【既婚男性の交際(不倫)相手と妻の両方が慰謝料を請求した裁判例(集約)】
1 既婚男性の不倫相手と妻の両方の慰謝料請求
2 離婚宣言・妊娠と中絶・認知拒否→75万円獲得・150万円支払
3 離婚宣言・慰謝料支払約束→399万円獲得・165万円支払
1 既婚男性の不倫相手と妻の両方の慰謝料請求
例えば,既婚者男性Aが女性Bと交際(性的関係)をすると,不倫(不貞行為)として,違法となります。
つまり,妻Cが夫Aや女性Bに対して不倫の慰謝料を請求できます。
詳しくはこちら|不貞相手の不貞慰謝料の相場(200〜300万円)
一方,女性Bは,Aが既婚者であると知ってはいたけど,Aが離婚するとかもう破綻しているとか説明して,これを信じたというケースもとてもよくあります。
このような事情があると,Bは被害者として,嘘をついたAに対して慰謝料請求をすることが認められることがあります。
詳しくはこちら|既婚と知って交際した者からの慰謝料請求は事情によって認められる
詳しくはこちら|既婚者と知って交際した者からの慰謝料請求の裁判例(肯定と否定の事例)
本記事では,実際に,妻Cから女性Bへの不貞の慰謝料請求と女性Bから既婚男性Aへの慰謝料請求の両方が主張されたケースについての裁判例を紹介します。
2 離婚宣言・妊娠と中絶・認知拒否→75万円獲得・150万円支払
既婚男性Aが妻Cとは離婚すると説明(宣言)していたケースです。
交際していた女性Bは妊娠し,中絶しています。
既婚男性は妻Cと女性Bの間に挟まれる形になり,自殺未遂をするに至っています。
結論として,女性Bから既婚男性Aに対する慰謝料は75万円が認められました。
一方,妻Cから女性Bへの不貞の慰謝料請求は150万円が認められました。
トータルでは,女性Bはマイナスということになりました。
正妻の方が強く保護されたという結論です。
<離婚宣言・妊娠と中絶・認知拒否→75万円獲得・150万円支払>
あ 既婚男性による結婚の約束と交際
既婚男性Aと婚外女性Bが男女交際を行った
AはBに対して,正妻と離婚してBと結婚する,と説明した
い 妊娠と中絶
Bが妊娠した
Bは中絶することを提案した
Aは繰り返しBに対して同様の説明をして,出産することを強く勧めた
う 男性による交際中止
Aは,正妻との離婚ができなかった
A・Aの父とBの3人で話し合う機会が設定された
話し合いの当日にAは自殺未遂をした
Aは,Bが出産した子の認知にも応じない態度となった
え 婚外女性の慰謝料請求についての判断
婚外女性Bは既婚男性Aに慰謝料を請求した
→裁判所は慰謝料75万円を認めた
お 正妻の慰謝料請求についての判断
正妻Cは婚外女性Bに慰謝料を請求した
→裁判所は慰謝料150万円を認めた
※長野家庭裁判所諏訪支部平成23年12月13日
3 離婚宣言・慰謝料支払約束→399万円獲得・165万円支払
既婚男性が妻とは離婚すると説明(宣言)していたケースです。
このケースでは,交際した男女2人の間で,慰謝料399万円を支払うという金額まで含めた合意をしていました。
裁判所は,この金額どおりの慰謝料を認め,さらに弁護士費用相当額まで加算しました。
他方,妻からの不貞の慰謝料請求は165万円を認めました。
結果的に,正妻よりも女性Bの方が保護されたことになりました。
<離婚宣言・慰謝料支払約束→399万円獲得・165万円支払>
あ 既婚男性による結婚の約束と交際
既婚男性Aは『正妻Cと離婚して婚外女性Bと再婚する』と約束した
AとCは交際した
い 交際解消
その後,Aはこの約束を一方的に破棄した
う 慰謝料の協議・合意
A・Bは清算について協議した
A・Bは次の内容を合意し,書面に調印した
『AがBに婚約不履行の慰謝料として399万円を支払う』
その後,Bが慰謝料を支払わなかった
え 婚外女性の慰謝料請求についての判断
BはAに対して慰謝料を請求した
→裁判所は慰謝料399万円をそのまま認めた
これとは別に弁護士費用39万円も認めた
お 正妻の慰謝料請求についての判断
正妻Cは婚外女性Bに慰謝料を請求した
→裁判所は慰謝料165万円を認めた
※東京地方裁判所平成19年2月15日
本記事では,いわゆる不倫の関係があったケースで,妻からの不倫の慰謝料請求と同時に,交際相手の女性から既婚男性への慰謝料請求も認められた裁判例を紹介しました。
これらの事例からもお分かりのように,個別的な事情の評価で結果は大きく変わってきます。
実際に既婚者の男女交際に関する問題に直面されている方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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