【年金分割の制度趣旨|公的年金の基本事項=被保険者・標準報酬】
1 年金分割|制度概要
2 公的年金|特徴・種類
3 公的年金|被保険者|種類
4 標準報酬|保険料納付実績
5 年金分割制度|趣旨
1 年金分割|制度概要
平成16年から離婚に関する『年金分割』という制度が導入されています。
制度の根本的な趣旨をまとめます。
<年金分割|制度概要>
厚生年金・共済保険について『保険料納付実績』を離婚した夫婦で分割する
→年金の支給を公平にする
離婚後に年金の不公平が生じることを修正する制度です。
詳しく説明する前に『年金制度』自体の基本的な部分を説明します。
2 公的年金|特徴・種類
公的な年金制度の特徴と種類をまとめます。
<公的年金|特徴・種類>
あ 公的年金共通の特徴
保険者=政府
被保険者=国民
い 国民年金;基礎年金・1階部分
被保険者=日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の人
すべての国民が加入する
う 厚生年金・共済年金;2階部分
種類 加入者
厚生年金 会社員など
共済年金 公務員など
え 国民年金基金・厚生年金基金;3階部分
ア 趣旨
年金を増加させるための『上乗せ』
強制加入ではない
イ 『年金基金』の種類
種類 | 加入者 |
国民年金基金 | 自営業者など |
厚生年金基金 | 会社員など |
お 企業年金など;3階部分
確定給付企業年金・適格退職年金・確定拠出年金など
3 公的年金|被保険者|種類
公的年金の『被保険者』を整理します。
基本的な用語を理解していないと,年金分割などの制度も分かりにくいのです。
<公的年金|被保険者|種類>
あ 第1号被保険者
次のすべてに該当する人
ア 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満であるイ 厚生年金・共済組合に加入していないウ 厚生年金・共済組合加入者に扶養されていない
い 第2号被保険者
次のいずれかに該当する人
いわゆるサラリーマン
ア 厚生年金保険の被保険者イ 国家公務員共済組合・地方公務員共済組合の組合員ウ 日本私立学校振興・共済事業団年金の加入者
う 第3号被保険者
次のすべてに該当する人
ただし,一定額以上の収入があると第1号被保険者となる
ア 第2号被保険者の被扶養配偶者であるイ 20歳以上60歳未満である
4 標準報酬|保険料納付実績
年金の計算においては『標準報酬』というパラメータが使われています。
年金分割制度で修正する対象となる部分です。
『標準報酬』自体の内容をまとめておきます。
<標準報酬|保険料納付実績>
厚生年金保険・共済年金において保険料・年金額を算定する基準額
報酬月額・賞与額を一定の幅で区分して便宜的な報酬月額・賞与額を定める
簡単に言うと『保険料の納付実績』となる
5 年金分割制度|趣旨
従来の年金制度では『不公平』な部分がありました。
これを修正するのが『年金分割制度』です。
『年金分割制度の趣旨』をまとめます。
<年金分割制度|趣旨>
あ 『厚生年金・共済年金』|従前の問題点
離婚した場合,『就労していない期間=専業主婦だった期間』が長い
→年金給付額算定において『少ない』傾向になる
→十分な年金給付を受けられない
い 不合理の修正の要請
『婚姻期間中における一方配偶者の収入』の分析
→他方配偶者の『貢献』が含まれている
→この『貢献』を年金支給額に反映させる必要がある
う 年金分割制度
離婚時に『保険料納付実績=標準報酬』を分割する制度が導入された
※平成16年・厚生年金保険法改正
年金分割制度の具体的な利用に関しては別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
多額の資金をめぐる離婚の実務ケーススタディ
財産分与・婚姻費用・養育費の高額算定表
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。