借地,雇用,結婚;共通点=「期間限定」の流行り
1 不動産に関する法律の『保護』ルール
2 労働法における『保護』ルール
3 結婚制度(離婚のルール)
不動産,労働,結婚や離婚,という関連の薄そうな3つのカテゴリです。
法律の実務に携わっていて「共通点」を見出しました。
『その発想はなかったよ』と言うほどでもないかもしれませんが。
1 不動産に関する法律の『保護』ルール
代表的なものを1つだけ挙げると『借地』です。
『借主保護』がすごいんです。
<ざっくり言うと>
一旦土地を貸すと半永久的に戻ってこない
仮に戻ってくるとしても大金が必要
<その結果=不都合>
あ オーナー
使ってない土地があるけど,貸せないな。
空き地のままにしておいた方が良いや。
い 借りたかった人
店舗用地として10年くらいのスパンで借りたかった。
そうすれば地域に商品,サービスを提供できたのに。
そう,『保護を強めた』結果,『保護を受けるべき人』が保護されないのです。
既存の『借地人』は保護の対象に入るのですが。
<重要な法則1|〜過保護は逆効果〜>
『保護』『拘束』を強め過ぎる
↓
契約締結自体が回避される
↓
『保護されるはずの人』が『保護の範囲』に入れない
=むしろ『排除された』
↓
何も保護規定(拘束)がないより不利益に
この法則は重要です。
過ぎたるは及ばざるがごとし。
昔の人は,これ,うまいこと言いました!
国会も社会のニーズを捉えます。
この不都合を解消する法律を作りました。
定期借地,という制度です。
借地借家法の中に条文が作られています。
何度か改正を経て,より使いやすい制度になっています。
バリエーションが増えているのです。
詳しくはこちら|定期借地;制度趣旨
まとめてみます。
<重要な法則2|過剰な拘束は「期間限定」で解消>
『保護』『拘束』が強すぎる
↓
期間の限定を付ける
↓
契約締結が促進される
↓
両者(契約当事者)のニーズがかなう
↓
(一定の)ハッピー
2 労働法における『保護』ルール
労働法,というとカバー内容は非常に多岐に及びます。
詳しくはこちら|労働問題;解雇,残業等
代表的なもので説明します。
解雇規制です。
詳しくはこちら|解雇権濫用の法理;まとめ
<ざっくり言うと>
あ 正社員を解雇できるのは最後の最後
い 前提として↓を行うことが条件
ア 新規採用ストップイ 非正規雇用者の解雇ウ 機械化,システム導入による効率化を断念する
最高裁が示したルールです。
正規雇用/非正規雇用,の差別が激しいので憲法14条の平等原則違反ではないか,という疑いが高まっていますが。
とりあえず,現在活きているルールです。
<その結果=不都合>
あ 会社側
正社員を雇うと産業構造の変化に対応できない
海外企業に相対的に負けるリスクが大きい
雇うとしたら非正規雇用ではないと維持できない
い 求職者
正社員で雇ってくれるところがあまりない!
このような利害関係の中で『有期雇用』『非正規雇用』が主流となっているのですね。
上記の『重要な法則2』と同じなので省略して再掲します。
<重要な法則2|過剰な拘束は「期間限定」で解消>
期間の限定を付ける
↓
ハッピー
おまけを1つ追加します。
<産休制度を嫌がる『入社前』の就活JD現象>
『産休の上限アップを強制すると就活している女子大生がダメージを受ける』
この現象も同じ構造です。
詳しくはこちら|育児休業;政府案;期間を3年に延長;未施行
3 結婚制度(離婚のルール)
家族に関するルールの設計,は政府,最高裁がタッグを組んで取り組んでいる超特大プロジェクトです。
家族,夫婦という概念への価値観,ということが正面から問題になっています。
婚外子の相続上の『差別』が,最高裁で違憲とされたのが数か月前ですね。
憲法14条の平等原則違反だから法律改正をしなさい,と国会にメッセージを出したのです。
以前からメッセージを出し続けたけど,無視し続けたので,強制力の宝刀を抜いたのです。
違憲立法審査権というやつです。憲法81条にあるのです。
前置きが長くなりました。
細かいことはたくさんありますが,はしょって進めます。
<ポイント>
「現在の結婚制度,家族という価値観と法律が大きくずれている」
現在の社会の大きな問題の1つに切り込みます。
『少子化』『高齢化』
要因は多いですし,多くの分析がなされているので,ここでは1つだけ。
結婚制度です。
一定条件下では『拘束が強すぎる』のです。
当事者が想定しないような『過剰な程度』に至るのです。
詳しくはこちら|結婚債権評価額;算定;基本タイプ
これで『本来子供を作るのに適した人』ほど,結婚を避ける方向に作用しています。
もちろん,結婚しなくても子供を作ることはできます。
また,法的な拘束力を緩和しつつ,結婚する,という制度も用意されています。
詳しくはこちら|夫婦財産契約(婚前契約)によって夫婦間のルールを設定できる
しかし,少なくとも現在は,社会的に『やりにくい』ことです。
今後は『ありふれたこと』になるでしょうけど。
上記の最高裁判決は『ありふれたこと化』の最初の小さな1歩です。
この部分は,社会の価値観,であり,感覚,です。
性淘汰,進化生物学の研究分野に近いと思います。
とにかく,法律を用意しておいても『実際には使えない』という状態です。
なかなか社会の価値観は変わりませんが,着実に変わりつつあります。
ちょっと話しを戻します。
強すぎる『拘束』による不都合の解消の決め手は『期間限定』。
再掲します。
<重要な法則2|過剰な拘束は『期間限定』で解消>
期間の限定を付ける
↓
ハッピー
さすがに『結婚制度まで有期タイプが普通になる』とは・・・
その発想はなかったよ!と言いたいですが。
統計上,結婚した3組に1組が離婚しています。
結果的にこの発想どおりになっているケースも多いのです。
あとは,契約締結時から『有期』にするのがありふれるのも時間の問題でしょうか。