【提訴前照会の予告通知書の記載事項(民事訴訟法132条の2、規則52条の2)(解釈整理ノート)】

1 提訴前照会の予告通知書の記載事項(民事訴訟法132条の2、規則52条の2)(解釈整理ノート)

提訴前照会の手続は、状況によっては、重要な証拠や情報を取得することにつながることもあります。
詳しくはこちら|提訴前照会制度(利用場面・回答義務と除外事項・照会書の記載事項)
提訴前照会を利用する場合、実務では、予告通知書と照会書をまとめる(兼ねた書面を送付する)ことが多いです。本記事では、予告通知書(だけ)について、その記載事項に関するいろいろな解釈を整理しました。

2 予告通知書の必要的記載事項

(1)予告通知書の必要的記載事項

予告通知書の必要的記載事項

予告通知書には、請求の要旨と紛争の要点を必ず記載しなければならない
これらを欠く場合は予告通知としての効力を生じない

(2)請求の要旨

請求の要旨

請求の要旨は民事訴訟法132条の2第3項に規定される必要的記載事項である
あ 基本的な考え方

訴状の「請求の趣旨」までの特定は不要だが、将来の訴訟における請求の趣旨の内容が予測できる程度の記載が必要である
規則52条の2第2項により「具体的なもの」でなければならない(ただし訓示規定)

い 記載の程度

損害賠償請求の場合:紛争の要点と損害賠償である旨を明確にすれば、給付額の明示は不要である
請求の法的性質決定を明らかにする必要はないが、請求の類型は明らかにする必要がある
(例=土地の所有権に関する請求なら、確認請求か明渡請求か登記請求かを明示)
名誉毀損の場合:差止請求か損害賠償請求か謝罪請求かを明示(選択的記載も可能)

う その他の特徴

給付訴訟・確認訴訟・形成訴訟のいずれであるかを明らかにする必要がある
選択的または重畳的に記載することも許される
請求金額の特定については、損害額等を知るために提訴前情報証拠収集制度を利用する場合もあるため、具体的な金額を明示しない記載も許される

(3)紛争の要点

紛争の要点

紛争の要点も民事訴訟法132条の23項に規定される必要的記載事項である
あ 基本的な考え方

民事調停申立て(民調規3条)や簡易裁判所における訴えの提起(272条)と同様の概念である
請求の原因に代えて、より緩やかな態様の事実関係を指すものである
規則52条の2第2項により「具体的なもの」でなければならない(ただし訓示規定)

い 記載の程度

訴状の「請求原因」ほどの特定は不要だが、一定の事実関係の記載は必要である
所有権確認等の場合:実質的にどのような紛争があるのかという要点を記載する必要がある(例:相手方が立退きを求めているのか、所有権の行使をどのように妨害しているのかなど)

う 具体性の要件

具体的な紛争の態様を記載する必要がある
請求の法的性質や訴訟物の特定までは必要ではない
被予告通知者が将来提起される訴えの内容を予測できる程度に具体的でなければならない
重複予告通知の有無を判断できる程度に具体的でなければならない

3 任意的記載事項

(1)予告通知書の任意的記載事項

予告通知書の任意的記載事項

任意的記載事項は、規則52条の2に規定される実質的(任意的)記載事項であり、記載しなくても予告通知は無効とならない

(2)当事者情報

当事者情報

あ 基本

記載事項に、予告通知者・被予告通知者の氏名・名称・住所およびそれらの代理人の氏名・住所(規則52条の21項1号)がある

い 代理人の資格

「代理人」には法定代理人と任意代理人の両方が含まれる
予告通知は訴訟上の法律効果を伴う訴訟行為であるため、代理人の代理権は訴訟代理権である必要がある
原則として弁護士のみが代理人となれる(54条1項本文)
想定される訴額が140万円以下の場合は司法書士も可能である
特定侵害訴訟については弁理士が弁護士と共同して代理可能である

(3)予告通知の年月日

予告通知の年月日

記載事項に、予告通知の年月日の記載(規則52条の2第1項2号)がある
予告通知の効力に時間的な限界があるためである
到達について争いが生じた際の証明資料となる
提訴前照会や提訴前証拠収集処分の申立ては予告通知の日から4月以内という期間制限があるため、事後の争いを避ける目的で記載を求めている

(4)書面の性質明示

書面の性質明示

記載事項として、当該書面が民事訴訟法132条の2第1項の規定による予告通知である旨の記載(規則52条の2第1項3号)がある
予告通知書が裁判所からの文書ではないため、単なる内容証明郵便等と区別するためである
法律知識の少ない受け取り手に誤解が生じないようにするためである
実務では「提訴予告通知」「予告通知書」等の表題が付けられることが多い
条文自体の明示が求められている
表題(「提訴予告通知」「提訴予告通知書」「予告通知書」など)の記載は必須ではない

(5)提訴予定時期

提訴予定時期

記載事項として、訴えの提起の予定時期の記載(規則52条の2第3項)がある
「できる限り明らかにしなければならない」という程度である
合理的理由なく記載しなくても予告通知自体は無効とならない
ただし信義則上、照会に対する回答義務が生じない場合や証拠収集処分申立ての却下事由となる場合あり
被予告通知者が長期間不安定な状態に置かれることを防ぐために、できる限り明らかにすべきとされている
予告通知の段階で提訴予定時期を明らかにすることが困難な場合もあるため、「できる限り」明らかにすべきものとされている

(6)記名押印

記名押印

予告通知者またはその代理人の記名押印が求められている
これを欠いた場合も予告通知が直ちに無効になるわけではない

(7)参考情報

参考情報

秋山幹男ほか著『コンメンタール民事訴訟法Ⅱ 第3版』日本評論社2022年p656〜661
三木浩一稿/加藤新太郎ほか編『新基本法コンメンタール 民事訴訟法1』日本評論社2018年p351、352
小林秀之ほか編『証拠収集の現状と民事訴訟の未来』悠々社2017年p149、150

本記事では、提訴前照会の予告通知書の記載事項について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に訴訟になっていない段階で、証拠や情報を集める問題に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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