【氏(苗字)の変更(特殊事情の裁判例集約)】
1 特殊事情による氏の変更許可(総論)
2 虚偽の出生届の無効後に育ての氏を続用(変更許可)
1 特殊事情による氏の変更許可(総論)
特殊な氏(苗字)は変更が許可されることがあります。
通常は氏自体が珍しいとか,同姓同名の者が存在するということが理由となります。
詳しくはこちら|氏(苗字)の変更許可制度の基本(規定・許可基準)
この枠組みから外れる,特殊な事情により氏の変更が許可されることもあります。
本記事では,特殊な経緯に配慮して氏の変更が許可された実例を紹介します。
2 虚偽の出生届の無効後に育ての氏を続用(変更許可)
出生届・認知が虚偽であり,法的には無効であったという経緯がありました。
しかし,現実には無効と判断されるまでに長期間が経過していました。
実際に本人は『本来親ではない者の氏(苗字)』を長期間使用していました。
『虚偽の氏(苗字)』には間違いありませんが,長年馴染んでいる状況でした。
裁判所は,長年の使用を重視し,『虚偽の氏』への変更を認めました。
本来無効な氏を維持した結論となりました。
『産みの親より育ての親』という諺の『苗字版』と言えましょう。
<虚偽の出生届の無効後に育ての氏を続用(変更許可)>
あ 虚偽の出生届
他人の子として出生届・認知がなされた
他人の氏Aとして戸籍に記録された
詳しくはこちら|父母でないのに出生届=藁の上からの養子→戸籍の訂正が認められないこともある
長期間が経過した
い 認知無効による戸籍訂正
裁判で認知無効が認められた
戸籍訂正がなされた
本来の氏(苗字)Bに戻った
長年使っていた氏(苗字)Aでないと不便である
う 裁判所の判断
BからAへの氏の変更を許可した
※東京高裁昭和57年8月24日
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