぞれについてメリット・デメリットがあります。
みずほ中央法律事務所では,それぞれのサービス内容や事業者の方針に沿った最適な方法による調査を提供しています。
具体的に新サービスを検討されている方は,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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