【意思表示の撤回(可否・タイミング・方式)(解釈整理ノート)】

1 意思表示の撤回(可否・タイミング・方式)(解釈整理ノート)

民事の紛争解決の中のとても多くの局面で意思表示(の効力)が問題となります。
詳しくはこちら|意思表示の基本(意思表示・通知の分類・内容証明郵便の特徴)
その問題の中の1つとして、意思表示の撤回があります。本記事では、意思表示の撤回に関するいろいろな解釈を整理しました。

2 意思表示の撤回の基本→撤回可能

意思表示の撤回の基本→撤回可能

あ 原則

意思表示が相手方に到達する前に撤回をすることは可能である

い 例外

受領を要しない意思表示ではそれが即時効力を発生するので撤回はできない

3 撤回が可能なタイミング→意思表示の到達前・同時到達

撤回が可能なタイミング→意思表示の到達前・同時到達

あ 到達前の撤回

意思表示が相手方に到達する前に撤回の通知が相手方に到達した場合、意思表示は効力を生じない

い 同時到達の撤回

意思表示と撤回の通知が同時に相手方に到達した場合も、意思表示は効力を生じない

う 社会観念上の到達時期と撤回

相手方の了知が期待されない時点(深夜や会社の休日など)に郵便物が投入された場合、社会観念上相手方の了知を期待しうる時点(翌朝や休日明け)まで到達は生じないため、その間の撤回は可能である
例=最初の書状が土曜日午後に会社に配達され、撤回の意思表示を含む書状が日曜日に配達された場合

え 到達後でも相手方が読む前の撤回

到達後であっても、相手方が意思表示を読む前に撤回の通知も到達し、相手方が両者を同時に読むような場合には撤回が認められる

4 撤回の方式→自由

撤回の方式→自由

撤回の意思表示の方式は自由であり、撤回されるべき意思表示に方式を要する場合でも方式遵守の必要はない
例=書面表示を口頭(電話など)で撤回することも可能である

5 契約の申込の撤回(参考)

以上の説明は「意思表示」一般を前提としています。意思表示の内容が契約の申込である場合には別のルール(民法523条、525条)があります。

6 参考情報

参考情報

須永醇稿/川島武宜ほか編『新版 注釈民法(3)』有斐閣2003年p542

本記事では、意思表示の撤回について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に意思表示(通知)の効力に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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