【パチンコの特殊景品・3店方式の違法性から組合の成立を否定した裁判例】
1 パチンコの特殊景品・3店方式の違法性から組合の成立を否定した裁判例
2 特殊景品の買取の違法性による組合契約の無効
3 特殊景品取引の仕組み(一般論)
4 特殊景品に関する法規制とその趣旨
1 パチンコの特殊景品・3店方式の違法性から組合の成立を否定した裁判例
通常のパチンコ店では,特殊景品を用いた3店方式がとられています。これについては風俗営業法違反や賭博罪に該当する可能性が指摘されています。
詳しくはこちら|特殊景品と3店方式の法的問題(実質的には金銭提供)と耳栓判決
これとは別に,特殊景品の買取サービスの違法性により民法上の組合の成立が否定された民事の裁判例があります。
本記事では,この裁判例を紹介します。
2 特殊景品の買取の違法性による組合契約の無効
特殊景品の買取店(サービス)を2人で共同で出資して運営したというケースです。
裁判所は,条例(実質的には風俗営業法)で禁止されたパチンコ店が賞品を買い取る(第三者に買い取らせる)行為に加担するものであると判断しました。その背景にある射幸心の助長(蔓延)の危険性も指摘しました。
結論として,公序良俗に違反するものとして,組合の成立を否定しました。
<特殊景品の買取の違法性による組合契約の無効>
あ 組合契約の締結
YとAは,数軒のぱちんこ店が遊技客に提供した賞品を客から買い受け,これをぱちんこ賞品問屋に販売する事業を共同で行なった
この事業のために,YとAは75万円ずつ出資する旨の組合契約を締結した
い 有効性(公序良俗違反)の判断
ぱちんこ賞品買受販売業は,ぱちんこ店営業者らの,条例によって禁止されている行為(後記※1)に荷担するものである
それ自体も,射幸心を蔓延させるなど善良の風俗を害する危険性をもたらすものというべきである
組合契約は公序良俗に反するものとして無効である
※東京地裁昭和58年3月30日(3店方式違法判決)
う 補足説明
特殊景品の買取サービスは公序良俗に違反するので組合の共同事業として認められなかったといえる
※鈴木禄弥編『新版 注釈民法(17)債権(8)』有斐閣1993年p47,48参照
詳しくはこちら|民法上の組合の共同事業の基本(目的となりうる事業・事業の共同性)
3 特殊景品取引の仕組み(一般論)
この裁判例では,特殊景品買取サービスの違法性を導くプロセスで,一般的な特殊景品とその買取システムを指摘しています。パチンコ店・特殊景品問屋・特殊景品買取店の3店が協定を結んでいるという仕組みのことです。
<特殊景品取引の仕組み(一般論)>
あ 仕組み
ぱちんこ賞品買受販売業(いわゆる景品買い)は,一般に,景品買業者,ぱちんこ店営業者及びぱちんこ賞品問屋の間で協定を結んだ上,ぱちんこ店が遊技客に提供する賞品(特殊景品)のうちの特定の賞品を景品買業者が遊技客から買い受け,これをぱちんこ賞品問屋に販売し,問屋がこれをぱちんこ店に卸すという仕組の上に成り立っている
い 特殊景品の選定
特殊景品も,ぱちんこ店営業者,景品買業者及びぱちんこ賞品問屋の3者の話合によって取り決められる
例えば,昭和53年頃はコンビーフの缶詰が特殊景品として用いられていた
※東京地裁昭和58年3月30日(3店方式違法判決)
4 特殊景品に関する法規制とその趣旨
この裁判例では,特殊景品買取サービスの違法性を導くプロセスで,特殊景品に関する法規制とその趣旨をしっかりと指摘しています。
要するに,賞品の買い取りは現金化なので,現金を賭けることと同じになってしまうから禁止しているという背景があるのです。
<特殊景品に関する法規制とその趣旨(一般論・※1)>
あ 法規制
東京都風俗営業等取締法施行条例27条は,遊技場の営業及び従業者は,一般的遵守事項のほかに同条所定の事項を遵守しなければならないものと定めている
遵守事項の1つとして『客に提供した賞品を買い取り,または買い取らせないこと』が規定され,これに違反した場合の罰則規定も規定されている
い 規制の趣旨
これらの規定が設けられた趣旨は,遊技場の営業者らがこの行為をなすのを放置すれば,賞品を容易に現金化できることにより,客が遊技場を現金獲得のために利用する恐れが生じ,射幸心が蔓延するなど善良の風俗が害されるようになるので,これを未然に防止することにある
※東京地裁昭和58年3月30日(3店方式違法判決)
本記事では,パチンコの特殊景品や買取サービスを含めた3店方式の違法性が,民事の裁判で指摘されたという変わった裁判例を紹介しました。
実際には具体的なサービスの内容(仕組み)によって結論は違ってきます。
実際にサービスの適法性を考える局面にある方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。