【弁護士の攻撃的な刑事責任追及(告訴予告)による懲戒事例】
1 根拠なし+詐欺罪で告訴予告(事案)
2 根拠なし+詐欺罪で告訴予告(懲戒判断)
3 医師への告訴予告(懲戒判断;概要)
1 根拠なし+詐欺罪で告訴予告(事案)
弁護士が任務遂行のために相手の負う法的責任を指摘することはあります。代理人としての交渉の本質的なプロセスです。しかし,その程度が過剰であると違法となります。
まずは,詐欺罪での告訴の予告について懲戒事由となったケースを紹介します。
<根拠なし+詐欺罪で告訴予告(事案)>
あ ビルの売却
B社が本社ビルを売却した
代表取締役はAである
い 不適切な送金
売却代金の一部8700万円について
→B社名義の預金口座に振り込まれた
Aは,知人Cに預金通帳・印鑑を預けた
CはB社に無断で8500万円をCの関係会社に送金した
Cの知人にXがいた
Xは有名企業グループの特別顧問であった
う 受任
弁護士Yは,A(B社)から8500万円の回収の依頼を受けた
え 通知書の送付
YはXに対して,次の内容の内容証明郵便を送付した
お 通知書の内容
Xを詐欺の共犯であると認定する内容
Xを告訴する意思であること
8500万円が返還されれば,あえて有名企業グループの社員による詐欺罪としていたずらに世間を騒がすつもりはない
2 根拠なし+詐欺罪で告訴予告(懲戒判断)
前記事例についての弁護士会の判断です。
<根拠なし+詐欺罪で告訴予告(懲戒判断)>
あ 根拠不足
『XがCの犯した詐欺罪の共犯であること』の合理的・客観的な証拠はなかった
い 通知内容の趣旨
Yは,Xが8500万円の支払に応じないときは同グループ社員による詐欺罪として公表しかねない意思を暗にほのめかした
Xを畏怖困惑させた
う 職務行為としての評価
Yの請求行為について
弁護士の職務行為として許される社会的相当性の範囲を逸脱する
え 結論
戒告とする
平成14年10月9日
※自由と正義54巻1号p108
3 医師への告訴予告(懲戒判断;概要)
弁護士が,鑑定をした医師に対して懲戒申立とともに告訴の予告をしたケースがあります。これについては別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|弁護士の攻撃的な懲戒申立・予告による懲戒事例