【夫婦間の金銭消費貸借の取消→取消時破綻を理由に否定(地裁)】
1 事案
夫婦間の契約の取消の解釈論は時代によって移り変わり,判例も多く残されています。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の無効化の変遷(事案・判断の概要の集約)
多くの実例では贈与が問題となっています。この点,夫婦間の『貸し借り』の取消が主張されるケースもあります。以下,金銭消費貸借の取消についての判断がなされた裁判例を紹介します。
<事案>
あ 経営者同士の夫婦
夫婦双方がそれぞれ別の会社を経営していた
い 妻経営の会社の経済状態悪化
妻の会社が資金を必要とする状況になった
しかし金融機関から融資を受けられなかった
う 迂回融資
夫の会社が銀行から融資を受けた
具体的にはそれぞれの会社の代表者個人を通して『融資』した
つまり『夫婦間での貸し借り』にした
え 夫婦間の金銭消費貸借契約
ア 元金(貸与額)=5000万円イ 返済方法=毎月70万円
お 事後的な『取消』
夫が金銭消費貸借契約(貸与)を取り消した
→夫は妻に『全額の一括返済』を求めた
2 裁判所の判断
<裁判所の判断>
取消権の行使の時点で夫婦関係が破綻していた
→取り消しはできない
※東京地裁平成25年6月6日
なお『夫婦未満の交際』状態の男女での金銭の貸し借りは魑魅魍魎の世界です。
詳しくはこちら|男女交際×民事的違法|基本|金銭の動き→公序良俗違反・無効|典型例
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