【裁判期日の呼出(民事訴訟法94条)(解釈整理ノート)】
1 裁判期日の呼出(民事訴訟法94条)(解釈整理ノート)
裁判の審理や和解は期日が開催されて進行します。普段はあまり意識しませんが、毎回の期日について、裁判所は呼出をしています。呼出をしないと原則的に期日の開催ができないのです。状況によってはこの呼出が問題となる実例もあります。
本記事では、期日の呼出に関するいろいろな解釈を整理しました。
2 民事訴訟法94条の条文と要点
(1)民事訴訟法94条の条文
民事訴訟法94条の条文
第九十四条 期日の呼出しは、呼出状の送達、当該事件について出頭した者に対する期日の告知その他相当と認める方法によってする。
2 呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法による期日の呼出しをしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない。ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面を提出したときは、この限りでない。
※民事訴訟法94条
(2)期日の呼出しの方法(条文の整理)
期日の呼出しの方法(条文の整理)
(ア)呼出状の送達(イ)当該事件について出頭した者に対する期日の告知(ウ)相当と認める方法(簡易な呼出し) ※民事訴訟法94条1項
3 呼出しの位置づけ→期日開始の要件
呼出しの位置づけ→期日開始の要件
あ 原則→期日開始の要件
呼出しは期日開始の要件であって、期日の呼出しが適法でないと期日は適法に開けない
遠隔の地にある者に対し、出頭を期待できないようなわずかな期間を存して呼出しをすることは違法である
※札幌高判昭和26年4月2日
い 不適法な訴えの却下→判決期日の呼出し不要
その不備を補正することができない不適法な訴えを口頭弁論を経ないで却下する場合には、判決言渡期日の通知は不要である(民事訴訟規則156条ただし書)
4 呼出状の送達による呼出し
(1)呼出状の作成と記載内容
呼出状の作成と記載内容
呼出状には次の事項を記載する必要がある
(ア)期日の日時(イ)出頭すべき場所(ウ)裁判所(係属部名)
(2)呼出状の適法性を判断した裁判例
呼出状の適法性を判断した裁判例
あ 期日の日時の記載欠落→違法
呼出状に期日の日時の記載が欠けているときは、裁判所の名称、所在地、係属部、係書記官の氏名が記載されており、かつ送達報告書に期日の日時の記載があって受領者の押印がある場合でも、適法な呼出しがあったとはいえない
※東京高判昭和43年7月16日
い 予定事項の記載欠落→適法
期日に予定されている事柄(弁論、証拠調べ、判決言渡し等)の具体的内容は記載することが望ましいが、記載しなくても呼出しは違法でない
※最判昭和23年4月17日
5 出頭した者に対する期日の告知による呼出し
(1)出頭した者への告知の方法
出頭した者への告知の方法
例えば、口頭弁論期日に出頭した者に対し裁判長が次回期日を告知したり、記録閲覧のため出頭した者に対し裁判所書記官から期日を告知したりする方法である
裁判所書記官が裁判所の廊下でたまたま弁護士に出会って期日を伝えた場合において、その告知の具体的内容に照らしても、民事訴訟法94条1項の期日の告知があったとはいえないとした裁判例がある
※名古屋高判昭和46年9月29日
(2)欠席当事者に対する告知
欠席当事者に対する告知
判決言渡期日については、期日において告知した場合(適法な呼出しを受けながら欠席している当事者がいる場合を含む)には、判決言渡期日の通知は不要である(民事訴訟規則156条ただし書)
弁論を終結して追って判決を言い渡す旨告知しても、期日の告知にはならないから、期日を指定したうえ、必ず期日の呼出しをしなければならない
※最判昭和27年11月18日
※最判昭和50年10月24日
6 相当と認める方法による呼出し(簡易呼出し)
相当と認める方法による呼出し(簡易呼出し)
あ 簡易呼出しの方法
相当と認める方法としては、第一種郵便物(通常の封書)、通常はがき、電話等が挙げられる
具体的事件に応じて適切な方法を選択すればよい
い 不利益制限
呼出状の送達及び当該事件について出頭した者に対する期日の告知以外の方法(相当と認める方法)による期日の呼出し(簡易の呼出し)をしたときは、期日に出頭しない当事者、証人又は鑑定人に対し、法律上の制裁その他期日の不遵守による不利益を帰することができない(民事訴訟法94条2項本文)
ただし、これらの者が期日の呼出しを受けた旨を記載した書面(期日請書)を提出したときは、期日の不遵守による不利益を帰することができる(民事訴訟法94条2項ただし書)
このような書面はファクシミリを利用して送信することも可能である
7 訴訟代理人がある場合の呼出し→原則訴訟代理人
訴訟代理人がある場合の呼出し→原則訴訟代理人
あ 原則→訴訟代理人
訴訟代理人のある場合の当事者の呼出しは、当事者本人尋問の呼出しの場合を除いて訴訟代理人に対してなすべきである
訴訟代理人に訴訟追行の熱意が欠けるとみられるような場合など、例外的な場合を除き、直接当事者本人に対する呼出しは妥当な扱いとはいえない
期日の呼出しが訴訟代理人に対し適法になされれば、その後に訴訟代理人が辞任しても、本人に対する効力には影響がない
※最判昭和28年7月30日
※最判昭和34年12月28日
い 複数の訴訟代理人→そのうち1人
訴訟代理人が数人ある場合の期日の呼出しは、各自代理であるから(民事訴訟法56条)、その1人に対してのみすればよい
※大判大正4年9月25日
※大判大正10年5月28日
う 当事者尋問の呼出し→本人への呼出し
当事者尋問のために当事者本人を呼び出す場合には、訴訟代理人に対する呼出しだけでは足りず、別に当事者本人に対し呼出しをしなければならない
8 参考情報
参考情報
本記事では、裁判期日の呼出について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に民事訴訟の審理や進め方に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。