【不受理申出|協議離婚届提出を阻止できる・報告的届出は対象外】

1 離婚意思の撤回×離婚届|概要
2 不受理申出|基本=『受理』を阻止できる
3 不受理申出|期限|現在は無期限となっている
4 離婚・不受理申出×相手の対応=離婚調停・訴訟の申立
5 離婚・不受理申出×離婚原因|経緯が考慮される
6 不受理申出×調停・判決による離婚

1 離婚意思の撤回×離婚届|概要

離婚意思を撤回する,というケースがよくあります。
この場合『離婚届の提出』に関するトラブルが起きやすいです。

<離婚意思の撤回×離婚届|概要>

あ 離婚意思の撤回×離婚届|具体例

離婚届にサインをした
離婚届を相手方=配偶者に預けてある
その後,気が変わって『離婚したくない』と思っている

い 離婚届提出×現実的トラブル

離婚届が提出されてしまった場合
→役所では戸籍上の離婚解消=訂正できない
→離婚無効確認訴訟などが必要になる
詳しくはこちら|離婚無効|調停・訴訟|『無効』の離婚届受理の撤回→家裁の手続が必要

2 不受理申出|基本=『受理』を阻止できる

『不受理申出』という役所の手続があります。

<不受理申出|基本>

あ 不受理申出|効力

『不受理申出』を行った場合
→対象となる届出を役所が受理しない扱いとなる
※戸籍法27条の2第3項,4項

い 不受理申出|典型例

離婚届についての不受理申出を行う
→その後,離婚届が提出された場合
→離婚届は受理されない
=『協議離婚』が戸籍に記録されない

3 不受理申出|期限|現在は無期限となっている

不受理申出の『期限』についてまとめます。

<不受理申出|期限>

あ 不受理申出|期限

『無期限』である
一定期間で効力がなくなる,ということはない

い 参考|過去の規定

以前,戸籍法の改正がなされた
改正法施行日=平成20年5月1日
法改正前
→有効期限は6か月であった
『延長』のためには『再度の申出』が必要であった

4 離婚・不受理申出×相手の対応=離婚調停・訴訟の申立

不受理申出により『離婚成立』が阻止できます(前述)。
この時点で対立が表面化していると言えます。
典型的な攻防をまとめます。

<離婚・不受理申出×相手の対応>

あ 不受理申出×離婚|効果

離婚届に夫婦両方が調印した
その後,不受理申出がなされた場合
→『離婚届』が受理されなくなる

い 典型的な対応

不受理申出の相手方は改めて離婚を求める
→離婚調停・訴訟を申し立てる
詳しくはこちら|離婚には協議,調停,審判,裁判離婚の4種類があり,成立時点に違いがある

5 離婚・不受理申出×離婚原因|経緯が考慮される

不受理申出の後に離婚調停や訴訟が行われることはよくあります。
この場合の『離婚原因』の判断について整理します。

<離婚・不受理申出×離婚原因>

あ 不受理申出×離婚原因|原則

『いったん離婚届に調印がなされた』ことが主張される
これ自体は『離婚原因』ではない
ただしまったく無関係ではない

い 不受理申出×離婚原因|実務的影響

『離婚届の調印がなされた』という事実・経緯
→『婚姻を継続しがたい重大な事由』の1つとして考慮される
他の個別的・具体的な事情により離婚原因の有無が判断される
※民法770条1項5号

離婚届に調印した,ということ自体は通常生じません。
不受理申出により受理されなくても,一定の考慮がなされます。
『離婚原因』の1つとして考慮されるのです。
『離婚原因』については別に説明しています。
詳しくはこちら|離婚原因の意味・法的位置付け

6 不受理申出×調停・判決による離婚

不受理申出で,全ての届出がシャットアウトできるわけではありません。
不受理申出の対象となる届出についてまとめます。

<不受理申出×調停・判決による離婚>

あ 不受理申出×創設的届出

ア 理論 『創設的届出』→『不受理申出』でシャットアウトできる
イ 典型例 協議離婚の離婚届

い 不受理申出×報告的届出

ア 理論 『報告的届出』→『不受理申出』でシャットアウトできない
理由=合意時点で離婚が『成立』しているため
『既に成立している内容』を役所の窓口で止めることはできない
イ 典型例 ・調停離婚
・裁判上の和解離婚
・判決による離婚

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