【提訴前証拠収集処分の申立(申立書記載事項、添付書類)(解釈整理ノート)】
1 提訴前証拠収集処分の申立(申立書記載事項、添付書類)(解釈整理ノート)
民事訴訟の申立の前の段階で、裁判所をとおして、第三者(各種機関)に証拠の提出を求める制度があります。
詳しくはこちら|提訴前証拠収集処分(民事訴訟法132条の4)の総合ガイド
本記事では、裁判所に提訴前証拠収集処分の申立をする時に必要な申立書の記載事項と添付書類に関するルールや解釈を整理しました。
2 提訴前証拠収集処分の申立の方式→書面
提訴前証拠収集処分の申立の方式→書面
証拠収集処分は、強制力はないとしても、訴訟法上の義務を課す裁判を求めるものであるため、明確性を担保する必要がある
3 提訴前証拠収集処分の申立書の記載事項
(1)共通する記載事項
共通する記載事項
あ 基本
4種類の証拠収集処分の申立書すべてに共通する記載事項は以下のとおりである
※民事訴訟規則52条の5第2項
い 当事者・処分内容(1号、2号)
予告通知または返答の相手方の表示
申立に係る処分の内容
う 申立の前提となる事項(3号)
申立の根拠となる予告通知に係る請求の要旨および紛争の要点
え 申立の形式的要件に関する事項(6号)
4月の予告通知有効期間内の申立であることまたは期間後の申立について相手方の同意があること
お 申立の実質的要件に関する事項
ア 立証事項と証拠の関係(4号)
予告通知に係る訴えが提起された場合に立証されるべき事実およびこれと当該処分で得られる証拠となるべきものとの関係
「立証されるべき事実」には、その事実が当該予告通知に係る訴えにおける判断に必要であることが含まれている
4号の事由については、疎明の対象にはならないと考えられる
イ 収集困難性(5号)
申立人が証拠となるべきものを自ら収集することが困難である事由
5号の事由については、疎明が求められる(同条6項)
(2)文書送付嘱託を求める申立書の記載事項
文書送付嘱託を求める申立書の記載事項
あ 当該文書の所持者の居所
管轄裁判所を定める裁判籍となるため、管轄原因の把握のために記載を求める
※民事訴訟規則52条の5第3項1号
い 送付を求める文書(準文書を含む)を特定するに足りる事項
この点が特定していなければ、嘱託の内容が明らかにならず、処分ができないために記載を求める
※民事訴訟規則52条の5第4項前段
(3)調査嘱託を求める申立書の記載事項
調査嘱託を求める申立書の記載事項
あ 当該嘱託を受けるべき官公署等の所在地
管轄裁判所を定める裁判籍となるため、管轄原因の把握のために記載が必要である
※民事訴訟規則52条の5第3項2号
い 調査を求める事項
この点が特定していなければ、嘱託の内容が明らかにならず、処分ができないため、記載が必要である
※民事訴訟規則52条の5第5項前段
(4)専門的意見陳述を求める申立書の記載事項
専門的意見陳述を求める申立書の記載事項
あ 物の所在地
特定の物についての意見陳述を求める場合、当該特定の物の所在地の記載が必要である
※民事訴訟規則52条の5第3項3号
管轄裁判所を定める裁判籍となるため、管轄原因の把握のために記載を求める
い 当該物を特定するに足りる事項
この点が特定していなければ、嘱託の内容が明らかにならず、処分ができないため、記載が必要である
※民事訴訟規則52条の5第4項後段
う 意見の陳述を求める事項
この点が特定していなければ、嘱託の内容が明らかにならず、処分ができないため、記載が必要である
※民事訴訟規則52条の5第5項後段
(5)現況調査命令を求める申立書の記載事項
現況調査命令を求める申立書の記載事項
あ 当該調査に係る物の所在地
管轄裁判所を定める裁判籍となるため、管轄原因の把握のために記載を求める
※民事訴訟規則52条の5第3項4号
い 当該調査に係る物を特定するに足りる事項
この点が特定していなければ、命令の内容が明らかにならず、処分ができないため、記載を求める
※民事訴訟規則52条の5第4項後段
う 調査を求める事項
この点が特定していなければ、命令の内容が明らかにならず、処分ができないため、記載を求める
※民事訴訟規則52条の5第5項前段
4 提訴前証拠収集処分申立の添付書類
(1)予告通知書および同意証明書
予告通知書および同意証明書
あ 予告通知書の写し
予告通知書は証拠収集処分の申立の前提となる書面であり、その存在および有効要件の確認が適法な証拠収集処分申立の前提となるため
※民事訴訟規則52条の6第1項1号
い 相手方の同意書
予告通知が4月の有効期間を経過している場合は、相手方の同意の存在を証する書面の添付が必要である
※民事訴訟規則52条の6第1項2号
予告通知の有効期間経過後は、相手方の同意がある時だけ、証拠収集処分の申立が可能なためである
(2)予告通知の相手方による申立→返答書
予告通知の相手方による申立→返答書
※民事訴訟規則52条の6第2項
(3)登記・登録された内容の調査→登記事項証明書等
登記・登録された内容の調査→登記事項証明書等
あ 規定
証拠収集処分の申立が、特定の物に関する専門家の意見陳述の嘱託または執行官による物の現況調査命令を求めるものである場合で、かつ、その物に関する権利が登記または登録することができるときは、その登記または登録された内容を証する書面を添付する
※民事訴訟規則52条の6第3項
い 添付が必要な場合の例
ア 土地・建物が対象である場合
当該土地の不動産登記事項証明書
イ 自動車がそれらの対象である場合
当該自動車の自動車登録ファイルに記録されている事項の証明書
5 参考情報
参考情報
本記事では、提訴前証拠収集処分の申立について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際にまだ訴訟を提起する前の段階での証拠集めに関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。