【認知症・重病・障害×離婚原因|『精神病』に準じた基準=重度+回復不能など】
1 認知症×離婚原因|『精神病』に含めて扱う
2 認知症×離婚原因|『精神病』に準じて離婚を認めた事例
3 『重病』『障害』×離婚原因|『精神病』と同じ枠組み
4 植物状態×離婚原因|離婚を認めた事例
5 言語障害あり・知能障害なし×離婚原因|離婚を認めなかった事例
1 認知症×離婚原因|『精神病』に含めて扱う
『認知症』が離婚原因として主張されることがあります。
『認知症』の法的な扱いについてまとめます。
<認知症×離婚原因|解釈論>
あ 本来的な『精神病』
厳密な意味での精神病
=精神医学的に精神病の範疇に規定されるもの
い 民法770条1項4号『精神病』の解釈
本来的な『精神病』(上記)に限られない
『夫婦の協力義務を果たし得ない状況』を含む
※大阪高裁平成17年10月27日
2 認知症×離婚原因|『精神病』に準じて離婚を認めた事例
認知症を離婚原因として認めた判例を紹介します。
<認知症×離婚原因|離婚を認めた事例>
あ 事案
妻が認知症となった
ア 重度のアルツハイマー型痴呆イ 顔の認知,音声・言語の理解がほとんどできないウ 回復の可能性はない
い 裁判所の判断
離婚を認めた
※大阪高裁平成17年10月27日
3 『重病』『障害』×離婚原因|『精神病』と同じ枠組み
『精神病』以外の病気も,離婚原因として主張されることもあります。
法的な扱いでは,実質的に『精神病』と同様です。
<『重病』『障害』×離婚原因>
あ 解釈論
『精神病』以外の重病・障害
→『精神病』としては扱わない
→具体的事情により『婚姻を継続し難い重大な事由』として認める
※民法770条1項4号,5号
い 離婚が認められる条件
次のいずれにも該当する場合,離婚が認められる
ア 病気・障害が『重度』イ 『回復の見込みがない』ウ 『生計の見通し』が立つ
※判例は後記
4 植物状態×離婚原因|離婚を認めた事例
重病により植物状態となったケースで,離婚を認めた判例を紹介します。
<植物状態×離婚原因|離婚を認めた事例>
あ 植物状態
妻が,失外套症候群により植物状態となった
い 裁判所の判断|評価
次の条件に該当する
病気・障害が『重度』+『回復の見込みがない』+『生計の見通し』
う 裁判所の判断|結論=認容
『婚姻を継続し難い重大な事由』に該当する
→離婚を認めた
※民法770条1項5号
※横浜地裁横須賀支部平成5年12月21日
5 言語障害あり・知能障害なし×離婚原因|離婚を認めなかった事例
『言語障害』が生じたケースで,離婚が認められなかった判例を紹介します。
<言語障害あり・知能障害なし×離婚原因|離婚を認めなかった事例>
あ 脳の障害
妻が脊髄小脳変性症となった
い 具体的状況
ア 平衡感覚に失調をきたしている
・真っ直ぐ歩けない
・階段を上手に上り下りできない
・物を正しく運べない
・物を持てない
イ 言語障害があるウ 知能障害はない
い 裁判所の判断|評価
次の条件に該当しない
病気・障害が『重度』+『回復の見込みがない』+『生計の見通し』
う 裁判所の判断|結論=棄却
『婚姻を継続し難い重大な事由』に該当しない
→離婚を認めない=棄却
※民法770条1項5号
※名古屋高裁平成3年5月30日
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