【弁護士が負う法的責任と典型的問題行為の分類】
1 弁護士の負う責任の種類による分類
2 弁護士の行為による分類
3 依頼者を裏切るタイプの内訳
4 任務への熱意過剰タイプの本質的葛藤
5 任務への熱意過剰タイプの内訳
6 公的な規制違反の事例
7 プライベートに関する行為
1 弁護士の負う責任の種類による分類
弁護士は業務においてさまざまな当事者の法的問題に関わります。犯罪や違法・不法行為の解決に関わります。しかし,弁護士自身が法的な問題の当事者となる可能性もあります。
本記事では,弁護士の負う法的責任と典型的ケースを分類します。
まずは弁護士が負う法的責任の種類の分類をまとめます。
<弁護士の負う責任の種類による分類>
あ 懲戒処分
弁護士会による懲戒処分
一般事業者の行政責任に相当する
詳しくはこちら|弁護士の懲戒制度の基本(懲戒事由・処分の種類・弁護士会の裁量)
い 民事責任
不法行為による損害賠償責任
う 刑事責任
刑事罰の対象となること
いわゆる『犯罪』である
例;恐喝罪,名誉毀損罪
2 弁護士の行為による分類
次に,弁護士の責任が生じる行為に着目します。実際に問題となった行為は非常に多くのバラエティがあります。
まずは,問題となる行為を大きく分類します。
3 依頼者を裏切るタイプの内訳
前記の分類のうち『依頼者を裏切るタイプ』の内容は幅広いです。分類の仕方自体にもいろいろなものがあります。主に案件の分野を中心に分類してみます。
<依頼者を裏切るタイプの内訳(※1)>
あ 案件の分野別
ア 不動産・税務
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|不動産・税務編
イ 相続・遺言・消滅時効
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|相続・遺言・消滅時効編
ウ 債権回収・差押・仮差押
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|債権回収・差押・仮差押編
エ 控除・上告(期限)
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|控訴・上告の期限切れ編
い 秘密保持義務関係
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|守秘義務違反・情報漏洩編
う その他
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|訴訟対応懈怠・弁護士の家族ぐるみ介入編
※上記はいずれも『民事責任』である
4 任務への熱意過剰タイプの本質的葛藤
前記の分類のうち『任務への熱意過剰タイプ』は特有の特色があります。
弁護士が受任した任務の遂行に熱心になるのは使命であり,当然のことなのです。依頼者にとって有利・望ましい結果の実現は弁護士の提供するサービスの価値の本質です。しかし,過剰になってしまうと違法となり法的な責任が生じます。本質的な状況を整理します。
<任務への熱意過剰タイプの本質的葛藤>
あ 価値のコンフリクト
次の2つの価値が相容れない関係にある
ア 依頼者の権利実現イ 弁護士自身のリスク回避
い 葛藤
優先度の配分を弁護士が判断する必要がある
5 任務への熱意過剰タイプの内訳
任務への熱意過剰タイプの典型的な行為はさまざまなものがあります。この内訳を分類します。それぞれに分類される具体的事例を紹介する記事のリンクもここに振り分けておきます。
<任務への熱意過剰タイプの内訳(※2)>
あ 攻撃的・過激な表現
ア 懲戒処分イ 民事責任
詳しくはこちら|弁護士の過激な表現による賠償責任(民事責任)
ウ 刑事責任
詳しくはこちら|権利行使と脅迫罪・恐喝罪との区別(ユーザーユニオン事件)
い 周囲に知らせる系
ア 懲戒処分 詳しくはこちら|弁護士が当事者以外に知らせたことによる懲戒事例
う 攻撃的民事責任追及
ア 懲戒処分 詳しくはこちら|弁護士の攻撃的な民事責任追及による懲戒事例
え 攻撃的刑事責任追及
ア 懲戒処分 詳しくはこちら|弁護士の攻撃的な刑事責任追及(告訴予告)による懲戒事例
お 攻撃的行政責任追及
ア 懲戒処分 詳しくはこちら|弁護士の攻撃的な懲戒申立・予告による懲戒事例
か 虚偽・不正確な情報拡散系
ア 懲戒処分
詳しくはこちら|弁護士が虚偽・不正確な情報を広めたことによる懲戒事例
詳しくはこちら|弁護士の法律雑誌フル活用による懲戒事例と残る違和感
6 公的な規制違反の事例
前記の分類のうち『公的な規制違反』についてもいろいろな内容があります。これに該当する事例をまとめます。
<公的な規制違反の事例(※3)>
ア 懲戒処分
詳しくはこちら|弁護士・懲戒|刑事事件記録→被告人・他の弁護士に交付
イ 民事責任
詳しくはこちら|不慣れな弁護士のミス→賠償責任|債務整理・事務所乗っ取り編
7 プライベートに関する行為
プライベートに関する行為の責任が生じることもあります。次の事例は元々依頼者であった方との恋愛関係です。純粋にプライベートではないとも言えます。いずれにしても,ここではプライベート関係として分類しておきます。