【性別変更や出生時の性別誤認による名の訂正・変更(基準・裁判例)】
1 性別と名の整合性のための変更の許可基準
2 性別の誤認と名の変更許可
3 性別の誤認→戸籍上の性別・名の変更許可
4 性別の誤認→名の訂正(公的見解)
1 性別と名の整合性のための変更の許可基準
名の変更の実質的な理由にはいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|名の変更許可制度の基本(規定・趣旨・現実的理由)
その1つに,性別と名の整合性を目的とするものがあります。
さまざまな背景で性別と名がマッチしないケースでは,名の変更が許可される傾向があります。
<性別と名の整合性のための変更の許可基準>
あ 戸籍名と性別の不整合
『ア・イ』のような場合
→戸籍名が真の性別にそぐわなくなることがある
ア 出生届の際の性別に関する錯誤(後記※1)イ 性別の変遷
例=性転換・性別変更など
詳しくはこちら|性同一性障害による戸籍上の性別の変更と性分化疾患による性別の訂正
い 名の変更許可の傾向
戸籍名が真の性別にそぐわない場合
適切な名への変更は本人の将来のためになる
→変更を許可すべきである
※斎藤秀夫ほか『注解 家事審判規則(特別家事審判規則)改訂』青林書院1994年p516
2 性別の誤認と名の変更許可
性別の誤認による出生届があったことを前提に,名の変更を許可する公的見解を紹介します。
<性別の誤認と名の変更許可(※1)>
あ 事案
女として出生の届出をした
出生後6年目に男であることが判明した
い 協議会の判断
性の判別に混同を生じる
社会に支障がある
→名の変更の正当事由になる
※昭和27年3月20日大阪高裁管内家事審判官協議会協議結果
3 性別の誤認→戸籍上の性別・名の変更許可
珍しいケースですが,出生届の時点で性別を誤認してしまうこともあります。
このような実例において,裁判所は名の変更を許可しました。
<性別の誤認→戸籍上の性別・名の変更許可>
あ 性別の誤認(前提)
Aが出生した
外性器が女性を示していた
女性としての出生届が提出された
Aは男性仮性半陰陽(え)であった
実際にはAは男性であった
い 戸籍の性別訂正(前提)
戸籍上女性から男性に訂正する許可審判がなされた
当時は『私生子女』から『私生子男』への訂正であった
※戸籍法113条
詳しくはこちら|性同一性障害による戸籍上の性別の変更と性分化疾患による性別の訂正
う 名の変更
女性にふさわしい名への変更の申立がなされた
裁判所は変更を許可した
※福岡家裁昭和33年8月21日
え 男性仮性半陰陽(参考)
染色体が男性で、外性器が女性を示すもの
先天異常の1つである
4 性別の誤認→名の訂正(公的見解)
出生児の性別の誤認のケースでは名の変更が認められます(前記)。
これとは別に,名の訂正が認められるという見解もあります。
<性別の誤認→名の訂正(公的見解)>
あ 事案
出生証明書の性別欄が『女児』であった
次の内容の出生届が提出された
父母との続柄=『長女』
名=『ゆり子』
戸籍に記載された
その後,その子は男児であることが判明した
い 協議結果
出生証明書の誤記である
戸籍上の続柄と名の記載の修正について
→戸籍の訂正として行うことができる
う 訂正許可の条件
届出に誤記したことを証拠によって明らかにする
例;男子であることが明らかなへその緒など
え 訂正の対象外
『女児だと思って女児の名を付けた』場合
→訂正の対象ではない
=名の変更の対象である
※昭和43年6月20日第19回大阪戸籍事務研究会協議結果
名の訂正と変更の違いなどについては,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|戸籍『訂正』の手続と名の『訂正』の問題点(基本)
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