【子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例】

1 子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例
2 試行的面会交流の目的と方法
3 試行的面会交流の方法の具体例
4 試行的面会交流による抑圧リリースの例
5 試行的面会交流によるサプライズオムツ事例
6 子供の葛藤と母親の誘導を見抜いた裁判例(概要)

1 子供の意思の調査のための試行的面会交流の意義や実例

家裁の調停・審判で子供の意思の調査が行われることがあります。家裁の調査官が子供に面会するなどの方法があります。
詳しくはこちら|監護に関する事項・親権者の裁判(審判・附帯処分等)における子の意見の聴取
詳しくはこちら|家裁調査官による子供の意見の調査(真意を把握する工夫や心理テスト)
子供の意思を調査する方法の1つとして試行的面会交流があります。
本記事では,試行的面会交流の意義を説明するとともに実例を紹介します。

2 試行的面会交流の目的と方法

子供と親が会って話したり一緒に遊んだりする状況を観察することで子供の意思を把握する方法があります。これを試行的面会交流と呼びます。
本来の面会交流の継続的な実施を実現するための準備という位置づけから,試行的と呼ばれるのです。
ただし,面会交流の調停・審判以外の種類の手続でも,子の意思を把握する手段として試行的面会交流を用いることもあります。

<試行的面会交流の目的と方法>

あ 試行的面会交流の目的

面会交流の阻害要因の把握や面会交流の円滑な実施に向けた調整を目的とする

い 試行的面会交流の実施方法

安全を期して,調停の期日or期日間に家庭裁判所の児童室(家族面接室)を使って行うことが多い(後記※1
※金子修ほか編著『講座 実務家事事件手続法(上)』日本加除出版2017年p424

3 試行的面会交流の方法の具体例

試行的面会交流は,裁判所の児童室を使って行うことが多いです。親子の面会の様子を観察できるような施設を用います。

<試行的面会交流の方法の具体例(※1)

あ 面会交流

家裁内のプレイルームに,別居親と子供の2人だけが入る
2人で玩具などで遊ぶ

い 観察・調査・立会

調査官・同居親が次の方法でこの状況を見る
ア マジックミラー越しに見るイ キャメラで撮影+別室のモニターで見る

う 想定外の効果の例

ア 子供の真意が発覚するイ 親の気持ちが動く→和解(調停)成立に至る

4 試行的面会交流による抑圧リリースの例

試行的面会交流では,本来の目的である子の意思の把握以外の効果が生じることがあるのです。
その具体例を以下,いくつか紹介します。
試行的面会交流の実施により,子供が抑圧から解放されるケースがありました。この状況から,”日頃子供が(同居する)親から抑圧されていた(親に迎合していた)ことが判明しました。

<試行的面会交流による抑圧リリースの例>

あ 面会交流前の状況

子供=3歳の女児
父が同居していた
事前に女児は『お母さんと会うのはちょっとイヤ』と表明していた

い 抑圧リリース現象

母と会ったとたんに『会いたかった』と大泣きした
最後まで母親と離れようとしなかった
父がこれを見ていた
→父は子供を確保することを断念した

う 調停成立

監護権者を母親に指定する内容の調停が成立した

5 試行的面会交流によるサプライズオムツ事例

子供と父の試行的面会交流を観察していた母の気持ちが動いた事例を紹介します。事前に予告せずに母がオムツを用意しておいたところ,父がその場でスムーズにオムツ替えを完遂したのです。
これを見た母が安心して,その後,定期的な面会交流がスムーズに実施されることにつながりました。

<試行的面会交流によるサプライズオムツ事例>

あ 面会交流前の状況

子供=3歳男児
母が同居していた

い オムツ替え遂行

母が予告なしにオムツを準備していた
父がスムーズにオムツ替えを遂行・完了した
母がこれを見て安心した

う 調停成立

定期的に面会交流を行う内容の調停が成立した

6 子供の葛藤と母親の誘導を見抜いた裁判例(概要)

試行的面会交流をしっかりと観察したことにより,母親の言動が,子供が父親との面会交流を拒否する態度につながっていることを見抜いた実例があります。
このような子の葛藤を解消するために,裁判所は親権者を父に変更しました。

<子供の葛藤と母親の誘導を見抜いた裁判例(概要)>

あ 試行的面会交流の観察

試行的面会交流として父親と子供がプレイルームで玩具を使って遊んだ
その後,母親が子供に『(マジックミラーで)ママ見てたよ』と言った
そのため,子供は1回目の交流に強い罪悪感を抱いた
そして『母親に対する忠誠心を示すため』に,父親に対する拒否感を強めた
2回目の面会交流は子供が拒否した

い 裁判所の判断

面会を実施できない主な原因は母親にある
子供を葛藤状態から解放すべきである
→親権者を父親に変更する
※福岡家裁平成26年12月4日
詳しくはこちら|試行的面会交流により母親の誘導を見抜いて親権者変更を認めた事例

本記事では,試行的面会交流の意義や実例を説明しました。
このように試行的面会交流の実施により子供の本当の気持ちが判明することもよくあります。
実際に子供についての問題を解決する状況では,適切な調査方法の主張も含めた主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に子供に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

多額の資金をめぐる離婚の実務ケーススタディ

財産分与・婚姻費用・養育費の高額算定表

Case Study ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、離婚費用、養育費の高額算定表 三平聡史 Satoshi Mihira [著] 日本加除出版株式会社

三平聡史著の書籍が発売されました。

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説!

弁護士法人 みずほ中央法律事務所 弁護士・司法書士 三平聡史

2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分

相続や離婚でもめる原因となる隠し財産の調査手法を紹介。調査する財産と入手経路を一覧表にまとめ、網羅解説。「ここに財産があるはず」という閃き、調査嘱託採用までのハードルの乗り越え方は、経験豊富な講師だから話せるノウハウです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【ビックデータについての日本の法規制(米国のデータブローカーの日本上陸)】
【行政代執行|基本・手続|『命令』が前提・裁判所不要・罰則との関係】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00