【遺言認知|子の存在を隠す・遺言執行者が認知届提出】
1 遺言認知|基本|子の存在を隠しておける
2 遺言認知|認知の具体的方法|基本=遺言執行者が遂行
3 遺言認知|認知の具体的方法|特殊事情→家裁の手続
4 遺言認知×相続→金銭賠償となる場合もある
1 遺言認知|基本|子の存在を隠しておける
本記事では『遺言認知』について説明します。
まずは基本的事項をまとめます。
<遺言認知|基本>
あ 作成方法
遺言に『認知する』ことを記載しておく
認知する子を特定・明記しておく
※民法781条2項
い メリット
父の生前は周囲に子供の存在を隠しておける
父の死後,スムーズに相続権を与えることができる
う 制度趣旨
民法が婚外子の保護のために用意している制度である
『婚外子を公認』していると言うこともできる
2 遺言認知|認知の具体的方法|基本=遺言執行者が遂行
遺言認知における具体的な認知の実現プロセスをまとめます。
<遺言認知|認知の具体的方法|基本>
あ 基本的方法
遺言執行者が就任後10日以内に認知届を役所に提出する
※戸籍法64条
詳しくはこちら|遺言執行者の職務権限・調査報告義務|基本|内容・時期・方式
い 遺言執行者
遺言の中で指定されている/いない,両方あり得る
指定されていない場合,家裁への『選任申立』が必要となる
詳しくはこちら|遺言執行者の選任(相続人の申立・家裁の職権による選任・報酬金額)
3 遺言認知|認知の具体的方法|特殊事情→家裁の手続
特殊事情がある場合はストレートに『認知届の提出』ができません。
家裁の手続などの一定のプロセスが必要になります。
このことは『遺言認知』に限らず,認知一般で共通することです。
<遺言認知|認知の具体的方法|特殊事情→家裁の手続>
あ 特殊事情→認知の制限
特殊事情がある場合は『認知届の提出だけ』の方法が使えない
一般的な『任意認知』と同様の制限を受ける
(別記事『認知・基本|任意認知』;リンクは末尾に表示)
主な制限として『嫡出推定の誤作動』がある
詳しくはこちら|嫡出推定・誤作動・基本|推定が『及ぶ/及ばない』
い 認知の実現方法
家裁の手続を行う必要がある
例;嫡出否認の調停・訴訟
詳しくはこちら|親子関係・手続|基本・まとめ|背景・実情・法的根拠
4 遺言認知×相続→金銭賠償となる場合もある
父の死後に認知がなされても『遡って』効果が生じます。
つまり『出生から親子だった』ということとして扱われるのです。
そうすると『父の相続』に関して,認知された子は『最初から相続人だった』ことになります。
しかし認知された時に『遺産分割完了後』だった場合はイレギュラーな扱いとなります。
相続では現物ではなく『金銭』をもらう『金銭賠償』の制度が適用されるのです。
詳しくはこちら|死後の認知|全体|認知を回避or遅らせる背景事情|相続→金銭賠償
基本的な遺言認知ではごく短期間のうちに認知届が提出されます(前述)。
『金銭賠償』が適用されることは普通ありません。
しかし,特殊事情があり裁判所の手続が必要になることもあります(前述)。
この場合『認知が実現した時には遺産分割完了後』ということもあります。
このような経緯で『金銭賠償』が適用されることもあるのです。
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