【履行不能による代償請求権(平成29年改正・民法422条の2の新設)(解釈整理ノート)】

1 履行不能による代償請求権(平成29年改正・民法422条の2の新設)(解釈整理ノート)

平成29年の民法改正で、民法422条の2という条文が新設されました。この条文は履行不能の場合に発生する代償請求権について定めています。改正前の解釈(判例)を明文化したものですが、明文化していない解釈もあります。本記事では、民法422条の2に関する解釈を整理しました。

2 民法422条の2の条文と趣旨

(1)民法422条の2の条文

民法422条の2の条文

(代償請求権)
第四百二十二条の二 債務者が、その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは、債権者は、その受けた損害の額の限度において、債務者に対し、その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。
※民法422条の2

(2)民法422条の2の趣旨(立法経緯)

民法422条の2の趣旨(立法経緯)

民法422条の2は、平成29年改正により新設された規定であり、従来の判例(最判昭和41年12月23日)・通説の見解を明文化したものである。

3 代償請求権の意味(定義)

代償請求権の意味(定義)

民法422条の2による代償請求権とは、債務者が債務の履行不能と同一の原因により目的物の代償である権利・利益を取得した場合、債権者がその損害額の限度で権利移転・利益償還を請求できる権利である

4 代償請求権の発生要件

代償請求権の発生要件

あ 債務の履行不能

債務の履行が不能となっていること

い 代償取得の因果関係

債務者が、履行不能と同一の原因により目的物の代償である権利・利益を取得していること

う 債務者の帰責事由の要否→見解が分かれる

債務者の帰責事由の要否については条文上明記されておらず、解釈に委ねられている

5 効果→代償請求権+反対給付義務

効果→代償請求権+反対給付義務

あ 請求範囲

債権者は、受けた損害の額の限度において、債務者に対し次のいずれかを請求できる
(ア)代償として取得した権利の移転(イ)代償として取得した利益の償還

い 反対給付関係

ア 債務者に帰責事由がない場合 債権者が代償請求権を行使すれば、反対給付の履行義務を負う
イ 債務者に帰責事由がある場合 債権者は反対給付の履行義務を負うが、損害賠償請求権と請求権競合の関係となる

6 関連する法的問題

(1)錯誤取消との関係→両立する

錯誤取消との関係→両立する

契約の成立が前提であるため、錯誤を理由として契約を取り消すことができる場合もある

(2)効果・行使方法→解釈による

効果・行使方法→解釈による

形成的効果か否か、および具体的な行使方法については条文上明記されておらず、解釈に委ねられている

7 関連テーマ

(1)履行不能(平成29年改正・民法412条の2の新設)

詳しくはこちら|履行不能(平成29年改正・民法412条の2の新設)(解釈整理ノート)

8 参考情報

参考情報

我妻栄ほか著『我妻・有泉コンメンタール民法 第8版』日本評論社2022年p832

本記事では、履行不能による代償請求権(民法422条の2)について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に契約の不履行に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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