【難解・難読な通称名への変更(裁判例の集約)】

1 難解・難読な通称名への変更(総論)
2 『脩』を含む通称→変更不許可(概要)
3 通称『職愈(みつまさ)』→変更不許可(概要)
4 悪名から『和孝』(かずこ)→変更不許可(概要)
5 同姓同名・難読な名への変更→変更不許可(概要)
6 通称『康敞』→変更許可(概要)
7 通称『歳霽』→変更許可(概要)

1 難解・難読な通称名への変更(総論)

一般的に,通称への名の変更は認められる傾向があります。
しかし,通称が難解・難読である場合には,このために許可されないということもあります。
詳しくはこちら|変更後の名の常用平易性と変更の許可基準
本記事では,難解・難読な通称名への変更を判断した実例を紹介します。

2 『脩』を含む通称→変更不許可(概要)

最初に,通称が人名用漢字に含まない文字を含むために不許可となった事例です。

<『脩』を含む通称→変更不許可(概要)>

あ 事案

通称名に人名用漢字ではない『脩』が含まれる
通称の使用期間は30年である

い 裁判所の判断

変更を不許可とした
※仙台高裁昭和34年6月30日
詳しくはこちら|通称への名の変更許可申立の裁判例(許可しなかった)

3 通称『職愈(みつまさ)』→変更不許可(概要)

漢字の読みがとても変わっているために名の変更が不許可となった事例です。

<通称『職愈(みつまさ)』→変更不許可(概要)>

あ 事案

通称名が『職愈(みつまさ)』であった
漢字の読みができる者は皆無である

い 裁判所の判断

変更を不許可とした
※広島家裁竹原支部平成元年12月18日
詳しくはこちら|通称への名の変更許可申立の裁判例(許可しなかった)

4 悪名から『和孝』(かずこ)→変更不許可(概要)

戸籍名が悪名であるという主張がなされたケースです。
裁判所は,希望する名の方に着目し,読み方が難しく,また,男性と間違えやすいことを指摘しました。
そして変更を許可しませんでした。

<悪名から『和孝』(かずこ)→変更不許可(概要)>

あ 変更希望の名

戸籍名『コトラ』→希望名『和孝』(かずこ)

い 戸籍名の支障

『コトラ』は女性の名としてふさわしくない

う 希望名の不都合性

希望名『和孝』は姓名判断によるものである
『和孝』という文字は『かずたか・わかう』と読める
男性の名と間違えやすい
『かずこ』と読むのはとても難しい
仮に女児に『和孝』と命名したら名の変更が許可される

え 裁判所の判断(結論)

変更を許可しなかった
※大阪高裁昭和32年5月27日
※昭和32年9月25日大阪家裁家事部決議
詳しくはこちら|悪名(珍奇・難解)の変更(裁判例の集約)

5 同姓同名・難読な名への変更→変更不許可(概要)

同姓同名の者が存在することにより支障が生じていたケースです。
これだけだと一般的には変更は許可されています。
詳しくはこちら|同姓同名や類似の名による支障と名の変更の許可基準
しかし,希望する名が難読なものであったケースがあります。
裁判所は変更を許可しませんでした。

<同姓同名・難読な名への変更→変更不許可(概要)>

あ 事案

同一の集落に同姓同名の者がいる
日常生活に不便をきたしている

い 希望する名

希望する名について
→姓名判断による難読なものであった

う 裁判所の判断

変更を許可しなかった
※東京高裁昭和32年2月21日
詳しくはこちら|同姓同名や類似の名による支障と名の変更(否定裁判例の集約)

6 通称『康敞』→変更許可(概要)

人名用漢字にない文字を含む名への変更は不許可になるとは限りません。
通称の使用期間が非常に長期である場合には許可されることもあります。
通称の使用期間が36年であるために許可された事例です。

<通称『康敞』→変更許可(概要)>

あ 事案

通称名が『康敞(やすたか)』であった
人名用漢字にはない字が含まれる
通称の使用期間は36年である

い 裁判所の判断

変更を許可した
※東京高裁昭和39年11月6日
詳しくはこちら|通称への名の変更許可申立の裁判例(許可した)

7 通称『歳霽』→変更許可(概要)

通称が難解であるけどれ,使用期間が約20年に達していたために変更が許可された事例です。

<通称『歳霽』→変更許可(概要)>

あ 事案

通称名に人名用漢字ではない『霽』が含まれる
通称の使用期間は20年余りである

い 裁判所の判断

変更を許可した
※長崎家裁佐世保支部昭和37年11月6日
詳しくはこちら|通称への名の変更許可申立の裁判例(許可した)

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【変更後の名の常用平易性と変更の許可基準】
【人名用漢字の範囲の拡大に伴う名の変更(許可傾向と裁判例)】

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