【離婚係争中×相続リスク|予防法=遺言作成・信託・遺留分キャンセラー】
1 離婚に向けた対立中には『相続』リスクが潜在的にある
2 保険としての相続リスク軽減策=遺言作成や信託など
3 相続リスク軽減策|遺言・遺留分キャンセラー
4 相続リスク軽減策|廃除|離婚よりも有利になることもある
5 離婚/廃除の選択|当事者が自由に選択できる
6 相続リスク軽減策|受益者連続型信託・遺言代用信託
1 離婚に向けた対立中には『相続』リスクが潜在的にある
一般的に,離婚に向けた協議や調停,訴訟は,長期化することもあります。
このような場合『相続』という一定のリスクがあります。
というのは,離婚成立前では,まだ夫婦です。
相互に配偶者として相続人という立場です。
相続の際は『特有財産』も含めて,原則的に半分が相手方に渡る状態です。
別項目;遺言がないと,相続の割合は法定相続分となる
もちろん,想定上のリスクに過ぎませんが,一定の対策があります。
2 保険としての相続リスク軽減策=遺言作成や信託など
相続による相手=配偶者への財産移転リスクを一定程度排除することも可能です。
最初に方法をまとめておきます。
<想定上の『相続』のリスク軽減策>
あ 遺言
い 遺留分キャンセラー
う 廃除
え 受益者連続型信託
それぞれの内容は次に説明します。
3 相続リスク軽減策|遺言・遺留分キャンセラー
(1)遺言
相続時の財産の承継先を指定する方法です。
相手=配偶者への財産の承継を回避するような内容の遺言を作成するということです。
詳しくはこちら|遺言の種類と記載事項,遺留分との抵触,生前贈与との違い
(2)遺留分キャンセラー
遺言を作成しても『配偶者としての遺留分』は排除できません。
遺留分を極力回避する方法はいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|将来の遺留分紛争の予防策の全体像(遺留分キャンセラー)
4 相続リスク軽減策|廃除|離婚よりも有利になることもある
廃除は『遺留分も含めて』相続権を剥奪する制度です。
廃除の事由は『被相続人の侮辱』など,いくつかあります。
いずれにしても,家裁でこのような『廃除の事由』を立証し,認定される必要があります。
実際にはハードルはある程度高いです。
その代わり効果も強力です。
<配偶者の廃除>
あ 廃除の実現
ア 廃除事由
著しい非行・侮辱などの特別事情が必要である
イ 廃除の手続
家裁の申し立てる→審理→決定(審判)
い 廃除の効果
対象者は相続人から除外される
→『遺留分』も失う
→遺言により『一切承継させない』が可能となる
う 財産分与との比較
財産分与は基本的に『夫婦共有財産の2分の1』の移転が必須である
→『廃除+遺言』は『離婚+財産分与』よりも有利である
5 離婚/廃除の選択|当事者が自由に選択できる
夫婦の関係が実質的に破綻・終了した場合『離婚する』のが通常です。
一方,前述のように『廃除』ができれば,実質的に権利関係の切断が実現します。
そこで『離婚/廃除』は同じような効果を持つ選択肢,とも言えます。
『離婚』と『廃除』の2つの手続の選択・順序に関する判例をまとめます。
<『離婚』と『廃除』の手続選択|判例>
あ 前提事情
配偶者の一方に『廃除事由』がある場合
例;著しい非行
い 当事者=配偶者の選択
『離婚請求』or『廃除請求』の選択は当事者の自由である
※大阪高裁昭和44年12月25日
詳しくはこちら|相続人の範囲|法定相続人・廃除・欠格|廃除の活用例
6 相続リスク軽減策|受益者連続型信託・遺言代用信託
信託を利用すると,財産の承継先の指定と遺留分の低減の2つが同時に行えます。
『遺留分の低減』の効果があるので,前述の『遺留分キャンセラー』の1つという位置付けです。
また,将来,配偶者が亡くなった時の相続についてもコントロールできます。
『受益者連続型信託』という方法です。
遺言の代わりに用いるという意味で『遺言代用信託』とも呼びます。
遺言だけではなく,離婚成立時の財産分与の方法の一環として活用することも可能です。
夫婦が関係する遺言・財産分与で信託を活用する方法については,別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
以上は,自分の『死亡=相続』によって『相手=配偶者』に財産が渡る,というリスクでした。
一方『相手=配偶者』の死亡=相続,というリスクもあります。
これについても別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
多額の資金をめぐる離婚の実務ケーススタディ
財産分与・婚姻費用・養育費の高額算定表
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。