【民事訴訟手続の中断・中止と進行の再開(民事訴訟法132条)(解釈整理ノート)】

1 民事訴訟手続の中断・中止と進行の再開(民事訴訟法132条)(解釈整理ノート)

民事訴訟の手続(審理)は、当事者が亡くなるなど、イレギュラーな事態が生じると、いったんストップすることがあります。もちろん、そのような事態が解消されると再開します。本記事では、民事訴訟法132条のルールのうち、中断・中止と再開に関する解釈を整理しました。

2 民事訴訟法132条の条文

民事訴訟法132条の条文

(中断及び中止の効果)
第百三十二条 判決の言渡しは、訴訟手続の中断中であっても、することができる。
2 訴訟手続の中断又は中止があったときは、期間は、進行を停止する。この場合においては、訴訟手続の受継の通知又はその続行の時から、新たに全期間の進行を始める。
※民事訴訟法132条

3 期間の進行停止

(1)中断・中止→期間の進行停止

中断・中止→期間の進行停止

あ 中断・中止の意味→期間の進行の停止

民事訴訟法132条による訴訟手続の中断・中止は期間の進行を停止させる

い 適用される期間の種類

不変期間か通常期間か、法定期間か裁定期間か、また行為期間か猶予期間かを問わず適用される

(2)期間進行停止の例外

期間進行停止の例外

以下の期間は中断・中止による影響を受けない
(ア)裁判所の行為について定められた判決の言渡期間(民訴251条1項・256条1項)(イ)送達期間(民訴規則159条)などの職務期間(ウ)当事者に訴訟行為ができるか否かにかかわらず画一的に定められている再審訴訟(民訴342条2項)の提起期間(エ)行政訴訟の第三者再審(行訴34条4項)等の提起期間

4 期間の進行再開

(1)再開の時点→受継・続行の決定の告知時

再開の時点→受継・続行の決定の告知時

あ 再開の時点

中断・中止によって期間の進行を止めていた期間は、受継を許す裁判(民訴128条)または続行命令(民訴129条)が当事者に告知された時に、再び進行を開始する

い 判決書送達後の中断→原裁判所の決定の告知時

判決書送達後に中断した場合、原裁判所が受継につき決定するが(民訴128条2項)、この決定の告知があれば判決に対する上訴期間は進行する
※大判昭和7年10月26日民集11巻2051頁(受継についての裁判確定により期間が進行するかのように判示)

(2)再開後の期間→カウントリセット

再開後の期間→カウントリセット

再開後に進行を始める期間は、進行を止めていた残存期間ではなく、所定の全部の期間である
それまでに進行した期間をまったく計算しないことにするという意味であり、中断等が解消した後に改めて全期間が進行を開始する
中断等が解消した後に途中から進行を再開するという意味ではない

(3)裁定期間(終了の日付)→改めて決定する

裁定期間(終了の日付)→改めて決定する

終期を定めた裁定期間の場合(例:3月30日までと終期を定めていたところ、3月25日に中断した場合)、全期間の進行ということは考えられないため、裁判所は改めて期間を裁定しなければならない

5 中断と中止の違いに関する学説(参考)

中断と中止の違いに関する学説(参考)

中断の場合は新当事者や新たな法定代理人等が訴訟行為をするについて慎重に検討する必要があるため、改めて全期間の進行をさせることには意義があるが、中止の場合は当事者が同一であるため、中断と同一に取り扱う必要があるか疑問である旨の指摘もある

6 参考情報

参考情報

秋山幹男ほか著『コンメンタール民事訴訟法Ⅱ 第3版』日本評論社2022年p635、636

本記事では、民事訴訟手続の中断・中止と進行の再開について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に民事訴訟の審理や進行に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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