【弁護士会照会の対象事項(受任事件の範囲・調査目的の受任は違法)】
1 弁護士会照会の調査対象事項
2 弁護士会照会の対象(規定)
3 受任事件の内容(調査対象事項)
4 受任事件の限界(調査目的の受任)
5 戸籍・住民票の職務上請求との同一性(参考)
1 弁護士会照会の調査対象事項
弁護士の業務の遂行上,いろいろな機関に照会する制度があります。
弁護士会照会とか23条照会などと呼ばれます。
詳しくはこちら|弁護士会照会の基本(公的性格・調査対象・手続の流れ)
弁護士会照会で調査できる事項は,受任している事件に関するものだけに限られます。
本記事では,弁護士会照会の調査対象事項について説明します。
2 弁護士会照会の対象(規定)
弁護士法の規定では,弁護士会照会ができる事項は『受任事件』に関するものに限定されています。
<弁護士会照会の対象(規定)>
あ 条文規定の内容
照会申出の対象は
受任している事件(について)である
※弁護士法23条の2第1項
い 受任事件という限定
弁護士が弁護士法3条に定める事件を受任していることが前提である
受任事件についてのみ照会の申出をすることができる
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p162
※第一東京弁護士会照会申出審査基準細則4条
3 受任事件の内容(調査対象事項)
弁護士会照会の対象は『受任事件』(弁護士法3条の規定内容)に関するものです(前記)。
この『受任事件』とは,弁護士が受任して遂行する案件(事件)を広く含みます。
法律相談も含みます。つまり,法的な見通し(法令の適用の結果)を予測するために必要な情報について,弁護士会照会を活用することができるということです。
<受任事件の内容(調査対象事項)>
あ 受任事件の分野
受任事件の分野については制限されない
例=民事・刑事・家事・行政など
い 受任事件の手続の種類
受任事件の手続の種類については制限されない
必ずしも訴訟手続に限られない
示談交渉・契約締結・法律相談・鑑定なども含まれる
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p162
う 弁護士法3条1項の規定(参考)
弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
※弁護士法3条1項
4 受任事件の限界(調査目的の受任)
仮に,照会によって情報を得ることだけの依頼を受けた場合には,弁護士会照会は使えません。
『受任事件』の内容は,訴訟・交渉・法律相談・書面作成などの”弁護士として受任する業務
<受任事件の限界(調査目的の受任)>
あ 『弁護士としての職務』との関係性
弁護士の職務と無関係な場合は『受任事件』にはならない
※第一東京弁護士会照会申出審査基準細則4条2項各号
い 調査目的の受任
弁護士会照会をすることだけを目的とした受任では
弁護士会照会の申出をすることはできない
う 違法な照会の具体例
単に依頼者(企業)の従業員の採用の可否の判断資料を取得することを目的とする照会
→違法である
※第一東京弁護士会業務改革委員会第8部会編『弁護士法23条の2 照会の手引 6訂版』第一東京弁護士会2016年p9
5 戸籍・住民票の職務上請求との同一性(参考)
弁護士会照会とは別の制度として,戸籍や住民票の情報を取得する手続でも同様の制度があります。
弁護士などの一定の資格を有する者が業務の遂行において情報を取得する(証明書請求・閲覧など)場合には,審査が緩和されるのです。職務上請求と呼ばれる手続です。
職務上請求でも,弁護士会照会と同様に,弁護士が調査を単体で受任した上で調査することは違法となります。
詳しくはこちら|住民票・戸籍の情報の取得方法(閲覧・証明書交付請求)と開示される者の範囲