【子供名義の預貯金は原資や経緯によって財産分与での扱いが決まる】
1 子供名義の財産(預貯金)と財産分与
2 夫婦の収入は子供名義の預貯金でも夫婦共有財産
3 子供名義の預金を夫婦共有財産とした裁判例
4 子供への贈与は夫婦共有財産から除外される
5 お祝い・お年玉・積立金を子供の財産とした裁判例
6 子供の預貯金を子供への贈与と認めた裁判例
1 子供名義の財産(預貯金)と財産分与
夫婦の協力で得た財産は,夫婦共有財産として(清算的)財産分与の対象となります。
詳しくはこちら|財産分与の対象財産=夫婦共有財産(基本・典型的な内容・特有財産)
実際に財産分与を行うケースにおいて,子供名義の預貯金を財産分与の対象財産に含めるか含めないかについて,意見が対立することがよくあります。
単純に名義だけで判断するわけではありません。
元となった資金や経緯によって扱いが違ってきます。
本記事では,財産分与における子供名義の預貯金の扱いについて説明します。
2 夫婦の収入は子供名義の預貯金でも夫婦共有財産
まず,子供名義の預貯金の元となる資金が夫婦の収入である場合は,本来的に夫婦共有財産です。
保管する預貯金の名義だけ,子供の名を借りていてもこの扱いは変わりません。
<夫婦の収入による子供名義の預貯金の扱い>
あ 収入の扱い(前提)
婚姻期間中に得られた収入について
→夫婦の協力によって得た財産である
→夫婦共有財産である
=清算的財産分与の対象となる
※民法768条3項
詳しくはこちら|財産分与の対象財産=夫婦共有財産(基本・典型的な内容・特有財産)
い 預貯金の名義の影響
預貯金の名義について
例=夫婦のいずれかの名義・子供名義
→いずれであるかは影響しない
=原資が婚姻期間中の夫婦の収入であれば夫婦共有財産である
※東京高裁平成7年4月27日
3 子供名義の預金を夫婦共有財産とした裁判例
子供名義の預金の大部分が夫婦の収入であったケースについて,前記の基準どおりに夫婦共有財産として認めた裁判例を紹介します。
<子供名義の預金を夫婦共有財産とした裁判例>
あ 子供名義の預金の元となった資金
ア お年玉の蓄積イ 夫婦が将来のため子供名義で預金をした
い 子供の年齢と管理能力
最年長の長女は10歳である
→子供はみな預金を自ら管理できない状態である
う 裁判所の判断
子供名義の預金は実質的に夫婦共有財産である
→清算的財産分与の対象に含める
※東京地裁平成16年1月28日
4 子供への贈与は夫婦共有財産から除外される
子供名義の預貯金はすべて夫婦共有財産となるわけではありません。
親の収入が元になっていたとしても,子供への贈与があれば,実質的に財産の帰属は移転するのです。
具体例としては,子供名義の証券口座への送金を子供への贈与として認定した裁判例があります。
<子供への贈与と夫婦共有財産の判断>
あ 子供への贈与した財産の扱い
子供に贈与された財産について
→夫婦共有財産には含まれない
い 子供への贈与の具体例
夫or妻の名義の預貯金口座から子供名義の証券会社の口座に送金した
この資金によって子供名義で金融資産を購入した
→子供への贈与として認定する
→夫婦共有財産ではない
※東京高裁平成7年4月27日
5 お祝い・お年玉・積立金を子供の財産とした裁判例
子供へのお祝い金やお年玉と将来のための積立金(預貯金)について,夫婦共有財産ではないと判断した裁判例があります。
<子供へのお祝い・お年玉・積立金(否定裁判例)>
あ 残額
名義 | 残額(元金) |
子A名義 | 約47万円 |
子B名義 | 約66万円 |
子C名義 | 約237万円 |
い 元ととなった資金
ア 子に対するさまざまなお祝い・お年玉イ 障害児の将来のための積立金
父母が月々2万円を積み立てた
ウ 受給した障害児手当
う 裁判所の判断
『あ』の預貯金について
本来的に子に帰属させるべきものである
→夫婦共有財産ではない
=清算的財産分与の対象に含めない
※東京地裁平成16年3月18日
6 子供の預貯金を子供への贈与と認めた裁判例
子供名義の預金は財産分与における扱いで問題となりやすいです。
ある程度の金額があっても,通常,子供自身の固有の財産として扱います。
夫婦の財産ではないので,財産分与の対象としないということです。
<子供名義の預金と贈与の認定(肯定裁判例)>
あ 事案
子供名義の預金があった
長女 | 約243万円 |
三女 | 約137万円 |
い 裁判所の判断
子供名義の預金(あ)について
子供に対する贈与の趣旨である
→夫婦共有財産ではない
=清算的財産分与の対象に含めない
※高松高裁平成9年3月27日
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