【記名債権・指図債権・記名式所持人払債権(証券)の即時取得】
1 記名債権・指図債権・記名式所持人払債権(証券)の即時取得
2 記名債権の即時取得
3 指図債権・記名式所持人払債権の即時取得
1 記名債権・指図債権・記名式所持人払債権(証券)の即時取得
有価証券や無記名債権については,即時取得(善意取得)が適用され,取引が保護されています。
詳しくはこちら|商法の有価証券と株式の善意取得(民法の即時取得よりも強化)
詳しくはこちら|無記名債権の民法上の扱い(動産みなし・即時取得・弁済の保護)
この点,これら以外の債権については流通することが想定されていないため,原則的に即時取得は適用されません。つまり取引が保護されていないのです。
本記事では,記名債権・指図債権(証券)などの即時取得について説明します。
2 記名債権の即時取得
一般的な記名債券については即時取得は適用されません。
特定の者が使用する権利なので,流通することは想定されず,また保護されないのです。
<記名債権の即時取得>
記名債権(証券)について
即時取得を認める規定はない
※川島武宣ほか編『新版注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p149
3 指図債権・記名式所持人払債権の即時取得
指図債権も,流通が想定されていないので即時取得は適用されません。
これとは別に記名されている,つまり権利者が特定されているけれども券面上は特定されていないという記名式所持人払債権があります。
記名債権や指図債権と無記名債権や有価証券の中間的な位置づけといえます。
これについて,古い判例は即時取得を否定しています。
<指図債権・記名式所持人払債権の即時取得>
あ 即時取得の適用
指図債権(民法469条),記名式所持人払債権(民法471条)について
→民法には即時取得の規定がない
い 動産扱いの有無(なし)
『あ』の債権は動産とみなされない
→民法の即時取得は適用されない
※大判大正元年9月25日
う 反対説
現実に存する指図債権・記名式所持人払債権は,すべて有価証券である
商法519条,小切手法21条を適用すべきである
(民法以上に強度の善意取得の保護が望ましい)
※川島武宣ほか編『新版注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p148
本記事では,記名債権や指図債権などの即時取得について説明しました。
実際には,記名債権や指図債権にあたるかどうかという問題や,仮想通貨などの新しい決済手段の法的扱いを考える際に問題となることがあります。
実際に債権の権利者に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。