【公正証書の効力・作成手続(情報整理ノート)】
1 公正証書の効力・作成手続(解釈整理ノート)
公正証書といえば、公正証書遺言が最も身近なものだと思います。
詳しくはこちら|公正証書遺言の作成の手続と特徴(メリット・デメリット)
遺言以外の書面、たとえば一般的な契約を公正証書として作成する、という活用方法もあります。
本記事では、公正証書の効力や作成手続について細かいことを整理しました。
2 公正証書の意味と特徴(信頼性)
公正証書の意味と特徴(信頼性)
あ 公正証書の意味
公正証書とは、法律行為その他私権に関する事実について、公証人が作成した文書である
※公証人法1条1号
い 公正証書の特徴
公証人は法務大臣に任命された国の機関であり、以下の点で私人間で作成された契約書よりも高い法的効力を持つ
3 公正証書の効力
(1)公正証書の証拠力
公正証書の証拠力
あ 形式的証拠力
裁判において証拠として取り上げられる資格が当然に認められる
い 実質的証拠力
記載されている意思表示の内容は当事者の意思に合致していると推定される
う 確定日付の効力
公正証書に記載された日付にその法律行為が成立したと認められる
(2)公正証書の執行力(執行証書)
公正証書の執行力(執行証書)
※民事執行法22条5号
4 公正証書必須の書面(効力発生要件)
公正証書必須の書面(効力発生要件)
(ア)任意後見契約(イ)事業用定期借地権(ウ)企業担保権の設定・変更契約(エ)建物の区分所有等に関する法律による規約設定(オ)手形・小切手の場合の拒絶証書(カ)自己信託の設定(キ)離婚時年金分割制度
5 公正証書作成の手続
(1)公正証書作成手続の流れ
公正証書作成手続の流れ
(2)公正証書の作成当日の手続
公正証書の作成当日の手続
6 公正証書の作成の際の確認する事項と資料
(1)公正証書作成時の当事者および代理人の本人確認
公正証書作成時の当事者および代理人の本人確認
あ 個人
印鑑登録証明書と実印(場合により顔写真付き身分証明書等を補充的に確認)
い 法人
法人の商業登記簿(全部事項証明書)、印鑑登録証明書と実印、代表者の顔写真付き身分証明書等
う 代理人
顔写真付き身分証明書等、委任状
(2)公正証書にする契約条項の検討
公正証書にする契約条項の検討
両当事者の利害のバランスが崩れていない条項にする
代理人の権限確認のための委任状には作成する公正証書と同じ条項を記載して契印する
(3)公正証書作成における代理人の適格性
公正証書作成における代理人の適格性
あ 会社組織の当事者
その組織に属し事務を担当している者は代理人になれる
い 個人の債権者側
比較的緩く運用
う 個人の債務者・連帯保証人側
弁護士(簡裁代理認定司法書士は140万円以内)以外は原則として認めない
7 公正証書のメリット
公正証書のメリット
あ 証拠能力が高い
(ア)成立の真正、作成日付の真正が証明される(イ)公証役場で保管されるため、紛失・盗難・改ざんを防止できる
い 強制執行が容易
(執行証書の場合)裁判所に行くことなく債務名義を取得できる
う 将来の紛争予防
公証人が関与して当事者の意思を確認する過程があるため、予防司法に貢献する
8 公正証書作成の制限事項
公正証書作成の制限事項
(ア)法令に違反した事項(イ)無効の法律行為(ウ)能力の制限によって取り消すことができる法律行為 ※公証人法26条
9 関連テーマ
(1)公文書の成立の真正と官公署への照会(民事訴訟法228条2項、3項)
詳しくはこちら|公文書の成立の真正と官公署への照会(民事訴訟法228条2項、3項)(解釈整理ノート)
10 参考情報
参考情報
本記事では、公正証書の効力・作成手続について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に公正証書の効力・作成手続に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。