【養子縁組の基本(形式的要件・効果・典型的活用例)】
1 養子縁組の届出手続
2 未成年養子における家裁の許可
3 養子縁組の意思の内容(概要)
4 養子縁組届記載後の意識喪失と縁組意思
5 養子縁組の効果
6 扶養関係の変化による養育費への影響(概要)
7 養子縁組を活用する典型例
1 養子縁組の届出手続
本記事では,養子縁組の基本的事項を説明します。
まずは養子縁組に必要とされる届出についてまとめます。
<養子縁組の届出手続>
あ 縁組届
役所に養子縁組の届出を提出する
→養子縁組が成立する
い 証人
縁組届には成人2人の証人の署名が必要である
※民法799条,739条
う 家裁の許可(概要)
養子が未成年者である場合
→家裁の許可が必要となる(後記※1)
え 縁組届の分類
提出によって効力が生じる
→『創設的届出』に分類される
詳しくはこちら|創設的届出/報告的届出|役所への届出の分類|提出義務・罰則
2 未成年養子における家裁の許可
養子が未成年者である場合は家庭裁判所の許可が必要です。ただし例外もあります。
<未成年養子における家裁の許可(※1)>
あ 原則
養子となる者が未成年者の場合
→家庭裁判所の許可が必要である
『審判対象事件−別表第1事件』に分類される
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
い 例外
養子となる者が『養親となる者の配偶者の卑属』である場合
→家庭裁判所の許可は必要ではない
※民法798条
う 配偶者と内縁の差別
『い』の『配偶者』について
『内縁関係』は含まれない
法律婚と事実婚の不合理な差別の1つとして残っている
詳しくはこちら|内縁関係に適用される制度と適用されない制度(法律婚の優遇)
3 養子縁組の意思の内容(概要)
養親と養子の縁組をする意思が不十分であると,養子縁組は無効となります。
この『縁組意思』の内容についてはいろいろな解釈論があります。
判例により,実質的な親子関係を作る意思が必要とされています。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|養子縁組の縁組意思の内容のまとめ(実質的意思の判断基準)
4 養子縁組届記載後の意識喪失と縁組意思
養子縁組をするには『親子関係を作る意思』が必要です(前記)。
この縁組意思には,形式的に届出を提出する意思も含まれます。
通常は届出を提出している以上,提出する意思があることは明白です。
しかし,提出を第三者に頼んだケースでは『提出する意思』の有無が不明確となります。
最高裁判例はある程度この『提出する意思』の判断を緩和しています。
<養子縁組届記載後の意識喪失と縁組意思>
あ 事案
当事者間において養子縁組の合意が成立していた
当事者から他人に対し縁組の届出の委託がなされていた
届出が受理された当時当事者が意識を失っていた
い 裁判所の判断
受理の前に翻意したなどの特段の事情の存在しない限り
届出の受理より養子縁組は有効に成立する
※最高裁昭和45年11月24日
5 養子縁組の効果
養子縁組が成立すると法律上の親子関係が生じます。法律上は現実の親子(実親子)と同じ扱いになるということです。
<養子縁組の効果>
あ 養子縁組の効果
養親と養子は法律上の『親子』となる
※民法809条
実親と実子(養子)の親子関係も存続する
※民法817条の2第1項参照
い 親子関係に適用される民法の主な規定
種類 | 根拠 |
監護・教育の権利・義務 | 民法820条 |
扶養義務 | 民法877条1項 |
相続権 | 民法887条1項 |
6 扶養関係の変化による養育費への影響(概要)
養子縁組による間接的な影響もあります。典型的なものはすでに決められている養育費の金額の変更です。
<扶養関係の変化による養育費への影響(概要)>
養子縁組によって扶養関係が変わる
→その結果,従前の養育費の金額にも変更が生じることがある
詳しくはこちら|元妻,夫の再婚,養子縁組,出産により養育費の変更が認められる
7 養子縁組を活用する典型例
実際に養子縁組が行われる状況はある程度種類が決まっています。
典型的な状況や目的をまとめます。
<養子縁組を活用する典型例>
あ 連れ子
再婚した相手方の子供と親子関係を構築する
いわゆる連れ子との養子縁組である
い 節税養子
相続税の節税対策として養子縁組を活用する
詳しくはこちら|相続税の節税|相続人を増やす|養子縁組・2割加算・養子人数上限
う 遺留分対策
遺留分割合を変えるために養子縁組を活用する
詳しくはこちら|将来の遺留分紛争の予防策の全体像(遺留分キャンセラー)
え 婿養子
いわゆる婿養子において
『A・Bの結婚』と『A・Cの養子縁組』を同時に行う
C=Bの親
解消の際も,原則的に離婚と離縁がセットになる
詳しくはこちら|『婿養子』|離婚をしたら『離縁』も認められるが例外もある
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