【取締法規違反と不法行為の成否の関係】
1 取締法規違反と不法行為の成否の関係
2 取締法規の意味(前提)
3 取締法規と不法行為の関係
1 取締法規違反と不法行為の成否の関係
不法行為責任(損害賠償)が認められるには,違法性が必要です。
詳しくはこちら|一般的不法行為の成立要件(基本的な要件の分類)
ある行為が,取締法規に違反した場合に,違法であるから違法性がある,つまり,不法行為責任が認められるといえるのか,という問題があります。本記事ではこの問題について説明します。
2 取締法規の意味(前提)
取締法規というのは,性格として,行政上の目的による規制のことをいいます。もともと,私人間(民間)のルールではないのです。
<取締法規の意味(前提)>
取締法規とは
行政上の目的のために,一定の行為を制限または禁止する行政法規である
(特に行政罰を備えたもの)
※窪田充見編『新注釈民法(15)債権(8)』有斐閣2017年p348
3 取締法規と不法行為の関係
以上のような取締法規の性格から,これに違反したことが,イコール不法行為成立ということにはなりません。
ただし,取締法規の趣旨には,他の者が被害を受けることを防止するという目的のものもあります。その場合は,不法行為責任の違法性と重複することになります。つまり,取締法規違反イコール不法行為成立ということになるのです。
<取締法規と不法行為の関係>
あ 原則
取締法規は,あくまで行政法上の行為規範である
不法行為法上の行為義務とは次元を異にする
い 重複(例外)
取締法規が,安全確保や事故防止を目的とする場面では,取締法規による行為規制は,不法行為法上の作為義務と実際上重なり合うことになる
→不法行為法上の作為義務の設定にあたっての指針となる
う 重複の典型例
取締法規による行為規制と不法行為法上の作為義務が重なり合う典型例
→道路交通法,労働安全衛生法,食品衛生法,医薬品医療機器法など
※窪田充見編『新注釈民法(15)債権(8)』有斐閣2017年p348
え 包含(例外)
取締法規が安全確保・事故防止を目的とするが,その一般的・定型的な行為規制が個別具体的状況に適合せず不足している場合
→不法行為法上,より高度の作為義務を設定することになる
※窪田充見編『新注釈民法(15)債権(8)』有斐閣2017年p348
本記事では,取締法規違反と不法行為責任(私法)との関係について説明しました。
実際には,個別的な状況や,主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることがあります。
実際に違法な行為によって生じた損害についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。