【広島セクハラ事件(性行為あり・従属的態度)】
1 事案と責任の主要項目
2 事案と責任の補足事項
3 事案の概要
4 被害者の従属的態度と責任判断
5 自由意思の判断=恋愛感情フェーズ・シフト
1 事案と責任の主要項目
職場のセクハラ事例の1つとして広島セクハラ事件を紹介します。性行為があった事例で,被害者の従属的な態度についての判断がなされています。
まずは,事案と責任の概要をまとめます。
<事案と責任の主要項目>
性的会話 | あり |
身体を触れる | あり |
性行為 | あり・2回(うち1回はオーラル) |
期間 | (性行為)1週間程度(※1) |
慰謝料 | 200万円(※2) |
弁護士費用 | 20万円 |
※広島地裁平成15年1月16日;広島セクハラ事件
2 事案と責任の補足事項
上記の事案と責任の表に関する補足事項をまとめます。
<事案と責任の補足事項>
あ 被害後の勤務継続(※1)
性行為の後,被害者はアルバイトを2週間程度継続していた
い 近親者の慰謝料(※2)
被害者の父母の慰謝料について
各20万円+弁護士費用2万円を認めた
う 従属的態度と自由意思
被害者に従属的な態度があった
裁判所は『自由意思』があるとは認めなかった(後記※3)
※広島地裁平成15年1月16日;広島セクハラ事件
3 事案の概要
事案自体の概要をまとめます。
<事案の概要>
あ 当事者
加害者A=男性・上司
被害者B=女性・アルバイト・18歳
い 事案の概要
AとBはお互いに過去の性体験の話しをしていた
勤務場所(周辺)でAはBと性行為に及んだ
Bは解離性同一性障害(多重人格障害)を発病した
※広島地裁平成15年1月16日;広島セクハラ事件
4 被害者の従属的態度と責任判断
裁判所の審理では,被害者の従属的な態度がテーマとなりました。結果的には『自由意思(合意)』を認めることになりませんでした。
<被害者の従属的態度と責任判断(※3)>
あ 従属的態度
BにはAの行為を受け入れる様子がみられた
→被害者に従属的態度があった
い 裁判所の判断の要点
従属的態度により『自由意思』が認められるわけではない
詳しくはこちら|職場の性的言動(セクハラ)の違法性判断基準と被害者の従属的態度
客観的状況から『自由意思がない』と判断した(後記※4)
※広島地裁平成15年1月16日;広島セクハラ事件
5 自由意思の判断=恋愛感情フェーズ・シフト
自由意思がない,つまり被害者の気持ちに反していたという認定のプロセスをまとめます。一般論=経験則によるものです。
<自由意思の判断=恋愛感情フェーズ・シフト(※4)>
あ 親密の程度
性的関係に至ったのはBが働き始めて僅か10日後であった
その間に,AとBとの間で,性体験を話題にしたことはあった
しかしそれ以外に格別親密な交流はなかった
い 加害者からのフェーズ・シフト
Aが突然の性的欲情に基づく行為に出た
う 被害者の恋愛感情フェーズ
『あ』の状況において
BがAの行為を抵抗なく受容する程の感情を抱くに至ることは考えがたい
→Bの自由意思によるものではない
※広島地裁平成15年1月16日;広島セクハラ事件
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